これが土屋家の日常   作:らじさ

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第9話

「じゃ手間をかけるけどお願いね」Yukiはレシートを取ると入口に向かって歩いていった。

 

「ねぇ、どうしようか?」

「・・・・・取りあえず状況が分からんと対策もとれん。明日の放課後に中庭に来てくれ」

 

翌日の放課後、少年と少女は中庭で落ち合った。

 

「・・・・・とりあえず俺は櫻ヶ丘学園に行って茜ちゃんの情報を集めてくる。お前は・・・」

「わかってるよ。木下君を見張ればいいんだね、ボクにまかせておいて」

「・・・・・お前が断言して大丈夫だったためしがないんだが。分かっていると思うが、くれぐれも極秘行動で頼むぞ」

「ふふふ、誰に向かってそんな口をきいているのさ、康太。こう見えてもボクは中学時代は、ダブルオー愛子と呼ばれて・・・・・」

「・・・・・お前がどういう中学生だったのか俺にはもう想像もつかん。とにかく2時間後にAクラスの教室に集合だ」

「なんでAクラスなのさ」

「・・・・・Fクラスだと、余計な連中が多すぎる。隠密行動どころじゃない」

 

2時間後、あちこちと駈けずり回って疲れ果てた身体を引きずるようにして、Aクラスにたどり着いた少年はドアを開けた。

 

ガラガラ・・・・・・・

 

「遅いよ康太。一体何してたのさ」いきなり少女の声が飛んできた。

「・・・・・いや、櫻ヶ丘学園に行ってきたのだが、ちょっとお前に聞きたいことがある。こっちに来てくれ」

「なに、どうしたの?何か問題でもあった?」少女がトコトコと傍にやってきた。

「・・・・・つかぬことを尋ねるが、お前は「極秘行動」という言葉の意味を知ってるか?」

「何それ?こう見えてもボクはAクラスだよ、知ってるに決まってるじゃん」

「・・・・・そうか、知ってたか。それならちょっと聞きたいんだが、なぜ雄二がここにいる?」

「坂本君の悪知恵を貸してもらおうかと思って」

「・・・・・霧島もいるようだが」

「坂本君がいるなら代表がいるのは当然だよね」

「・・・・・明久もいるな」

「木下君の友達として意見を聞こうかと思って」

「・・・・・島田と姫路の姿も見える気がするんだが」

「吉井君が参加するならぜひ自分たちもって」

「・・・・・黒いオーラを噴出している木下優子はなんなのだ」

「家庭での行動を把握できるでしょ」

少女はどうだとばかりに胸を張った。少年は眉間を揉みほぐして心を落ち着けようとした。

 

「・・・・・それでは、隅の方でニコニコしているアンナはどうしたのだ」

「マスコットガールにピッタリだなっと」

「・・・・・だなっとじゃない。お前は「極秘行動」という意味を本当に理解してるのか?これでは、いつものメンバーより多くなっているではないか」

「必要最小限のメンバーだと思うんだけど」少女は悪びれず答えた。

「・・・・・マスコットガールを何に使うつもりだ、お前は」

「士気が高まるじゃん」

「・・・・・男は3人しかいないぞ」

「康太は何も知らないんだね。アンナちゃんは女生徒にも大人気なんだよ」

「・・・・・そんな情報はいらん」

 

「じゃ、これは言わない方がいいのかな?」少女は顎に手を当てて考え込むように言った。

「・・・・・まだ何かあるのか?」少年は呆れたように言った。

「大したことじゃないんだけど、須川君がFFF団を引き連れて隣の教室で待機しているの」

「・・・・・要するに秀吉以外の全員に知られているということではないか」

「さすがに全員っていうことはないんじゃないかな?すぐ帰宅した人もいるし」

「・・・・・そんな話をしているのではない。お前が考える「極秘行動」の意味を言ってみろ」

「そんな豆テストで遊んでいる場合じゃないでしょ」

「・・・・・いいから言ってみろ」

「まったくもう。「すごく密やかに行動すること」。これでいいの?」

「・・・・・その結果がこれか?俺はお前が「木下秀吉君に彼女ができました。情報をお待ちしてます」と校内放送でもしたかと思ったぞ」

「バカだなあ康太は。そんなことする訳ないじゃん」

「・・・・・校内放送するよりも多い人数が集まっているのだ。大体なんでFFF団にまで知れ渡っているのだ」

「ああ、それはだね・・・・・」

 

人気のない西校舎裏に一組の男女がいた。

「用って何・・・・・確かFクラスの須川君だったかしら(それにしてもFクラスの連中ってみんな締りのない顔してるわね・・・)」

「いっいや、すまん木下。大したことじゃないんだけど・・・・・」

「大した用じゃないなら帰りたいんだけど(このシチュエーションで秀吉のこと聞かれたら、こいつ殺すわよ私・・・)」

「いや、俺にとっては重要というか・・・・・」

「そうなの(早く言いなさいよ、ホラホラ・・・)」

「おっ俺、木下のことが好・・・・・」

「あ、いたいた。おーい優子」少女が大声で叫びながら木下優子のところへ駆け寄ってきた。

「なによ愛子。今大事なところなんだけど」不機嫌な声で優子が答えた。

「えっ?あ、須川君もいたんだ。ごめんね、すぐ済むから」空気をまったく読まずに少女は言った。

「えっ、いや工藤。できれば後にして欲しいんだが・・・・・」

「大丈夫、大丈夫。すぐだよ」

「なによ、愛子。じゃ、さっさと言いなさいよ」諦めた様子で優子が言った。

 

「うん、あのね。秀吉君に彼女ができたみたいなんだけど、何か知らないかと思ってさ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ゴッ)」

「優子どうしたの?」

「・・・・・・ん・・・・・・・って(ゴゴゴッ)」

「え?」

「・・・・・・ん・・・で・・って(ゴゴゴゴゴッコ)」優子は両拳を握りしめてプルプル震えだした。

「あっあの、優子大丈夫かな?」

「ぬぁんですってぇぇぇ~~~(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)」

「キャアァァ~~」

「あたしよりも先に彼女ですって?そんなこと許されるはずがないじゃない」

 

「あっはっはは、その様子じゃ知らないようだね。じゃ、お邪魔しました。続きをどうぞ」優子は逃げ出そうとした少女の襟首をムンズと捕まえた。

「待ちなさい、愛子。秀吉のところに案内しなさい。長幼の序というのを骨身に叩き込んであげるわ」

「きっ木下、俺の話を・・・・・」

「うるさい。今はそれどころじゃないのよ」と言いながらキャアキャア叫ぶ少女を引きずって行った。

残された須川は地面に両手をついて「おのれ秀吉。許すまじ」と泣き叫んでいた。

 

「・・・・・ということがあってね。それと何か関係あるかなぁと」

「「関係あるかなぁと」じゃない。100%それが原因だ、バカもの」

 


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