「あっ、あの連中を生徒会に入れたんですか」
「目の届かないところにおくと、また何やりだすかわからないからね」
「でも会長直轄の執行役員なんて重職・・・・・」
「名前はかっこいいけどただのパシリよ、パシリ」
「でも、いくらなんでも」
「まあ、運動会や文化祭で事件起こしてくれたけど、それ以外は平和なものだったわよ。それにとにかく高校入れるために勉強させなくちゃならなかったしね」
「Yukiさんが勉強見てあげてたんですか?」
「そうよ。あんまり底辺の学校行かれても困るしね」
「なんでまた・・・・・」
「いっ、一緒の高校行きたかったのよ」Yukiは少し頬を赤くして照れ隠しに横を向いて言った。
「だってYukiさん、全国模試でもトップクラスだったのに、あいつらと同じ高校って・・・・・」
「本当はね。中学は公立、高校は私立の名門からT大の理Ⅲに進学ってのが代々決まっているの」
「それなら中学から名門私立行けばよかったのに」
「それが子供に院長を譲った後は政治家になるのも慣習なの。選挙運動の時に、地元に友達がいないとカッコつかないでしょ。だから中学は地元の公立に行くの」
「一族挙げて腹黒いんだね・・・・・」
「だけど、あたしはどの高校からでも理Ⅲに入ってみせるって言って、反対押し切ってあいつらと同じ高校に進んだのよ」
「・・・・・そうだったのか。なぜYukiさんが同じ学校に行ったのかずっと不思議だったのだが」
「それをあのバカども「女にモテるぜ」と2年で辞めたのよ。信じられる?」
「信じられるかというよりも、中学の時にそれをやらなかったのが不思議だなっと・・・・・」
「で、あいつらがいなくなったら面白くないから私も一緒に辞めようとしたら家族からお母様会からあの連中にまで反対されちゃって」
「お母様会までですか」
「凄かったわよ「結城君、高校辞めたらこの子の体中の骨をブチ折るから」って」
「・・・・・それ、説得というよりは脅迫ですよね。おまけに自分の子供を人質に取るって」
「まあ、一番効いたのが颯太の言葉ね」
「・・・・・ロクなことは言わない気がするのだが」
「「バンドで飯が食えるようになるまでは5年かかる。それにお前を巻き込むわけにはいかん。だからその間にお前は高校を卒業して、その時に気が変わってなかったら俺たちを助けてくれ」って」
「・・・・・颯太君の言葉で初めてまともな言葉を聞いたよ」
「で、とりあえず高校を辞めるのはやめて卒業を目指したわけ」
「ところでT大の理Ⅲはどうなったんですか?・・・・・」
「全部あいつらのせいよ」
「あの騒動で落ちちゃったとか」
「失礼ね。高校時代は全国模試でずっとトップクラスだったわよ。理Ⅲにもストレートで受かったわ」
「でも今やってるのって・・・・・」
「あいつらが一緒にやろうっていったから、スタイリストを目指したの。売れればプロダクションのおエラいさんにも顔が効くし、あいつらも売り出せるわ」
「それで理Ⅲに行かなかったんですか」
「そうよ」
「そうよって、もったいない」
「別に医者になりたかったわけじゃないわよ。ただ家が代々そうだからそういうもんだと思っていただけ」
「ご両親は怒らなかったんですか」
「怒るも怒らないもないわよ」
「どっちなんですか」
「そういう場合は普通怒ったってとるべきものでしょ、愛ちゃん。親戚一同大激怒。1週間大喧嘩した挙句に家を飛び出て、私は勘当になったわ」
「さすがに名門の家はレトロな風習が残っているんだね・・・・・」
「まあ、家は妹がいるから婿を取ればいいんだけど」
「ええ~!Yukiさん妹がいるんですか」
「そうよ。愛ちゃんたちの1つ下で櫻ヶ丘学園に通っているわ。康太は何回か会ったことがあるわよね」心なしかYukiの顔がニヤけている。
「・・・・・会ったことはあるが、ほとんど覚えていない」
「まあ、あんな才色兼備で優しくてスタイルのいい子を覚えていないなんて」
「(・・・・・何かYukiさんの雰囲気が変わってきたんだけど)」
「(・・・・・典型的シスコンって奴だな)」
「あ、そうそう。こんな無駄話をしている場合じゃなかったわ。あなた達に大事な頼みがあったの」
「ボクたちにですか?何かできることあるのかなあ」
「あなたたち文月学園だったわよね」
「・・・・・いちおうそうだが」
「妹の名前は茜っていうんだけど、櫻ヶ丘学園の演劇部なの。今度、文月学園と合同で演劇やるらしいんだけど、どうも好きな男ができたらしいのよ」
「・・・・・はあ?」
「その男を突き止めて欲しいの」
「・・・・・で、どうするんですか」
「・・・・・愛ちゃん・・・・・」Yukiは窓の外を眺めながら言った。
「なっなんでしょうか?」
「日本の去年の行方不明者って83492人なんですって」
「それがなにか・・・・・」
「それが83493人になったって誰も気にしないと思わない?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・まあ、それはともかく少しくらいは手がかりがないと探しようがないんだが」
「ああ、名前は分かっているの」
「それならすぐにわかるね。何て名前なんですか」
「・・・・・木下秀吉っていう男らしいわ」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」