これが土屋家の日常   作:らじさ

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第11話

「こちらアルファ1、ベータ2どうぞ。オーバー」陽向は偵察隊に電話をかけた。

「ねぇ、お願いだから普通に喋って頂だい」由香の懇願はもちろん無視された。

「3年の階はどうなっているかな、オーバー」

「Aクラスの前に国立系、Cクラスの前に私文、Eクラスの前に私理。あとAクラスメンバーがDクラスにつめてるな、オーバー」

「廊下に出ているのはどれくらい?オーバー」

「各グループ10人程度だ。Aクラスの人数はわからない。オーバー」

「了解。引き続き偵察を続けて、オーバー」

「よし、今の状況はこんな感じ」陽向が図に字を書き加えた。

 

|              南 校 舎                   |

+――――――――――――――――――――――――――――――――――――――+

 

+――――――――――――――――――――――――――――――――――――――+

|   国            私文          私理        |

|≡≡+――――+――――+≡中+――――+――――+――――+≡ +――――|

|≡東|    |    |≡央|    |    |    |≡西|    |

|≡階| A   | B   |≡階| C   | D 総 | E   |≡階| F  |

|≡段|    |    |≡段|    |    |    |≡段|    |

+――+――――+――――+――+――――+――――+――――+――+――――+

 

「現在の状況はこんな感じだね」そこへ竜崎が飛び込んできた。

「おい、土屋。東階段の国立部隊が2年の廊下を通って中央階段と西階段に移動したらしいぞ」

「計算通りだね。玄武チームと朱雀チームには、逃げ回りながらとにかく時間を稼ぐように伝えて」

「計算どおりなの・・・・・?」不審げに由香が言った。

「そう。全く受験に使わない科目なんて苦手だろうからね。それに見た目に階段を埋め尽くしているように見せかけているから突破するのは無理だと思ったんだろうね。それに西階段や中央階段でそれぞれのチームが受験科目と逆の科目で勝負させられて苦戦していると伝令が飛んだから、全科目勉強している国立系に応援要請が行ったんだよ。これで3階までストレートに道が開けたよ」

「でも道が開いたのは3階までだろう。総代がいるDクラスまでどうするんだよ」竜崎が言った。

 

「今、白虎チームが丸々手すきだよね。それとマコちん、玄武と朱雀から後ろ側にいる5人ほどを白虎チームに合流させて」

「少しは説明しろ」

「簡単だよ。次の居場所報告の電話が終わると同時にあたしと由香リンが3年Dクラスまで突撃をかけるの。っていっても途中に守備隊がいるから白虎チームでそれを足止めしてもらいたい1年と3年がもみ合っている間を抜けてDクラスまで突撃だい!」

「だい!じゃないわよ。何でわたしまで」

「由香リン、夫婦は一心同体だよ」

「なんで勝手にモードアップしてるのよ。それにDクラスには3年Aクラスの生徒が沢山いるんでしょ」

「大丈夫。何人かかってきても総代だけを攻撃すれば絶対倒せるよ」

「そうなの?」

 

「でもまあ、由香リンがどうしてもメイド服でご奉仕したいというのなら、手を抜いて負けてもい・・・・・オゴワ」由香の回し蹴りが陽向の側頭部に炸裂した。

「あっ愛を感じないよ、由香リン・・・・・」

「そんなもの1マイクログラムも持った覚えはないわよ」

「ウサ耳が嫌なら外してくれるようにお願いしてあげてるか・・・・・ドゥワ」

「どうやったら動きが止まるのかしら、これ」由香が日向をグリグリと足で踏付けた。

「そんなことしたらショーツが見えるよ、由香リン」

「あなたがこの学園にいる限り、わたしはスパッツを愛用することにしたの」

「動きやすいもんね」

「ある意味そうね。いつでもあなたに蹴り入れられるから」

「あたし蹴られること前提で由香リンと付き合っていかないといけないの?」

「だったら発言と行動を少し改めなさい」由香は更にグリグリと陽向を踏付けた。陽向の口からカエルの鳴き声のような声が漏れ出た。

 

「おい、お前ら遊んでいる場合じゃないだろ」

「あたしは別に好きで踏みつけられているわけじゃないよ。とにかくマコちんは、チームの再編成をして、そして半分が三年の廊下の手前にいる国立チームの相手を、残りの半分はその横をすり抜けて奥の私文チームに試合をいどんでね。壁を作ってくれれば、あたしはそこを突破するから」

「どうも時々、いえ頻繁にあなたの言うことが理解できないわ」

 

その時、陽向の携帯が鳴った。

「もしもし、高城先輩ですか」

「おや、まだ生き残っていたのかい土屋君」

「先輩は死にかけましたよね」

「舐めてもらっちゃ困るなぁ。小暮君と知り合って以来あれ位は、おはようのキス程度のもんだ・・・・・オゴゥ」またもや電話の向うでスゴい音がした。

「一体何言ってんのよあんたは。・・・・・もしもし土屋さん。うちの馬、いや総代は3年Dクラスにいるわ」

「念のため伺いますけど、生きているんですか?」

「大丈夫、丈夫さだけで生き残ってきた奴だから」

「あたしも同じく1年Fクラスにいます」

「そう、じゃお互い頑張りましょうね」電話が切れた。

 


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