これが土屋家の日常   作:らじさ

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第6話

「で、残りの不良20人を放課後に河川敷に呼び出したわけよ」幸せそうにケーキを頬ばりながらYukiが言った。

 

「おい、女。俺たちを呼び出すなんざいい度胸だな。お前何者なんだ」

「わたしはまあ、こいつらの保護者というか飼い主というかそんなもんね」

 

「(おい、Yukiの奴何か言いたい放題いってるぞ)」

「(保護者はともかく飼い主ってなんだ飼い主って)」

「(そうだそうだ。大体あいつから餌なんざもらったことはないぞ)」

「(そこを問題にするなバカ)」

「(要するにYukiの手下ってことだろう)」

 

「あのね、あんたたち。今、緊迫したいい場面なんだからそんなバカなやり取りはもう少し小声でやってくれないかしら」

「だいたい俺たちのケンカだったはずなのに、なんでお前が仕切ってんだ」

「アンタたちに好き放題やらせてたら話が大きくなるからでしょ。70人とケンカして40人寝込ませたなんて学校にバレたら退学ものよ」

「お前が1週間寝込ませろと言ったんだろうが」

「ことを収めるためには仕方なかったのよ」

 

「内輪の話はいい加減にしやがれ」まるっきり無視されていた敵のリーダーが叫んだ。

「ああ、ごめん。あんまりこいつらがバカなもんだから・・・で、何の話だっけ?」

「お前も大概バカじゃねえか。降参しろとかいう話だろ」Yukiの目がスッと細くなった。

「・・・・・降参するというのならあたしをバカと言った無礼は許してあげるよ。大体20人じゃこいつらに勝てないだろ」

「ふ、あんまりナメてんじゃねえぞ」と言うと不良連中は一斉にバットやら木刀やらの武器を出した。

 

「おい、あいつら武器出してきたぞ」と言いながら颯太が回れ右して歩きだそうとした。

「今更、どこ行こうってのさ」Yukiは颯太の襟首を捕まえた。

「いや、そろそろ門限の時間なんだ。破るとママンが厳しくて・・・」

「あ、俺はラジオ英会話講座の時間だ。早く帰らなきゃ」

「俺は、そろそろピアノのレッスンの時間だ」

「妹にミルクをやる時間だ」

「えーっと、おっ俺は、帰って明日の予習を・・・」

「よくもまあ揃いも揃って0.2秒で嘘だとバレるようなデタラメをほざけるもんだね」呆れたようにYukiはため息をついた。

 

「お前は簡単に言うがなYuki。バットで殴られるとなぁ・・・・・」篤が抗議するように言った。

「バットで殴られるとなんなのさ」

「痛いんだよ・・・・・」

 

「よし、じゃあ作戦を伝えるよ・・・・・」すぐにみんなの方に向き直ってYukiは言った。

「ちょっと待て、お前が聞くから答えたんだぞ。少しくらい俺の話にリアクションしてくれ」

「時間の無駄だったよ。とにかくあんた達はボクの後ろで腕でも組んで不敵な顔で笑っているだけでいいから」

 

「あの~、もうそろそろいいですかぁ~」敵のリーダーが待ちかねて声をかけてきた。

「ごめん、本当にごめんなさい。もう打ち合わせ終わったから」Yukiが申し訳なさそうに答えた。

 

「ふ、あんまりナメてんじゃねえぞ」と言うと不良連中は一斉にバットやら木刀やらの武器を再度とり出した。

「そこから始めるのかよ」呆れたように剛が言った。

「ふーん、武器を持てば対等になれっるってかい。じゃこっちも武器を出そうじゃないか」Yukiはポケットからホイッスルを出した。

 

「こいつ意外とバカだな。止めとけYuki。どれだけ吹いてもマグマ大使はやってこない。それは俺が小学生の時にさんざん試した」

「試したのかよ。いやYuki、笛じゃバットには勝てんぞ」

「いや、わからんぞ。Yukiは笛で戦う武術を修めているのかも知れん」

「いくら何でも笛じゃ勝てんだろ。せめて金属の笛だったら・・・・・」

「それでも無理だろ。逃げるための合図だと思う」

「あんた達、うるさい!!いいかげんに黙って見てな」Yukiはキレ気味に5バカを怒鳴りつけた

 

Yukiは周囲に向けて笛を吹いた。すると草原の中から、野球、ラグビー、サッカー、バレーやバスケットなどのユニフォームを来た男たちが200人ほど立ち上がった。

 

「あんた達、学校でカツアゲやイジメなど結構あこぎな真似しているみたいだね。そこであんた達の学校の生徒に声かけたのさ。立ち上がるなら今しかないよってね。20人ってことは1つの学校で4人の不良か。どんだけ強くても協力した一般生徒に太刀打ちできるかねぇ。おまけに今までの恨みもあるだろうし、どうなることやら・・・・・」

さすがに不良どもも事態が把握できたらしく自らの不利を悟ったようだ。

 

「ちなみに仲間が戻ってきたら勝てるなんてバカなこと考えるんじゃないよ。あんた達のお仲間は、わたしの真摯な説得を受け入れて真っ当になるって約束してくれたんだからね。あんた達の仲間は正真正銘ここにいる20人だけさ。それでもやるかい?」

 

「わかったよ。俺たちの負けだ」バットを放り投げてリーダーが悔しそうに言った。

「ついでに言っておくけど、後でここに参加したあんた達の学校の生徒に手を出すんじゃないよ。例え他の学校の生徒が手を出したとしてもあんた達がやったと見なすからね。それがいやなら一生懸命に守ってやりな」

 


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