これが土屋家の日常   作:らじさ

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第14話

「何さそれ、あんまりボクの女のカンを馬鹿にすると痛い目にみるよ・・・・・」

「・・・・・まともに相手して痛い目にあったことは数々あったが」

「・・・・・まっまあ、それはそれとして今回は本当なの。ボクのアンテナにビンビン来てるの」

「・・・・・それはロクでもない電波でも受信しているだけなのではないか?」

 

ギャアギャアしている間に稽古が終わったらしい。演劇部員が体育館の窓を閉めて掃除を始めた。

 

「おい、ムッツリーニ。どうすんだ?」雄二が聞いた。

「・・・・・今日はもう何もないだろう。みんな帰ってくれ。また、何かあったら頼む」

「今日の成果ってバックブリーカーかけられただけなんだけど」明久が言う。

「・・・・・それは俺の責任ではない。島田と話し合ってくれ」

「じゃあ、土屋君また来週ですね」

「ああ、そういえば明日は日曜日だったわね」

「そういえば明日はソータとデートでシタ」

「えぇ、アンナちゃん。あの颯太君といつの間にそんな約束を・・・・・」

「ハイ、この間格闘ゲームで私が勝ってデートの約束をしました」

「・・・・・どこにいくのだ?」

「ハイ、角のコンビニでプリンを奢ってくれるそうデス」

「・・・・・デートだよね?」

「ハイ、デートです」ロシアン少女は嬉しそうに言った。

「・・・・・まあ、アンナが満足ならばそれでいいのだが、我が兄ながら随分安上がりにデートを済ませる男だな」

 

その時、秀吉が少年の傍にやってきてささやいた。

「ムッツリーニ、後でちょっと相談があるのじゃが・・・」

「・・・・・秀吉が俺に相談とは珍しい何だ」

「それは後で話すのじゃ。ちょっと残っていてくれんかのう」

 

やがて誰もいなくなった体育館に秀吉と少年・少女だけが残った。

 

「・・・話はなんだ」

「いや、ちょっと言いにくいのじゃが、明日結城とデートすることになってのう」

「・・・いや、それは止めておいた方が」Yukiの顔が脳裏をチラつく。

その時、少年を押しのけて少女が目の前にたった。

「まったく。木下君も恋愛の相談だったらなんでこの恋愛エキスパートのラブリー愛子に相談しないかなぁ?康太みたいな朴念仁に相談したって何の役にも立たないよ」

「工藤は、そんなに恋愛経験が豊富じゃったのか?」

「・・・いっいや、彼氏は康太が初めてだけど、大事なのは中身なの」

「・・・・・ロクな経験はしてなかったはずだが」

「康太、うるさい。とにかくボクに任せておいて。どんな女の子でもオチるデートプランを作ってあげるよ」

 

「いっいや、そこまで張り切らんでも普通のプランで十分なのじゃが、大体好きかどうかも・・・モゴモゴ」

「・・・・・好きじゃないのか?」

「こういう経験がないからよくわからんのじゃ。何しろワシを男扱いしたのは結城が初めてじゃし」

「それだけなの?」

「いや、結城のことを考えると胸がモヤモヤとするのは確かなんじゃが」

「恋だね!!」

少女は力強く断言した。

 

「・・・・・いや、待て愛子。あまりにも即断すぎるだろう」

「なにを言ってるのさ康太。ボクの女のカンと木下君の胸のモヤモヤが同じことを言っているんだよ。これが恋以外のなんだって言うの」

「・・・・・胸焼け」

「何がどうあってもボクの女のカンを否定するつもりなんだね」

「・・・・・いや、ある意味で信頼はしているんだが」

「もっとポジティブに信頼しなよ」

 

「ケンカはあとにしてデートプランをお願いできんかのう」

「ふふふ、任せておいて」少女を手帳を取り出すと頁を開いた。

「・・・・・何だそれは」少年が尋ねた。

「今週、映画館でやっているタイトルと上映時間の表だよ。康太にいつ誘われてもいいように毎週作っているのに一度も役に立ったことはないんだけど」

「・・・・・そんなもの作っているとは知らなかったが、そういうのは誘われる側が作るものなのか?」

「本当に毎週毎週ボクの努力を無駄にしてくれたよね」

「・・・・・もっと有意義に時間を使え」

「それはともかく今週は何がお勧めなのじゃ?」

「初デートだからね。大人の恋愛ものでムードが盛り上がるものがいいんじゃないかな?」

「そういわれてもわからんのじゃが。工藤なら何が見たいのじゃ」

「えっ、ボク?えーっとこのタイトルだったら「金魂 the movie 血風江戸桜」かな?」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・どこが大人の恋愛だ」

「だって金魂だよ、金魂。ボクの大好きな金魂の映画なんだよ」

「・・・・・初デートで見る映画じゃないだろう」

 

「工藤、このドクロマークは何じゃ」

「それは呪われた悪魔の映画。絶対に見ちゃいけないの」

「・・・・・なになに「悪魔の盆踊り」?」

「全米ホラー映画ヒットNo.1という血塗られた映画だから絶対に見ちゃだめだよ」

「いや、さすがに見るつもりはないが、結局お勧めは何なんじゃ」

「うーん、この中じゃ「プリティ・オーメン」かな?女の子に人気だよ」

「わかったのじゃ。それにするのじゃ」

秀吉は見た目にもウキウキと体育館を出て行った。

 

「・・・・・大丈夫なのか?」

「何が」

「・・・・・お前が絡んだことがものすごく心配なのだ」

「ボクはお勧めを教えただけだよ。そうそう問題が起こるわけがないよ」

少女は明るく答えた。

 

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