これが土屋家の日常   作:らじさ

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第6話

数日後の代表会議、陽向は上機嫌で教壇に座っていた。

「準備はバッチリだね」

「教壇に・・・・・もういいわ」

「じゃこれを見て」陽向は黒板に紙を広げた。

「これが3年の階である3階の地図。基本的には全学年同じ配置ね。分かりやすくするために大きさは同じにしてある」

「あなた、いつの間にこんなの準備してたのよ」由香が呆れたように言った。

 

 

|              南 校 舎                   |

+――――――――――――――――――――――――――――――――――――――+

 

+――――――――――――――――――――――――――――――――――――――+

|≡≡+――――+――――+≡中+――――+――――+――――+≡ +――――|

|≡東|    |    |≡央|    |    |    |≡西|    |

|≡階| A   | B   |≡階| C   | D   | E   |≡階| F   |

|≡段|    |    |≡段|    |    |    |≡段|    |

+――+――――+――――+――+――――+――――+――――+――+――――+

 

 

「で、これを見る限り戦線布告したら3年の代表はDクラスに移動するはず。中央階段と西階段のどっちからも距離があるしね。加えてCクラスとEクラスに守備隊を配置できる。1方向からしか攻撃できないという理由でFクラスを選ぶということもあるけど、それは諸刃の剣で逆に言えば逃げられないことになるから、それを選択する可能性は低いね」

「そうすると俺たちは中央階段と西階段から突入するということになるな」Bクラスの代表が言った。

「結果的に言えばそうだけど、現時点で断言するのは止めようよ。もし3年が1年を舐めていたらAクラスから動かない可能性もあるから」

 

「守備はどうするんだ」竜崎が訪ねた。

「あたしはFクラスにいる」陽向が言った。

「お前さっきFクラスは逃げられないって言っていたろうが。俺たちの作戦じゃ攻撃チームが穴を開けるまで守備チームが時間を稼いで、そしてお前が出撃するってことだっただろう。どうやって脱出するんだ」

「簡単よ。守備チームは中央階段と西階段をD、E、Fクラスの全員で2年の階までみっちりと埋めてもらうわ。召喚獣同士の戦いなぞできないくらいに。よしんばできたとしてもせいぜい先頭の数人だけ。全員倒すにはかなりの時間がかかるはず。それに突撃隊と救援隊を配置するから先頭の数人がやられた段階で相手が国立なのか文系なのか理系なのかがわかる。そしたら突撃隊が先生を拉致して、救援隊がこっちに有利な先生を配置すればさらに時間が稼げるはずよ。その間に攻撃チームが穴を開けてくれたら、あたしは誰もいない廊下を走って3階まで駆け上って突撃かけるわ」

「東階段はどうするんだ」

「あたしがFクラスにいるのに、わざわざ一番遠い東階段から人を突撃させないでしょう。戦力は集中してくるはずだし、あたしたちを舐めていたら力技で押しつぶそうと考えるはずだもの。それに万が一東階段から来たら中央階段の人間が廊下を埋めればいいのよ」

「そんなもんかな」竜崎は腑に落ちない様子だった。

 

「みんなを安心させるためにハッキリ言っておくけど、この戦いはあたしたちが絶対的に有利なの」

「相手の対策立てたくらいでなんでそんなことが言えるのよ」由香が言った。

「相手の対策なんて枝葉末節だよ。本質的なことを言えば3年生はこの戦争に全く興味がないっていうことなの。3年生にとってこの時期の最優先は大学受験対策であって、試召戦争なんて迷惑以外のなにものでもないわけ。だから勝とうが負けようがどうでもいいと思っている人がほとんどだと思うの。多分、この戦争の対策だって考えていないし、攻撃だってAやBクラスが全員で押しかければ何とかなると思っているくらいじゃないかな。それでもチーム分けくらいはしてくるだろうけど。だから対策を考えているあたし達の方が絶対的に有利っていうわけ」

「なるほどそう言われればそうだな」

「受験前にして試召戦争のためだけに使わない科目を勉強するわけないしな」

一同の士気が一気に高まった。

 

「じゃ、一応チーム分けを確認するよ。国立対策のスペシャルチームは大丈夫?」

「ああ、全クラスから音楽と保体の点数がいい人間を集めた」

「OK、じゃチーム名は玄武。リーダーはBクラス代表の堀内君」

「私立文系対策の理数系チームは?」

「AからCクラスで理数が得意な人間を集めてある」

「よろしい。じゃチーム名は白虎。リーダーはCクラス代表の小山内さん」

「わかったわ」

「私立理系対策の人文チームは?」

「同じくだ。1名Eクラスで点数が高い奴がいたから入れといた」

「点数さえ高ければ構わないよ。チーム名は朱雀。リーダーはAクラス3席の三谷さん」

「はい、自信ないけど頑張ります」

 

「さて、突撃隊と救援隊と偵察隊は?」

「柔道部から3名、空手部から1名、ラグビー部から2名、相撲部から2人の計8人だ」

「じゃ、これを配るから先生の顔と教科をちゃんと頭に入れてね」

「土屋さん、それ何?」由香がいぶかしげに尋ねた。

「ん?学園のホームページに載っていた教員の顔写真とプロフィール。これ知らないとどの先生を排除すればいいかわからないでしょ」

「ホームページ閉鎖した方がいいと先生に報告した方がいいのかしら」

「救援隊は当日、理系の先生と文系の先生と保体・音楽の先生を必ず連れてきてね」

「どこに連れて行くのよ」

「戦闘になりそうなポイントにだよ」何を聞くのかと言わんばかりに陽向が答えた。

「一番大事な偵察隊。準備は大丈夫?」

「ああ、高性能双眼鏡4つに全部の部員を一人ずつ揃えたぜ」

「じゃ、あなたの携帯に電話して状況を常に確認するからお願いね。この作戦の成否はあなた達にかかっているんだから」

 

相変わらず教壇の上にあぐらをかきながら陽向は一同を見渡して言った。

「いい、3年戦はあくまでも前座。敵は2年にありだよ」

 

「「「「「おおぉぉぉ~~!」」」」」

 

一同はわけのわからぬ昂揚感に突き動かされて鬨の声を上げた。

 

 


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