これが土屋家の日常   作:らじさ

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第7話

翌日、二人の少女は3年Aクラスの教室前にいた。

「なんであなたは毎回わたしを巻き込みたがるのよ」由香はブツブツいいながら歩いていた。

「ニャハ、だって一人で宣戦布告に行くのは寂しいじゃない。それに交渉には由香リンが必要なんだよ」由香の不平を聞き流しながら陽向が言った。

「宣戦布告で何の交渉よ。男子生徒にでも行かせばよかったじゃない」

「それじゃだめなんだよ。3年総代とちょっと取引きしなきゃならないから」

「相変わらずあなたの言っていることは全くわからないわ」

 

3年Aクラスの前についた。

「じゃ、行くよ由香リン。宣戦布告と同時に戦闘状態も同然だからね」

「あたし帰っていいかしら」

「決意はできたみたいだね。さあ、行こうか」

「あなたは一度でもわたしの話を聞いたことがあるのかしら」

 

ドアを開けて教室に入っていった。中にいた生徒が一斉に二人の方を振り返る。

「どうも~、1年総代の土屋です。試召戦争の申し込みに来ました~」

「あなた、御用聞きじゃないんだからもっと威厳を持ちなさいよ」

「なんだぁ~お前らは」ソフトモヒカンのガラの悪い生徒が言った。

「ここはお前らみたいなガキがくるところじゃねえぞ」人相の悪い坊主頭の生徒も叫んだ。

「わぁ~、三年ともなると教室でペットが飼えるんですね」陽向が感心したように言った。

「「ぺッペット・・・・・誰がペットだこのガキ」」二人が同時に吠えた。

「言葉が喋れるなんて随分利口なんですね。・・・・・そうだこれ食べるかな?」陽向はポケットをガサゴソとあさると二人にビスケットを差し出した。

「そんなもん喰うか、俺たちはペットじゃねえんだ、3年Aクラスの生徒だ」

「え~、人間だったですかぁ。つまんないの」陽向は興味が失せたように二人に背中を向けて教室を見渡した。

「侮辱するだけ侮辱しておいて、あっさり無視してんじゃねぇよ」

「うるさいなぁ、えーっとこういう時は何て言うんだっけ。そうだ!ハウス!!」

「今度は犬扱いか」ギャアギャア喚く二人を陽向は完全に無視した。

 

「(先輩だいぶ怒ってるけど、大丈夫なの土屋さん)」

「大丈夫。モブキャラは主人公には勝てない定めなんだよ」

「あなたいつの間に主人公になったのよ。ところであなた3年総代の人の顔知ってるの?」

「知らないけど・・・あ、たぶん窓際に座っているあのポケっとした人だよ」

「(あんな間抜けそうな人が本当に総代なの)」

「うん、間違いない。鋭利なオーラと禍々しいオーラとパカパカしいオーラをまとっている」

「なにその間抜けなオーラは?」

「いや、そうとしか表現できないんだよね」

 

二人は窓際でボ~っとしていた男生徒に近寄って行った。

 

「3年総代の方ですよね」

「あなたよくこいつが総代だってわかったわね」隣りの席に座っていたスタイルのいい和風美人が代わりに答えた。

「はい、パカパカしいオーラが漂っていたので」

「それただのバカってことじゃないの?」

「どっちにしろ只者じゃないなと思いまして」

「まあ、確かにある意味只者じゃないけど、えーっと1年総代の土屋さんだっけ」

「はい、先輩は?」

「あたしはAクラスの小暮葵。この3年総代にしてバカの高城の幼馴染よ」

「小暮先輩、スタイルいいですね。ちょっと触っていいですか?」と言うなり陽向は葵に飛び掛かった。

「ちょっ、やだ。触らないで・・・・・」

「いやぁ、こりゃスゴイなあ・・・・・」

「なにいきなり上級生にセクハラかましてるのよ、あなたは」

「由香リンも触らせてもらうといいよ。凄いよ。胸が手に入りきらないんだよ」

「触りません。すいません小暮先輩。うちの総代ちょっとアホの子なもので」

「アホにはこいつで慣れているつもりだったけど、いろんなタイプがいるのね。ところで何しに来たのあなた達」

 

「はい、試召戦争しようと思って申し込みに来ました。受けてくれますよね、高城先輩」

「えっボク?」急に話を振られた高城は驚いたようにこっちを見た。

「あんた今までの大騒ぎ見てなかったの」葵が呆れたようにいった。

「いやぁ、ボクと関係ない話だと思っていたから」

「ふむ、大物だ」陽向が感心したように言った。

「こいつは自分のこと以外には感心ないだけよ」葵が訂正した。

「まあ、そういうわけで試召戦争申し込みます。開始時間は明日の10時でお願いします」

「うーん、面倒くさいなあ」

「いや、先輩。学園の規則では試召戦争を申し込まれたら拒否できないんですよね」由香が言った。

「そうなんだけどさ。面倒くさいものは面倒くさい」高城が駄々をこねた。

「小暮先輩、この人なんとかなりませんか?」由香が業を煮やして言った。

「こうなると子供だからね、こいつは」葵は諦めた声で言った。

 

「わかりました。高城先輩。あたしと賭けをしましょう」

「賭け?」高城が興味を引かれたように陽向の方を見た。

「はい、3年が勝ったら高城先輩の言うことを1つだけなんでも聞きます。1年が勝ったらあたしの言うことを何でも聞いて下さい」

「うーん、特にやってもらいたいことなんてないんだけどなぁ」

「ここにいる由香リンにメイド姿でご奉仕させます」

「・・・・・(ガタン)」

「それも丸1日・・・・・」

「・・・・・(ピクッ)」

「隅から隅までずずいっと」

「・・・・・ウ・・・はど・・・な?」

「はっ?」

「ウサ耳はどうかな?」

「シッポもつけます」

「しょうがない可愛い後輩の申し出だ。試召戦争を受けよう」高城は陽向の手をガッシリと握った。

 

「あんたは一体何を約束してんのよ」と由香が陽向をはり倒した。

「あんたは一体何を考えているのよ」と葵が高城を蹴り飛ばした。

 

「・・・・・たっ高城先輩。あたしここに転校してきてから校内暴力ばかり受けているんですけど」

「・・・・・ふっ甘いな土屋君。ボクは小暮君と出会って以来ずっと虐げられているよ」

二人の代表は床に倒れながら固く手を握りあい、何かを共有したようであった。

 


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