これが土屋家の日常   作:らじさ

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えー、この辺から試召戦争に突入しますので、ギャグ成分少なめになります。
かといってシリアスかというとそうでもないという訳のわからないものに
なっております。どうぞお好きな方だけお読み頂ければと思います。


第9話

翌日、朝9時。陽向はFクラスの教壇の上に胡坐をかいていた。

「あなたは人のクラスでもお構いなしね」由香がもはや義務のようにツッコんだ。

「いやぁ、こっちの方が気分がでるもんで」

「それにしてもFクラスってのは汚い教室ね。机もないわ」

「そう?あたしはこっちの方が落ち着くなあ」

「次の振り分け試験を全部白紙で出したら自動的にこのクラスに入れるわよ」

「随分大きな内緒話で人の教室けなしてくれるじゃねぇか」竜崎が憮然として言った。

「あ、マコちん。ちょうどよかった。作戦ちょっと変えたから聞いてくれる」

「マコちんじゃねぇと何度言えば・・・・・」

「何十回言っても理解できないわよ、この人は」由香がため息をつきながら言った。

「あのね、この図を見て」と言って見取り図を取り出した。

 

|              南 校 舎                   |

+――――――――――――――――――――――――――――――――――――――+

 

+――――――――――――――――――――――――――――――――――――――+

|≡≡+――――+――――+≡中+――――+――――+――――+≡ +――――|

|≡東|    |    |≡央|    |    |    |≡西|    |

|≡階| A   | B   |≡階| C   | D   | E   |≡階|  F  |

|≡段|    |    |≡段|    |    |    |≡段|    |

+――+――――+――――+――+――――+――――+――――+――+――――+

 

「中央階段と西階段をD、E、Fクラスで埋めるってことだったけど、人数の割り振りはどうなっているの」

「3クラス90人を45人ずつに分けて中央階段と西階段に埋める」

「うん、じゃそこから10人ずつ割いて東階段も埋めて。ただし人数が少ないと見破られないように先頭からギッシリ埋めてね」

「それはいいが・・・・・」

「それから列の配置だけどFクラスを先頭にして、Eクラス、Dクラスにして欲しいの」

「意味があるのか?」

「うん、Fクラスは簡単にやられるかもしれないけど、次のEクラス。それがダメならDクラスで仕留められる。階段の幅が狭いからそんなに一度には戦えないでしょ。そうやって少しでも敵を減らして欲しいの」

「だが、Dクラスまでやられたらお前のとこまで一直線だぞ」

「その前に攻撃隊が敵の守備に穴を開けてくれているよ。とにかく守備隊は逃げ回ってもいいから時間を稼いで欲しいの」

 

「わかった。他に何かあるか?」

「あと守備隊の前線は2年の階までにして。それ以上、上にはいかないこと」

「何でだ」

「あたしが突入して3年の廊下を突っ切る時に、階段から敵の攻撃隊が溢れていたら邪魔されるから」

「なるほど」

「それとマコちんは、守備には参加しないで、東階段、中央階段、西階段の3か所の指揮を執って。まあ、東階段からはほとんどこないと思うけど、一応念のためにね」

「よし、とりあえずお前が突入するまでの時間を稼げばいいんだな」

「そう。じゃ、マコちんのチームの名前は青龍ね」

「それは別にどうでもいい」

 

9時40分になった。陽向は携帯を取り出して、どこかへ電話した。

「こちらアルファ1、アルファ1.ベータ2どうぞ。オーバー」

「こちらベータ2、コンディショングリーンです。オーバー」

「様子はどう?オーバー」

「敵の様子がよく見えます。そろそろチーム毎に集まっているようです。オーバー」

「それ普通に喋った方が早いんじゃないの?」

「由香リン。こういうのは気分が大事なんだよ」陽向が諭すように言った。

「なぜかしら。あなたにそういう言われ方をすると腹が立つわ」

 

「今、メンバ―の確認が終わりました。お館様が言った通りに進路別にチーム分けしているみたいです。オーバー」

「ベータ―2、どういう配置なの、オーバー」

「西階段側の教室に理系メンバーが入りました。C教室には文系メンバー。AクラスのメンバーはD教室です。オーバー」

「国立系は?オーバー」

「A教室です。オーバー」

「ベーター2、報告ご苦労。引き続き監視を頼む。オーバー」

 

「さてみんな。敵はほぼこちらの予想どおりの動きを見せたわ。西側通路からは私立理系チーム、中央通路からは私立文系、東階段からは国立系が攻撃してくるわ」

「東階段からはこないはずじゃあなかったのか」

「まだ、あたしの位置を向こうに教えてないからね。一応、どこからでも攻撃できるようにしているんでしょう。あたしの位置が正反対で他のところが苦戦してるとなったら、そっちに移動するはずよ。それに敵の総代がDクラスに入ることは分かったわ。そして護衛隊としてAクラスが総代の回りを固めるはず」

「じゃ、どうする」

「作戦通りよ。東階段には玄武チーム、中央階段には白虎チーム、西階段には朱雀チームはこれから2年の階に行って廊下で雑談しているフリをして。どうせ3年が1年の顔なんて覚えてなんていないからわかりゃしないわ。守備隊の戦闘が始まったら、そのまま2年の階から3年の階に駆け上って。敵の守備隊はきっと階段のところで待機しているはずだから。突撃隊はすぐに相手の先生を拉致。救援隊はそれぞれの先生をフィールドに連れて行く。そうしたらすぐに戦闘開始よ」

 

陽向はもう一度電話をかけた。

「こちらアルファ1、ブラボー2応答せよ。オーバー」

「こちらブラボー2、どうした?オーバー」

「敵の大体の人数わかる?オーバー」

「ああ、なんだか妙にスカスカなんだよな。教室にも結構な人数が残っているようだし。オーバー」

「ありがとう。通信終了」

 

「思ったとおりよ。敵の大半はこの試召戦争やる気ないわ。戦力の差が勝敗の決定的な差ではないことを見せてやるのよ」

「いや、それセリフがぜんぜん違うわ」律儀にツッコむ由香であった。

 

その時、陽向の携帯の呼び出し音がなった。

「もしもし・・・・・」

「高城先輩ですか」

「そうだ。試召戦争開始の時間だ。ボクは3年Dクラスにいる」

「あたしは1年Fクラスです」

「うむ、では健闘を祈る・・・・・・・・・・・・・・・・ところでこれはどうでもいいことなんだが賭けのことを・・・グワッ」電話の向こうでスゴイ音がした。

「・・・・・?」

「あ、もしもし土屋さん。小暮ですけど、じゃこれから開始よ」

「はっはい、あの~なんかスゴい音がしましたけど高城先輩は?」

「一足先にいい夢見てるわ、じゃお互い頑張りましょうね」そういって電話が切れた。

 

陽向は一同を見渡して叫んだ。

「さあ、みんな。祭りの始まりだよ」

 


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