転送先が死後の世界→異世界だった件   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


正しい敵の倒し方

―――夕方。

 

「……まだ、グリムは……起きないのかっ?」

 

息も絶え絶えに、剣を支えに如何にも疲労困憊です!といった状態のスノウが戻ってきました。

 

「本当に疲れて帰ってきたな」

 

アリスは呆れた眼差しをスノウに向けているが、本当に疲れすぎだろう。どれだけ後先考えずに暴れたんだよ。

 

「スノウのやつ相当疲れてるな。こりゃ下手したら途中で落ちるぞ」

「じゃあ置いていくか?」

「どうせ意地でも付いてくるだろうし、六号の次に登らせればいいだろ。途中でお望みのイベントやらせば六号のモチベも上がるだろうし」

「お前もセコいな」

 

アリスはオレにも呆れた眼差しを向けるが実際それが最善だと思うんだが。

出世欲の権化であるスノウは手柄を立てるチャンスを自ら手放すとは思えないし。

 

「後、これは六号には内緒な。先に言えば絶対顔にすぐ出るから」

「お前も六号の性格を理解してきたな」

 

なんせヘタレで欲望に忠実だからな。後、それがバレればスノウは意地になって助けを求めずバッドエンドまっしぐらだし。

ちなみにグリムは淫乱な夢を見ている最中だ。何故分かるのかって?

 

「……ぁ、ああ……スノウが、真っ赤な顔で隊長に……っ、私の胸を揉むでもなんでも好きにしろって……はしたないおねだりを……っ。隊長がそんなスノウに迫って……スカートに手を伸ばして……」

 

息を荒げて危ない表情で寝言を言っているからだ。しかも身をくねらせて。

 

「起きろグリム!それ以上変な夢を見てるとぶった斬るぞ!!」

 

当然、そんなグリムの寝言を聞いたスノウはグリムの両肩を掴んでガクガクと揺さぶり、無理矢理起こそうとする。

 

「……ハッ。……私、今、素敵な予知夢を……っ」

「もういい。斬り捨てて埋めておいてやる」

 

ようやく目覚めたグリムの第一声に、スノウは黒い表情で剣を抜き身の状態で構えて殺気を放っている。

 

「やめろ。後が面倒になるだろ」

 

そんなスノウにオレは心底面倒そうに制止の声をかける。

幾ら祭壇と供物があれば蘇るとはいえ、死ぬなんて普通に嫌だろ。復活の供物を集めるのも面倒なんだし。

ちなみに後日、これが本当に予知夢だったと知ることになるのはまた別の話である。

 

「それよりアリス、どうだ?」

「おう。行ける行ける。これなら予定通り動けるな」

 

その間に六号とアリスが塔の外壁の強度をネイルガンのような杭打ち機で杭を打ち込み、杭が抜ける気配がない作戦に支障がないことを確認していた。

 

「六号、アリス。一体何の話をしているんだ?今度は何を企んでいる?」

 

その行動の意味を理解できないスノウの疑問に、六号はドヤ顔の表情でその疑問に答える。

 

「決まってんだろ?あの塔を攻略するんだよ」

「は?お前は怖いから嫌だと言っただろうが」

「真正面から行くのが嫌だって言ったの。それに、攻略は夕方からするとも言っただろうが」

 

六号のその言葉に、スノウは思い出したような表情となる。

 

「た、確かにそう言っていたが……塔の最上階にある秘宝を守る奴らの連携攻撃は強力だぞ?最上階に辿り着けた者は瞬く間にやられたんだぞ?そんな奴らにどうやって勝つつもりだ?」

「本当に利点を活かしているな。階段の上じゃそう簡単に避けられないし、人数も限られてる上に疲労してるんだ。真正面から挑んでも返り討ちにあって当然だろ」

 

壁役いても魔法使いらしい《知》のリスタが上から遠距離攻撃するから意味ないし、階段の出口に陣取るパワーファイターらしい《力》のギルが吹っ飛ばすから強引な突破も早々にできない。

後、階段から叩き落とせばそれで終了だし。

 

「じゃ、手筈通り二手に分かれるぞ。六号は重い鎧を脱いでいけ。スノウとグリムは動きやすい格好で。クロスブレードマンとロゼはとにかく連中の注意を引けよ?」

「なんで二手に分かれるんだ……?いや、まさか」

「そのまさか。オレがロゼを脇に抱えて内側から進む間に、残りのメンバーが外壁よじ登って屋上へ行くんだよ。もう辺りも暗いから見つかるリスクは低いからな」

 

オレのその言葉にスノウ絶句。グリムも呆れた視線を向けてくる。唯一作戦を知っていたロゼは苦笑いだ。

スノウはすぐにオレへと詰め寄ったが。

 

「なんでお前とロゼが塔の内側から行くんだ!?それなら全員で内側から行けばいいだろ!!」

「文字通り、強引に進むからなー。足並み合わせて移動とか時間かかるしかったるい」

「ならせめて内側の攻略組に私を加えろ!!」

「階段の手すりの上を走ったり、手すりから手すりへ飛んで移動できるなら一考するが」

 

オレの言葉にスノウが顎外れるんじゃないかと言うくらい、口を大きく開ける。本当にこういう表情は間抜けに見えるんだな。

 

「じょ、冗談だよな?そんな超人じみたこと……」

「出来なきゃ諦めろ。剣を振るうしか出来ないお前抱えても無駄な荷物にしかならないぞ」

「…………」

 

スノウは諦めたのか、肩を落としてトボトボとオレから離れていった。それを確認したオレはヘルメットを被り直す。

 

「それじゃ……カラーチェンジ、V(ファイブ)

『ライトニングカラー!黄色き色は稲妻を迅らせる!!』

 

純粋な速力なら一番のカラーV(ファイブ)モードとなると、そのままロゼを脇に抱える。ちなみにカラーは黄色だ。

 

「オレとロゼは入口近くで待機しとくから、そっちの準備が終わったらスタートな」

「おうよ」

 

オレと六号は互いにサムズアップし、そのままそれぞれの持ち場へと向かっていく。

 

『こちらキサラギ=アリスさんだ。これより塔の外壁をよじ登る』

「こちらクロスブレードマン。これより塔の内部を駆け上がる」

 

少ししてヘルメットに内蔵されたインカムからアリスの作戦開始の合図が来たので、オレも言葉を返してからロゼを抱えたまま塔の中へと突撃する。

塔の一階は既に制圧済みの為王国の兵士しかおらず、上へと登る螺旋階段は彼らによってすし詰め状態だ。

当然、兵士を掻き分けて移動なんかしてられないので、手筈通り手すりを足場にして移動させてもらう。

 

「うわ……本当に手すりの上を走るんですね……」

 

ロゼがどこか呆れたように呟く中、階段や待機スペースにいたオークやゴブリン、トカゲ人間や狼人間達がオレに気づいて矢を放ち石を投げ、杖を持つ者は魔法を放ってくる。

オレはそれらをジャンプで回避。その上にあった階段の端を掴んで腕力だけで身体を持ち上げ、そのまま階段の上へと着地する。

当然、魔王軍の奴らは棍棒や剣を手に襲いかかるが―――

 

「ロゼ!」

「我が業火の海に沈むがいい……【クリムゾン・ブレス】!!」

 

前方に敵しかいなかったのでロゼのブレスの餌食になってもらいました。

ロゼのブレスを受けて怯んだその隙に、オレは刀身が黄色く染まり、雷撃を纏っている剣を直ぐ様抜いて階段を駆け上がりながら連中を斬り捨てていく。

 

「奴らを止めろ!!」

「波状攻撃で動きを止めるぞ!」

 

いいぞいいぞ。いい感じで此方に目を向けてくれている。これなら外壁をよじ登っている六号達に気づかないだろ。

そんな風に敵の注意を引き付けながら進んでいき、あっさりと塔の中継地点に辿り着いた。

 

「これで半分か……思ったより高いな」

『こちらキサラギ=アリスさんだ。こちらは中継地点を通過した。連中にも気づかれてない。そのままのペースで進んでくれ』

 

オレの一人言に偽装した報告に、アリスが自分達の状況を伝えながら指示を出してくる。

向こうは通信なんていうテクノロジーは知らないだろうが、似たような魔法があれば感づかれないとも言えないからな。

魔法云々に関してアリスは一目で分かる程不機嫌となっていたが。

 

「それじゃロゼ、この調子で駆け上がるぞ」

「了解です副隊長!」

 

後半も同じくロゼのブレスも活かして手すりや壁を足場にして塔の最上階を目指していく。

 

『こちらキサラギ=アリスさんだ。想定通り六号お望みのエロイベントが発生した。屋上が見えてたらペースダウンしろ』

 

やっぱりエロイベントが発生したか。今頃痴話喧嘩のようなやり取りをしてるだろうし、少しペースを落とすか。

そんな感じで最上階を目指していくと、牛人間と山羊人間の顔が見えてくる。

 

「そろそろ最上階だな」

『こちらキサラギ=アリスさんだ。こちらも後少しで到着する。そのまま突撃して奴らの注意を引け』

 

問題なしか。なら、このまま突撃だ。

オレはロゼを抱えたまま階段そのものを駆け上がって二人の前に姿を現す。

 

「また新しいカモが来たぞ、兄弟」

「また返り討ちにしてやろうぜ、兄弟」

 

牛野郎がそう言って柄の長い斧を構えたので、オレは手すりに足をかけて跳躍。後ろからの魔法攻撃をかわしつつそのまま最上階へと踊り出る。

 

「なっ!?」

「リスタの魔法を手すりを足場にして飛んで避けただと!?勇者でもこんな芸当はしなかったぞ!」

 

ふーん、勇者でもしなかった芸当か。勇者は王道勝負が好きのようだ。

そんな感想を抱きつつ、牛野郎と山羊野郎が驚く間にロゼを地面に降ろしてから牛野郎へと肉薄する。

 

「真正面から突っ込むか!返り討ちにしてやるぜ!!」

 

牛野郎は笑みを浮かべながら斧を振り上げ、そのまま叩きつけるようにオレに向かって振り下ろす。

同時にオレも剣を振るい、牛野郎の斧を逆に真っ二つにしてやった。

 

「―――な!?俺の斧が……!」

 

再度驚愕を浮かべる牛野郎に構わず、オレは後ろへと飛んで山羊野郎が放ってきた魔法攻撃を避ける。

お、スノウを背負った六号が来たな。

 

「まさかコイツは……第二の勇者か!?」

 

こら、第二の勇者とか言うな牛野郎。

 

「四天王の一人に深手を負わせたというアイツか……!四天王も堕ちたかと思っていたが、この強さなら納得だな」

 

納得するな山羊野郎。後、六号。さっさと不意討ちしろ。

 

「逆にコイツを倒せば、俺達は四天王クラスの幹部に抜擢されるのは間違いないな!!」

「そうとも!《力》のギルと《知》のリスタの二人なら、どんな相手でも……」

 

その瞬間、六号は背後から山羊野郎を蹴り飛ばした。

 

「無敵…………え?」

 

山羊野郎は間抜けな表情になると、そのまま塔の吹き抜けから落下していった。

 

「おおおおおおおおおい!?」

「ええええええええええ!?」

「ナイスだ六号!!」

 

六号のその所業にスノウとロゼは信じられないと言わんばかりに声を上げ、オレは賞賛の声を上げる。

なんせ簡単に一人倒したんだからな!こんな高さから下まで落ちれば大抵は一撃だ!!

 

「リスタァアアアアアアア―――ッ!?」

 

逆に牛野郎は野山羊野郎が落ちたことで焦りの声を上げている。

これぞ正に楽して勝つ、正しい敵の倒し方だ!!

 

「六号お前、人としてあれはどうなんだ!?さすがに私も同情したぞ!」

「隊長、幾らなんでもアレはさすがに酷すぎますよ!!後、副隊長は賞賛しないでください!」

 

スノウとロゼは今の行動を非難しているが、戦場は常に卑怯が蔓延しているものだ。

この程度はむしろ可愛いくらいだろう。悪行ポイント加算音声も鳴らなかったし。

 

「た、助けてくれぇ~~……」

 

チッ、運よく手すりに掴んで難を逃れたか。悪運の強い奴め。

 

「よし、アイツに石を投げてトドメを刺すぞ。この高さから落ちれば無事ではいられないからな」

 

オレはそう言って石を山羊野郎に向かってガンガン投げていく。

 

「あ、が!やめっ……ギ、ギル、助け」

 

全力でないとは言え、割と粘るな。早く落ちろ。落ちれば楽だぞ。

 

「お、鬼がここにいるぞ……」

「副隊長って、実は隊長と同類なのかしら……?」

「それは妙案だな。貴重な銃弾を使わなくて済むからな」

 

オレのその所業にスノウと合流したグリムはドン引き。同じく合流したアリスはオレと一緒に山羊野郎に向かって石を投げていく。

 

「や、やめやがれ!これ以上兄弟に手は出させねぇ!たとえ素手だろうと兄弟は……リスタは俺が必ず守る!!」

 

おおう。美しい兄弟愛だな。オレには関係ないけど。

 

「クロスブレードマン、一旦《知》のナントカに投石は中止だ」

「?何故だ六号?敵を簡単に仕留めるチャンスだろ?」

「この状況だ。もっと上手く利用しないとな……《力》のナントカが近接攻撃してきたら、残りの者達は《知》のナントカに一斉投石だ!」

 

人質作戦か!なるほど、それは盲点だったな!!毎回倒していたからその発想はオレの中から消えていたな!

 

「それなら牛野郎は瀕死程度で留めてわざと命は取らないでおくか。山羊野郎への人質としてな」

「いいね、それ。悪行ポイントが稼げそうだぜ」

 

オレの提案に六号は悪どい笑みで同意し、アリス以外はその提案にドン引きしている。

 

「グヌヌヌ……この、卑怯者どもめぇええ……!」

 

対して牛野郎は悔しさと怒りでプルプルと身体を震わせているが、相棒の命が大事なのかその場から動こうとしない。

 

「それじゃあ……全員、牛野郎に一斉投石だ」

「そこから動いてもいいが……その場合、お前の相棒はどうなるかな?」

「「「うわぁ……」」」

 

オレと六号の指示にアリス以外はまたしてもドン引きしているが、楽に戦果が上げられるからいいじゃないか。

 

「……クソッタレェエエエエエエエエエエエッ!!!」

 

バキッ!ゴキッ!ガン!

 

ピロリロリ~ン♪

『悪行ポイントが加算されます』

 

「倒れたな。よし、これをアソコに刺し込むか」

「いい判断だな。六号、やれ」

「任せとけ!」

 

ズブリ。

 

「あぎゃぁああああああああああああッ!?」

 

ピロリロリ~ン♪

『悪行ポイントが加算されます』

 

全員で牛野郎をフルボッコにし、戦闘不能にしてから少しして山羊野郎が自力で最上階へと戻ってきた。

 

「ギル!無事か!?」

「無事ではないな。生きてはいるが」

 

山羊野郎の目に写ったのは、ケツに手すりの棒が刺さり、角も折れて全身ボロボロになっている牛野郎の姿だ。

 

「貴様ら……!俺を不意討ちしただけでなく、手の出せないギルを……!」

「背後から不意討ち食らったのはお前が間抜けだからだろ。後、後ろから魔法放って不意討ちした奴がそれを責めるとか笑えないなあ」

 

オレの煽りに山羊野郎は額に血管を浮かび上がらせて怒りを露にしている。この程度でキレるとか、耐性が本当に低いな。

 

「貴様……お前達は絶対に皆殺しにしてやる!!」

 

あ、敗北フラグが立ったな。追い詰められた状況での全員皆殺し発言は大抵は負けフラグだからな。

 

「おいおい、俺の言ったことが聞こえてなかったのか?無事ではないが生きてはいる……そう、“生きてる”と言ったんだぜ?」

 

六号はそう言って牛野郎に刺さっている棒をちょっと揺らすと、牛野郎は「フギィッ!?」と声を上げて痙攣する。

牛野郎が本当に生きていることに、山羊野郎がたじろいだところで追い討ちをかける。

 

「瀕死だが急いで手当てすれば助かるかもな?」

「そんなお前に提案だ……お前の大事な相棒をいくらで買う?」

 

手で金貨マークを作る六号に、悔しげに唸る山羊野郎。スノウ、ロゼ、グリムはその所業にまたドン引きしているが、これはある意味平和交渉だぞ?むしろ人道的と言っていいくらいだ。

 

「戦場での判断は迅速にな?あんまり長いとお前の相棒はあの世行きだぞ?」

 

オレはそう言って手すりを斬って取り除いた場所へと牛野郎を少しづつ動かしていく。交渉は時間が長引けば冷静な判断が出来てしまうからな。

 

「や、やめろ!それ以上ギルに手を出すな!!」

「なら早く決断しろよ?お前の判断一つで相棒の命運が決まるんだぞ?それと言うまでもないだろうが、あんまり低いと同じ末路だぞ?」

 

いやぁ、これは本当にいいな!バカ正直に戦う必要もないし楽して成果が出せるんだからな!!

 

「相棒が本当に大事なら……秘宝の一つや二つくらいは安いもんだろ?」

「むぐぅううう……!」

 

唸ってないで早く決断しろよ山羊野郎。遅いと本当に牛野郎は塔から落ちるぞー?

 

「あ、悪魔だ……」

「副隊長は本当に人間なのかしら……」

「人類はやっぱり滅ぼすべき存在かも……」

「俺よりも悪党してやがる……こういうのは俺の専売特許なのに……」

「そう思うなら見習え」

 

ちなみに何故かスノウ達はおろか、悪の組織の一員である六号でさえ引いていた。

結果、《ダスターの塔》の秘宝は無事に入手することに成功するのであった。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「納得いかん!」

 

《ダスターの塔》を攻略し、宿舎の部屋で六号とアリスと共に寛いでいた中で部屋に訪れたスノウの第一声がそれだった。

 

「こんな夜遅くに誘ってんのかよ?おっぱい女」

「色仕掛けで懐柔する魂胆か?おっぱい女」

「おっぱい女。自分は席外した方がいいか?」

「そのバカな呼び方はやめろ!!」

 

そうは言ってもなー。お前がそれ以外で役立った覚えがないしー。てか、栄養が全部そっちに行ってるんじゃないのか?

 

「納得いかんが……」

 

スノウは取り合うのも面倒なのか、本題に切り出したように二つの布袋を取り出すとオレと六号へと手渡した。

 

「貴様らの給金だ。ここ最近の戦果の報酬も含まれている。塔の攻略法も―――」

 

スノウの文句を無視してオレは袋の中を確認すると……袋の中には大量の金貨が入っていた。

 

「この金貨量だとどれくらいの価値なんだ?」

「その量なら一つの家庭が一年は贅沢な暮らしができる程度だが……ああ、そうか。お前と六号は頭がおかしくなっていたんだったな」

 

一年間贅沢が出来る?つまり……数百万の給料ということか?

 

「これは正当に評価されたものなのか?」

「そうだ。あんな方法で戦果を出したことには本当に納得いかんがな!!」

 

そうか、そうか。これが正当に評価された報酬かー。

この辺はホワイト企業だな。

 

「アリス。俺もうスパイやめてこの国に骨を埋めるわ」

「おい待て早まるな。日本語で言うなんて本気だろ」

 

六号も今回得た金額の多さに転職しようとしてアリスに止められてるな。分かるぞー。待遇が良い方に転職するのは労働者の権利だからな。

 

「俺はサハラ砂漠で一ヶ月死闘して帰ってきたら労いの言葉なく上司にパシらされた上、給料は色々引かれて手取り十八万だったんだぞ!?」

 

一ヶ月の砂漠遠征で手取り十八万!?

 

「まだ全然マシじゃないか!!オレなんか敵の重要拠点を一月で五ヵ所も一人で破壊しに行かされた上に、全部成功させて帰ったら休みも与えられずに他の激戦区の応援に行かされたんだぞ!?しかも給料は串焼二本買ったら消える程度しか払われなかったし!!」

 

オレのその反論に六号とスノウはドン引き。アリスは白けた目となっている。

 

「俺よりハードなのに……串焼二本……」

「お前の国はどれだけ酷かったんだ……」

「本当に正義の組織はブラックだな。むしろなんで労基にガサ入れされないんだよ」

 

そりゃ、体面はキサラギから平和を守る組織だからな!!大方、脅して黙認させてるに違いない!!

 

「と、取り敢えずこれはアリスの分だ」

「……人様から何かをもらうだなんてショットガン以来だな」

 

アリスは受け取った給金袋を掲げてそう呟くと、嬉しそうな感じで給金袋を抱きしめる。

……そういえばアリスはロボットだから、人から何かをもらう経験はあまりないのか。

取り敢えず、この数百万のお金は大事に貯金しておこう。

 

 

============

中間報告

 

現在所属しているグレイス王国と魔王軍との戦闘は激しくなっております。

その状況下でも戦闘員六号が率いる部隊は多大な戦果を上げています。

“臨時バイト”の立場である自分も共に行動しており、諸君らの任務に支障は現時点ではありません。

ちなみにこちらの給金は日本円にして数百万相当です。

今後も戦闘員六号とキサラギ=アリスと共に行動する次第であります。

 

報告者

久々に真っ当な給料を支給された元ヒーロー クロスブレードマン

 

追伸

そちらでの給料で醤油や味噌、塩を此方へと送ってください。後、地球には二度と帰りません。

============

 

 

「……なんでクロスブレードマンが報告書を書いているのかしら?」

「……さあ?」

「お願いだから帰ってきてよぉ。他のヒーロー達が弱いから張り合いがなくて退屈なんだ……」

 

 

 




プロフィール

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Ver:2

クロスブレードマン

キサラギの転送機で異世界に来た元ヒーロー。
現在はティリス個人に雇われ、キサラギとは“臨時バイト”として席を置いて六号とアリスと共に行動している。
睡眠不足で目の隈が酷かったが、現在は解消されている。

六号の評価:社畜
アリスの評価:悪党よりのヒーロー
ティリスの評価:勇者に匹敵するかも
スノウの評価:六号と同類
ロゼの評価:凄く強い副隊長
グリムの評価:出会いさえなかった不敏な人
べリアルの評価:好敵手!!
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