「しかしこりゃ誰の考えだ」
「・・・・・十中八九、陽向のアイディアだ」
「陽向ちゃんってムッツリーニの妹の?」
「・・・・・そうだ。あいつは試召戦争をしたくてウズウズしていたんだが、1年生がAクラスに戦争をしかけてこないとブツクサ言っていた。だから学年間戦争を仕掛けたんだろう」
「ムッツリーニの妹だけでこんな大がかりなことが決められるもんかのう?」
「・・・・・学園長を説得したんだろう」
「あのババアを乗せたのか、スゲエな」
「・・・・・陽向は年寄りに可愛がられるタイプらしい。伊賀では毎朝隣りのバアさんに遊んでもらっているとか言ってた」
「「「「「ほう、そりゃすごいな」」」」」
よもやその「遊んでもらっている」の内容が、鎖鎌で追い回されることだとは思いもよらない一同は感心したように言った。
「つまりそのテクニックで学園長を籠絡したという訳じゃな」
「いや、それだけじゃないだろう」雄二が苦い顔をして言った。
「・・・・・どういうこと雄二」霧島さんが不思議そうに尋ねた。
「このふざけた通知をよく読め」壁に貼られた学園長からの通知を指差した。
【第1回チキチキ下剋上大合戦】
・学年単位の試召戦争等する。ルールは通常通り
・総大将は各学年の総代とする。総代が仕留められた時点で試合終了とする
・戦闘フィールドは校内全域
・各人は2×4cmの白布に名前を書いて左胸に表示すること
・多重戦争も認める
・戦闘数に制限は設けない
・負けた学年はそれぞれのクラスのレベルを1ランクダウン
・補習は体育館でそれぞれの教科に別れて行う
・補習は現行通り。時間制限あり、問題数制限なしの青天井ルールとする。
・OP曲“吹けよ風、呼べよ嵐”、http://www.youtube.com/watch?v=LcgKfS18whw
・挿入曲“ごはんはおかず”、http://www.youtube.com/watch?v=y2FGSGcLqno
・ED曲“甘き死よ、来たれ”、http://www.youtube.com/watch?v=a6r_M5tTb3E
「なんだこのOP曲やら挿入曲やらED曲ってのは、あのババア完全に遊んでやがる」
「・・・・・私もそう思う」
「珍しく意見が一致したな、翔子」
「・・・・・OP曲は「ハレ晴れユカイ」にするべき」
「選曲を問題にしてんじゃねぇんだよ」
「挿入曲が「ごはんはおかず」というのは問題にならんのじゃな」
「・・・・・ED曲が「甘き死よ、来たれ」とは不吉」
「だから曲の話はどうでもいいんだよ」
「それよりこの多重戦争とはなんなのかのう?」
「例えば1年が俺たちに戦争を仕掛けてきた時に、3年が便乗して俺たちに戦争仕掛けてもいいってことだ。くそっ、俺たちに不利じゃねぇか」
「どうしてさ、雄二。1年が僕たちに仕掛けてくるとは限らないじゃないか」
「アホか。確かに強い奴からツブすってのはケンカでも戦争でも常道だが、試召戦争の場合には点数が減っていくんだ。その条件で俺たちに戦争仕掛けられたら、マズいことに俺たち、正確にはFクラスだが、は3年Aクラスと確執がある。だから3年が俺たちに多重戦を仕掛けてくるだろう。それを見越せば俺たちが先に3年に仕掛けるだろうと思うから、1年は兵力を温存して、戦争後に勝った方に仕掛けるつもりなはずだ」
なるほど正論だ。だが、雄二。そういう話はもっと小声でした方がいいんじゃないだろうか?集まってきた他のクラスの連中が戦争に敗れることが必然になっているのはFクラスのせいだという目でさっきから僕たちを睨んでいるんだが。
視線に質量があったら僕たちは射殺されているに違いない。
「じゃ、どうすればいいのさ。このまま座して死を待つのかい?」
「とりあえず作戦を立てよう。翔子お前が総大将だから一緒に来い」
「・・・・・市役所が先」
「まだ言っているのか。諦めてとっとと来い」
僕たちは戦争準備に取り掛かった。
・・・・・3年Aクラスの教室
「おい、高城。全校戦争どうすんだよ」常村が言った。
「2年Fクラスに復讐するチャンスだぜ」夏川も同調した。
「うーん、クラス対抗じゃないしねぇ。こっちから仕掛けるのも得策じゃないし、わざわざ3年に戦争仕掛けてくるとも思えないから、1年と2年で争ってくれるんじゃないかな?その後、勝った方を力技でツブしに行こう」
「あんた面倒くさいだけなんでしょ」小暮が呆れたように言った。
「うん、いっいや作戦だよ、作戦」
「どうだかね。まあ、それが一番いいかもしれないわね。2年がこっちに仕掛けてきたら1年がわざわざ3年に仕掛けてもこないだろうし、結果的に2年に仕掛けるだろうしね」
緊張感のない3年の作戦会議は5分で終わった。