これが土屋家の日常   作:らじさ

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最終話

雄二は善戦したと言えよう。召喚獣の動かし方では遥かになれている。相手に接近しメリケンサックで殴りまくる。

 

「カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン」

 

ただ悲しいかな相手の防御力が強すぎて1点も減らない。

「あの~学園長。あたしも反撃していいんですか?」

「ああ、戦いだから好きに反撃しな」

 

ガンガムは片足をあげて雄二の上に置くとゆっくりと降ろし始めた

 

「ぷち」

 

「勝負あり」吉本先生の声が響いた。

勝利というよりも事故と言った方が適切な気がするが勝ちは勝ちだ。いやあ、恐ろしい。あれが2年でなくてよかったなあと1年生に同情した。

 

「じゃ、土屋。みんなに挨拶しな」学園長が転入生に言った。

「はい」と転入生がマイクの前に立った。

「初めまして文月学園の皆さん。私は土屋陽向と言います。お気軽に陽向ちゃんとお呼び下さい。この学園の2年Fクラスの土屋康太の妹です。なんか1年Aクラスの代表と1年の総代とかをやらされるそうですが、私が総代になったからには1年を半年で優勝が狙えるチームにして見せます。座右の銘は「下克上」です」と言ってペコリと頭を下げた。

 

そう、みんな笑っていたのだ、この時には。まさか数ヵ月後にテンヤワンヤの大騒ぎになるとも知らずに・・・

 

「じゃ、これで集会は終わりだよ」

 

少年と少女は転入生のところに駆け寄った。

 

「・・・・・おい、陽向。お前はこんなところで何をしているのだ?」

「やだなぁ、康兄ちゃん。集会参加してなかったの」

「・・・・・参加していたから聞いているんだ。なんでお前が転入してくるんだ」

「ん~、愛ちゃんの話聞いてこの学校が面白そうだったから」

「ボクの話って、あの夜の話?」

「そう、水泳以外にも楽しいことがありそうだったって話」

「・・・・・いや、そんな些細なことを聞いているんじゃない。なんで中学三年生が高校に転校できるんだ。日本には飛び級はないぞ」

「別に飛び級なんてしてないよ」

「わかるように話してくれるかな、陽向ちゃん」

「んとね。この学校に転校したいって抜け忍係の鈴木さんに相談したの」

「・・・・・抜け忍係に相談したってどうにもならんだろう」

「康兄ちゃん、忘れたの鈴木さんは住民課なんだよ」

「・・・・・だからどうした?」

「戸籍とか住民票とか扱う課じゃない」

「?????」

「だから偶然あたしの生年月日を1年早く書いちゃうこともありえない話じゃないよね」

「・・・・・有りえるか、そんな偶然。お前、何かで鈴木さんを脅したろう」

「康兄、いくら兄妹でも言っていいことと悪いことがあるよ。脅したなんて人聞きの悪い」

「脅したんじゃないんだね」

「うん、お礼に鈴木さんが人に見せたくない写真をネガごとあげただけ」

「・・・・・それを世間では脅しというんだ、バカ者」

「まあ、もう転校してきちゃったものしょうがないじゃない。ところで康兄、さっきから気になっているんだけど、窓を釘で打ち付けている人たちは何なの?」

 

少年が振り返るとFFF団の団員が一心不乱に窓を釘付けしていた。これはいつものあれだ。背中に冷や汗がながれる。

 

そこに須川がやってきて言った。

 

「やあ、土屋陽向君だったね。こんな可愛い妹がいるなんて康太君が妬ま、いや羨ましいよ。ところでお兄さんと大事な話があるんだ。ちょっと借りていいかな」

「あ、そうですか。じゃ、康兄。あたし愛ちゃんと帰るね。あんまり遅くならないようにね」陽向は愛子の手を取って出口に向かって駆け出して行った。

 




ご愛読ありがとうございました。やっと終わりました。
正直納め方が一番難しい作品でした。

一応、次の作品までは陽向が活躍する予定なんですが
これってすでにバカテスじゃなくなっている気が・・・

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