ところでタキオンとエピオンって似てませんか?似てますよね。
いけ、タキオン!私を勝利を見せるのだ!!うおおおおおおおお!!!
小噺:モルモットは超光速の夢を見るか?
デビュー戦を走り終えてすぐの事である。
その日は、私にしては珍しくひとりで廊下を歩いていたのだが、それが災いしてか何やら見慣れぬ輩に絡まれてしまったから困っていた。
絡んできたそいつはアグネスタキオンと言う名の、いかにも悪の科学者めいた目付きのウマ娘で、開口一番「やあやあ、突然すまないが君は体がずいぶん丈夫なそうだね。是非ともその秘密を探らせてくれないかい?」と捲し立ててきた。
急な事に驚きながらも、なんだ体力テストでもするのかと聞けばアグネスタキオンは、そんなありきたりな検査はしないよ。と首を振る。
じゃあ何をして検査するのだと聞けば、こいつは意味深に笑って私の研究に協力するなら教えてあげようじゃないか。と言うから、面白い奴めと怖いもの見たさに尾いて行く事にした。
そうして案内された部屋はあったのは、どう見ても電気椅子にしか見えぬ椅子であった。
まさかこれで検査するとは言うまいなと聞けば、おやよくわかったねとアグネスタキオンが返したから閉口した。
何と言う事だ。こいつの言う検査とはすなわち電気椅子による拷問であったらしい。
いくら頑丈な私でもさすがにこれは堪らんので逃げ出そうとしたが、しかしどこへ行こうと言うのかねと回り込まれてしまったから万事休すだ。
迫るアグネスタキオンに後退りしながら、もういっそ窓から飛び降りてやろうかとさえ考えていると、急に部屋の扉がノックされたからふたりして飛び上がった。
何だ何だと見ていたら向こうから「開けろ! 風紀委員会だ!」と声がして、アグネスタキオンが露骨にしまったと顔を顰める。
間髪入れずに扉が蹴破られて、竹刀を携えたバンブーメモリー以下数名が突入してアグネスタキオンを捕縛、私を保護したからこの日は事なきを得た。
次の日にまたもひとりで廊下を歩いていると、曲がり角からひょっこりアグネスタキオンが出てきて、やあやあ奇遇だねえと挨拶してくる。
何の用だと聞けば昨日の続きをしようじゃないかと言うから呆れた。
よくまあ顔を出せたものだが悪の科学者とは懲りないのが世の常と言うから、こいつもきっとそういう類なのだろう。
今度は真面なのだろうなと言えば、もちろんだとも、プロだからね。と答えて懐から蛍光色に輝く試験管を一本取り出すから踵を返した。
またある日の事だ。
セイウンスカイと授業をさぼって学園の中庭で昼寝なぞしていると、アグネスタキオンがようやく見つけたぞと笑いながらやって来たからげんなりした。
今度は何だと口をへの字にして聞けば、今日こそは協力してもらうよと笑って私の肩を掴むからますますげんなりする。
セイウンスカイに助けを求めようと思ったが、残念ながら隣を見たらすでに影もないから、ちくしょう逃げやがったと天を仰いだ。この借りはいつか返させてもらおう。
しかたなしに今日は何をする気なのだと嘆息すると、アグネスタキオンは小さな薬箱から錠剤をひとつ取り出して、これをひとつ飲んでみてくれと言う。
しかしそう簡単に飲めと言われても、こんな得体のしれん薬を飲むのはなかなかできる事ではない。
飲むにしても水が欲しいから少し待ってろと言って、水飲み場に行くふりをして私はそのままシリウスの部屋に逃げ込んでやり過ごした。
さらにまた次の日には、自主訓練の走り込み中にやって来て、やあやあ昨日ぶりだねえと並んできたからしつこさに呆れて閉口する。
二度あることは三度あると言うが四度もあってはもはや言葉も失うと言うもので、私はもうこいつがらみの面倒に巻き込まれぬように口を利かん事にした。
隣で何やら捲し立てるアグネスタキオンを無視して走り込みを続けていると、布製の腕輪のような器具を目の前まで持ち上げて、これで君の心肺機能を測定させて欲しいと頼んでくる。
どういう風の吹き回しかは知らんが、以前の電気椅子やら薬やらよりはよっぽど真面な頼みだったから、まあそれでこいつが大人しくなるならばと付けてやる事にした。
この時の私は、この一回だけを聞けばそれで終わりだと思っていたのである。
さても怪しげな器具を付けて走る事になった訳だが、予想に反してアグネスタキオンは終始情報収集に徹して静かだから驚いた。
これは偏見も甚だしいのだが、とにかく研究者と言うのは画面やら紙やらに向かってぶつぶつ呟いているもんだと思っていたから、何だか妙な気分になる。
しばらく外を走ってから学園に戻ってくると、器具を回収したアグネスタキオンがハッハッハと笑って、君のおかげで素晴らしいデータが取れたよと言う。
ただ走っただけで何がわかるのかは知らんが、満足したようで何よりである。もう付き纏うなよと嘆息混じりに言い含めて、それで私はやっとこのマッドサイエンティストから解放されたと思った。
だが今にして思えば、私はこの時点でアグネスタキオンの術中に嵌っていたのだろう。
ここで一度気を許してしまったばっかりに、この日から私とアグネスタキオンとの奇妙な付き合いが始まってしまったのだが、それはまた別のお話である。
次はアンケートで一番だったお話を書く予定ですので、対戦よろしくお願いします。
吾輩はウマであるは電子書籍化しました。
本編に大幅な加筆修正に加え、新規エピソードが追加されていたり、各主要キャラの設定を見直したりと、いろいろな部分に手を加えています。
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