これが土屋家の日常   作:らじさ

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第7話

「・・・・・なあ、おいYuki」颯太がYukiの袖を引っ張る。

「これを潮時に不良グループなん・・・なによ、颯太いいところなのに」

「この様子だと今日も殴り合いはないのか」

「殴り合わせないために、あたしが苦労して根回ししてきたんじゃない」

「話が違うぜ。暴れられるっていうから、今までずっと我慢してきたんだぞ俺たちは」

「そうだ」

「とりあえず、あいつらを殴らせろ」

「なんのためにお前のボディガードとやらをしたと思ってる」

「この青春の熱いリピドーを・・・」

「自分で何言ってるのか分ってないだろ。話し合いで済んだんだからそれでいいじゃない」

「そこまで言うなら俺にも考えがある」颯太はそう言うと、不良グループのボスの所へ歩み寄った。

 

「おい、お前。なんて名前だ?」ボスに声をかけた。

「どっ土井だけど・・・・・」ボスがビビりながら答えた。

「そうか、土井君。君の悔しい気持ちはよく分かるぞ。心配するな、俺は弱い者の味方だ。俺たちで力を合わせて、あの悪の女首領を倒そうではないか」

 

「なっ・・・・・」あまりの事態にYukiが言葉を失っていると

「なるほど」

「その手があったか」

「よし、俺も乗った」

「俺も行くぞ」と残りの4バカも不良側に駆け寄った。

 

「どうしたYuki。目元を押さえたりして。泣いてるのか」颯太が挑発するように言った。

「あんたたちのあまりの頭の悪さに眩暈がしてるのよ」

「ふふふ、その減らず口もここまでだ。散々、子分扱いしてくれた恨みを晴らしてやる」

「言っても聞かないわよね。不良たちは好きにしなさい」と言ってYukiがホイッスルを吹くと同時に200人の運動部員が襲いかかってきた。不良たちはたちまち逃げ出した。

 

「へ、素人なんぞ、俺たち5人で十分だぜ」篤が叫んだ。

「忠告しておくけど・・・・・」Yukiが諭すように言った。

 

「一般学生に手を出したらお母様方が黙っちゃいないわよ」

「しまった。それを忘れていた」

「汚ねえぞYuki」

「どの口がそんなことホザくのかしらねぇ」呆れたようにYukiが言った。

「待ちたまえ君たち。話し合おうじゃないか」

「我が国には平和憲法と言うのがあって・・・・・」

「暴力はいけないよ君たち。暴力では何も解決しない・・・・・」

 

5人が200人の運動部員の波に飲み込まれていくのをYukiは頭を振りながら見つめていた。

 

「ボク、あいつらの事をずっとバカバカって言っていたけど誉め言葉になってた気がする」少女がため息をつきながら言った。

「・・・・・我が兄ながら恐ろしい男だな」少年も言った。

「まあ、わたしも正直びっくりしたけどね」Yukiが苦笑いしながら言った。

「で、どうやって仲直りしたんですか?」少女が尋ねた。

「仲直りって、別にケンカした訳じゃないから特別仲直りなんてしてないけど・・・・・」

 

「でっ?」Yukiは目の前にある颯太の頭をグリグリ踏みつけながら言った。

「でっとは?」同じく土下座している篤が聞いた。

「何してるのかって聞いてるんだよ」

「見りゃ分るだろ土下座だよ。というかお前は意味も分からずに人の頭を踏みつけてたのか?」颯太が頭を起して怒鳴った。

「そりゃ廊下で5人が揃って土下座してりゃ理由も聞きたくなるだろ」

「ババア共に言われたんだよ。結城君に土下座して許しを得るまで飯ヌキだって」剛が答えた。

「許しって何の?」

「昨日ボロボロで帰ったら、ババアに見つかって事の顛末を洗いざらい吐かされちまった。でYukiを裏切ったってバレたらババアが激怒してな」

「それでさっきから気になってたんだけど、なんでみんなそんなに絆創膏や包帯を巻いてるのさ。運動部の連中には問題になるからできるだけ怪我させないように言ってあったはずなんだけど」

「心配するな。9割がたはババア共にやられた傷だ」

「運動部200人よりも強いんだね。お母さんたちが、あと5人いたら日本は戦争に勝ってただろうね」

「そんなことはどうでもいい。俺たちを許してくれるのか。メシがかかってるんだ」

「まあ、そういう連中だと知ってて付き合ってるわけだから、許すも許さないもないんだけど・・・・・」そういってYukiは考え込んだ。

 

しばらく考えると顔をあげてこう言った。

「わかった、許してあげるよ。ただし君たちを放し飼いにするのは心配だから、5人とも生徒会に入りな?」

 

「「「「「はあっ?」」」」」

 

「僕は会長だからね。会長直轄の執行役員ということにしよう」

「いくら会長でもそんなこと独断で決めていいのか?」颯太が聞いた。

「大丈夫。僕には君たちと友人という以外の悪評はないからね。生徒からも教師からも信頼はあるさ」

「いやあ照れるな」

「バカにされてんだ。俺たちと友人ってのは悪評なのか」

「何かプラスになる要素が一つでもあるかい」

 

「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」

 

その時、2人の女生徒が6人の後ろを通りかかった。

「・・・でね、不良学生が300人ぐらいで河川敷で大乱闘したんだって」

「怖いわね」

「救急車も10台以上でる大騒ぎだったらしいわよ」

「わあ~スゴい」

「それで勝ってここら辺の不良を束ねることになったのが、うちの学校の裏番のスケ番なんだって」

「そんな強い人うちの学校にいたんだ」

「それがスゴく綺麗な人なのに、男の不良何十人も相手にしてそりゃもうスゴかったらしいわよ」

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

「・・・・・Yuki、今の話はもしかして?」

「君達・・・・・」Yukiは血走った目で5バカを睨みつけた。

 

「今後、この話したら殺すから」

 


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