「よ~し、今度こそ」少女が100円玉を入れようとしたところを後ろからハタかれた。
「痛いなぁ、何すんのさ康太」
「・・・・・何すんのさじゃない、1000円以上使ってるんだいい加減にしろ」
「だってこのままじゃストリートファイター愛子の名前が・・・・・」
「・・・・・心配するな。その魔法少女みたいな名前に何の権威もない」
「愛ちゃん、あたし飽きちゃったよ。そろそろ他のゲームやろう」
「そう?じゃ次に行こうか。それにしても陽向ちゃん、途中からすごく強くなったけど力隠してたの?」
「ううん、このゲームやるのは初めてだよ。最初の2戦はプログラムを解析してたの」
「なるほど、強いはずだね・・・・・で康太、解析ってなに?」
「・・・・・なんでお前がAクラスにいられるのかが、本当に不思議なのだが」
「だって授業じゃ出てこないよ、解析なんて言葉」
「簡単にいうとレバーの動きとキャラの動きのズレとか技を出すときのタイムラグとかを観察してたんだよ」
「・・・・・まあ、解析できたとしても、こいつの人間離れした反射神経があっての話なんだが」
「じゃ次はプリクラ撮ろうプリクラ」陽向が言った。
「プリクラ・・・・・」
「・・・・・プリクラ」
「何で二人して固まってるのさ。付き合ってるんだからプリクラくらい何回も取ってるでしょう?それとも初めてなのかなぁ」陽向がニヤニヤして言った。
「バッバカを言ってもらっちゃ困るなぁ、陽向ちゃん。ボクたちはプロだよ、プリクラくらい飽きるほど撮ってるね」
「・・・・・何のプロだ。まあ、確かに撮りすぎて飽きているところだ。お前一人で撮ってこい陽向」
「三人で来て一人だけプリクラ撮るなんてなんの罰ゲームよ。康兄、そんなこと言って愛ちゃんと一緒にプリクラ撮ったことないんでしょ」
「・・・・・ふ、そこまで言われてはしょうがない。いくぞ愛子」
「わかったよ!康太」
「いや、そこまで力入れて撮るもんじゃないでしょ、プリクラって」
「・・・・・うるさい、行くぞ」
「おう」
「ねぇ二人とも・・・・・」
「「なんだ?」」
「手と足が一緒に出てる」
「・・・・・ギャグだ」
「ギャグだね」
「なんでそういうところは息がピッタリなのかなぁ?」
愛子、陽向、康太の順に並んでプリクラを撮った。
「ふーん、好きな字が書けるんだね、じゃ」と陽向がペンをとってそれぞれの画像の上に字を書き出した。
「おかあさん ひなたちゃん おとうさん」
「痛っ、なんで殴るのさ、康兄」
「・・・・・何でじゃない。なにを書くんだ、お前は」
「いや、微笑ましい家族像を演出してみようかと・・・」
「・・・・・いらん演出しすぎだ。なんで高二で中三の娘を持たにゃならんのだ」
「陽向ちゃん、2歳違いでお母さんは無理があるんじゃないかなぁ」愛子が頬を染めて言った。
「わかったよ。まったく二人とも頭が固いんだから」陽向がブツブツ言いながら書き直した。
「嫁 妹 兄」
「痛い、だから何で殴るの康兄は。演出無しにしたじゃん」
「・・・・・その嫁ってのは何だ、嫁ってのは」
「だってお母さんがいつもそう呼んでいるんだもの」
「・・・・・お袋の言うことは聞くなと言っているだろう」
「あのね、陽向ちゃん。今、嫁と呼んでいいのはアンナちゃんだけだから」
「・・・・・いや、愛子。それも違う」
大騒ぎでプリクラを撮り終わった。
「陽向ちゃん、次はどこに行こうか?」
「あたし観たい映画があるんだ」
「どっどんな映画かなぁ。ボク怖いのはちょっと苦手で」少女が警戒しながら尋ねた。
「あのね「ひぐらしの鳴く頃に」っていう映画なの」
「へぇ~ノスタルジックなタイトルだね。どんな内容なの」
「あたしも良く知らないんだけど、ゲームを映画化したもので、田舎に引っ越した少年と地元の少女たちのお話らしいよ」
「日本的な青春ラブロマンスっぽいね。じゃあ、観にいこうか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・おい、愛子」
「・・・・・・・・・・・ちょっ、ちょっとソッとしておいて・・・・・ひっ酷い目にあった・・・・・」
「いやぁ、怖かったね」あっけらかんと陽向が言った。
「・・・・・怖かったねではない、バカ者。どこか青春ラブロマンスだ。逃げも隠れもしないホラーじゃないか」
「あたしもあんなに怖いとは思わなかったよ」
「陽向ちゃん、ゲームを映画化したものって言ってなかった?ゲームもあんなに怖いの」
「うん、ほぼ忠実に映画化されてたね」
「じゃ、ホラー映画じゃない。どうして言ってくれなかったの」
「いや、映画化する時に怖い部分は全部カットしてくれてたんじゃないかなぁと思って」
「・・・・・まったく根拠のないお前の願望じゃないか」