これが土屋家の日常   作:らじさ

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予想はしていましたが思った以上にギャグ成分少な目になってしまいました。
大変申し訳ありません。


第14話

2日後、2年生戦に向けての代表会議が再び開かれた。陽向はいつものように教壇の上であぐらをかいて各クラス代表を見渡した。3年生戦に勝利した喜びから一同は浮き立っているように見えた

 

「さあ、みんな。3年生戦の勝利はもう忘れよう。「勝って兜の緒を締めよ」と言うしね。ちなみに「緒」って「尾(しっぽ)」のことじゃないからね」

「なんで、そう余計な一言を付け加えるのかしら?そんなバカな勘違いするのは、あなたとFクラスの生徒くらいです」由香が冷静にツッコんだ。

「俺たちとそこのアホとを一緒にするな」竜崎が抗議の声をあげた。

「ちなみに関西の方じゃアホよりもバカの方が失礼なんだよ」陽向が言った。

「そんなトリビアいりません。どっちでも好きな方を名札にして付けてて下さい」もはや慣れたとばかりに由香は動じなかった。

「まあ、ツカミはこれぐらいにして会議を始めようか」

「何で会議するのに、いちいちツカミが必要なのよ。素直に始めればいいじゃない」

「そう言えばお館様、2年生の進路調査はしてないけどいいのかな」Bクラスの代表が言った。

「ああ、それはいいの。3年生と違って2年生は進路分けしていないから、選択と反対の教科を当てる作戦はとれないわ」

「じゃ、どうするんだよ」Fクラス代表の竜崎が言った。

「2年戦は守備も攻撃も力押しになると思うの。ただし、基本点が低い分だけこっちが不利になるから短期決戦で決める必要があるわ」

「つまり、どうするの?」Cクラス代表が言った。

 

「これを見て」陽向は見取り図を取り出した。

+――――――――――――――――――――――――――――――――――――――+

|≡≡+――――+――――+≡中+――――+――――+――――+≡ +――――|

|≡東|    |    |≡央|    |    |    |≡西|    |

|≡階| A   | B   |≡階| C   | D   | E   |≡階|  F  |

|≡段|    |    |≡段|    |    |    |≡段|    |

+――+――――+――――+――+――――+――――+――――+――+――――+

 

「由香リンだったら敵はどこを本陣にすると思う?」

「えっ?それは3年生と同じDクラスじゃないかしら。自由自在に動けるし」

「ブーっ、ハズレ。じゃ、あたし達はどこを本陣にすべきだと思う?」

「それも前回と同じFクラスでいいんじゃないかしら。一方向だけ防御すればいいんだし」

「残念、それもハズレ」

「もったいつけていないでさっさといいなさいよ」由香が少しムッとしたように言った。

「あたしたちの弱点は一つ、ううん二つあるの。一つはさっき言った基本点が少ないということ。そしてもう一つはそのせいで短期決戦で勝負を決めなければいけないということ。それはつまり、こっちから敵の本陣に乗り込んで行って総代を倒す必要があるということなの」

「それは3年戦でも同じでしょ」

「うん、そのために突撃隊や救援隊や偵察隊を作って、こちらが有利な戦いができるようにしかけたんだけど2年生にはその手は通用しないの。更にまずいことには、3年戦の作戦が分析されて、こっちが短期決戦でしか勝てないという手のうちが知られているわけ」

「じゃあ、勝てないってことじゃねぇか」竜崎が不機嫌そうに言った。

「そこを補うのが作戦よ。今回の試召戦争では2年生は9割方本陣をFクラスに置いてくるはずよ」

「なんでそう言い切れるのよ」由香が不思議そうに言った。

「由香リン、あたしの話を聞いてなかったの?あたし達が短期決戦を望むのなら、長期決戦に持ち込むのが常道でしょ。それなら防御のし易い、一方向からしか敵のこないFクラスに本陣を置くだろうと考えるのが普通よ」

「じゃあ、わたし達もFクラスに本陣を置くのね」

「それじゃあ敵の思うツボだよ。長期戦に持ち込まれてこっちがジリ貧になるだけ。だからあたし達は本陣をDクラスにおくわ」

「それじゃあ、あたし達だけ攻撃に晒されるじゃない」

「リスクはある程度覚悟の上だよ、由香リン。この場合、敵の攻撃隊をこの階までおびき出す必要があるの。そうしないと2年の階に敵がうじゃうじゃいるってことになるからね。そのための力押しだよ」

「ちょっと待って。そうするとこっちの攻撃隊とむこうの攻撃隊が階段で鉢合わせになって、そこで戦闘になるんじゃないかしら?」

「さすが由香リン、いいところに気がついたね。それを避けるためにうちの攻撃隊は別の場所から出動させるの」

「別の場所?」

「そう、3年生との戦争の時に由香リンが身体を張って勝ち取ってくれた賭けだよ」

「あれはあなたが勝手に賭けたんでしょうが。それが何の関係があるのよ」

「賭けの権利を使って2年生との試召戦争が始まる前に3年DクラスとEクラスは空けてもらう。どっか講堂ででも授業してもらえばいいかな。その空いたクラスにうちの攻撃隊を待機させて、2年生の攻撃隊がこの階に降りてきたのを確認してから2年生の階に攻撃をかけてもらうの。そして攻撃チームの半分は敵の攻撃チームを後ろから挟撃するの」

「なるほど、それなら攻撃はできるわね。でも2年生がFクラスに本陣を置くなら西階段前からFクラス入口あたりまで戦場になって、それこそ蟻の這い出る隙間もないくらいに人であふれるはずよ。一体、どうやって総代を倒すつもり?」

「秘密兵器を使うの」

「またそれ?いくらあなたでもあの距離は飛び越せないでしょう。ヘタしたらFクラスの廊下の突き当たりまで人で埋まっているはずよ」

「3年生戦の時は、突撃隊、救援隊、偵察隊が秘密兵器だったけど、今度はその手は使えない」

「だから今度は何かって聞いているのよ」

「今度はAクラスの精鋭10人の特攻隊で攻撃するの」陽向はそう言ってニカッと笑った。

 


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