これが土屋家の日常   作:らじさ

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第15話

Aクラスに主だったメンバーが集められて作戦会議が開かれていた。

 

「ねぇ、雄二。たぶんもうすぐ1年生が試召戦争を仕掛けてくると思うんだけど、どうするのさ。3年生も負けたんだよ」明久が行った。

「ああ、ムッツリーニの妹・・・陽向とかいったか、あれが3年の高城を瞬殺したらしい」

「そんなのに勝てるの坂本」美波も不安そうに聞く。

「まあ、1対1なら正直言ってこの学校に勝てる奴はいないだろうな。何しろ敵はガンガムだ」吐き捨てるように雄二が言った。どうやら全校生徒の前で虫のように踏みつぶされたのを根に持っているらしい。なんて心の狭い奴なんだろう。

「まあ要するに今回の戦争の本質は陽向対2年生ということだ。あいつが翔子の前に立つまでにどれだけ点数を削れるかが勝負なんだが・・・・・」

「どうしたのじゃ雄二。何か気になることでもあるのかのぅ」

「3年生との戦いを見ていると、あいつは1年生全員を使って3年を釘づけにしておいてから、がら空きになった廊下を一気に3年のところまで駆け抜けたそうだ。点数を削るもヘッタくれもない」

「・・・・・それは短期決戦でしか勝ち目がないということ」

「おう、よく分かっているじゃねぇか翔子。基本点はどうしても上級生が上になる。だから対決≪デュエル≫になっても逃げ回り、点数が危なくなると教師を強引に取り換えて、また新しい対決≪デュエル≫で勝負して時間を稼いでいる。逆に言えばそれだけ長期戦はしたくないということだ」

「で、結局どうすんのさ?」

「これを見ろ」雄二が見取り図を取り出した。

 

+――――――――――――――――――――――――――――――――――――――+

|   国            私文          私理        |

|≡≡+――――+――――+≡中+――――+――――+――――+≡ +――――|

|≡東|    |    |≡央|    |    |    |≡西|    |

|≡階| A   | B  |≡階| C   | D 総| E   |≡階| F  |

|≡段|    |    |≡段|    |    |    |≡段|    |

+――+――――+――――+――+――――+――――+――――+――+――――+

 

「3年戦の時には、あいつらはFクラスに立てこもった。逃げられない不利がある代わり一方向からしか攻撃できず籠城には有利という風に見せかけるためだ。短期決戦にかけているということを知られたくなかったんだろう。だが、今度は俺たちがそのことを知っているということはすでに分かっているはずだ。同じ手は使わない」

「結局、どうするのじゃ」秀吉が訪ねた。

「まず、俺たちはFクラスに本陣を置く。そしてクラスには護衛としてAクラスの生徒10人を配備する」

 

「何でFクラスなのさ。さっき雄二が言っていたけど逃げられない不利があるじゃないか。それにあの陽向ちゃん相手に護衛が10人って少なすぎない?」

「1年が短期決戦を望んでもそれに付き合う義理はねぇ。逆にこっちは長期戦に持ち込めばほぼ勝てる。それにFクラスはドン詰まりだ。階段前から入り口まで生徒を配置しておけば、いくら陽向でもやってこれない。あいつらの欠点は、結局陽向が翔子を倒さなければならないということだ。それに狭いFクラスにたくさん詰め込んでも混乱するだけだ。Aクラスの精鋭で翔子を守る」

「・・・・・雄二、それはプロポーズ?」

「あと、攻撃隊だが2手にわけて西階段と中央階段から突破させる。やつらは今度はFクラスには籠城しない。陽向が攻撃に出てこれないからな。恐らくDクラスに本陣を置くだろう、そして隙を見て陽向が突っ込んでくるはずだ。守備隊の1年は逃げ回るだろうが、召喚獣の扱いはこっちが上だ。少しずつ削っていけ」

「・・・・・明日、さっそく両親に挨拶に行こう」

「こっちの守備隊は西階段前からFクラスの廊下一杯に配置する。陽向にすり抜けられないようにな」

「・・・・・式場が3年分押さえてある。いつでも式は挙げられる」

「だあぁぁ。せっかく無視してやってるんだから、いい加減にその話題から離れろ」

「・・・・・でも守ってくれるって言った」

「試召戦争の話だ、バカ者」

 

「ちょっと待ってくれないか」それまで黙って聞いていた久保君が発言した。

「ん?何だ久保。なんか作戦に不備でもあったか?」雄二が不思議そうに聞いた。

「いや、霧島さんを守るプランはそれで完璧だと思う。だが、僕たち2年生にはもう一つ守らなければならないものがあるんじゃないか?」

「試召戦争で守らなければならないもの・・・・・悪いが思いつかんのだが」

「この学園で唯一の「観察処分者」である吉井君だよ」久保君のメガネがキラリと光った。

「・・・・・いや、別にそんなもの守る必要は」」

「なにをいうんだ。学園唯一の存在が2年生であるというのにそれが倒されたら、試合に勝っても勝負に負けたのと同じことだよ」久保君が力説する。僕の身をそんなに心配してくれるなんて久保君はやっぱりいい人だなあ。どこぞの代表に足の爪の垢をKg単位で飲ませてやりたいくらいだ。

 

その時、いきなりドアがガラっと開いて一人の女生徒が飛び込んできた。

「私も賛成です。アキちゃ-吉井君は2年の宝です。私と久保さんで、Dクラスでアキちゃ-吉井君を守ります」玉野さんだった。いろいろと神出鬼没だがこんなところまで、何か引っかかるものはあるが、僕の身を案じていることには変わらない。ありがたく受け止めよう。

「なによ、それじゃウチもアキの護衛に回るわ」うん、実戦だったら美波は学園トップクラスだけど試召戦争では力になるんだろうか?いざとなったら盾として使えるかも知れない。

「それなら私も明久君を護ります」姫路さんまでありがたい申し出をしてくれ。

 

「ちょっと待てお前ら。肝心の総代の護衛が一人も決まってないのに、何でどうでもいい明久の護衛がいきなり4人も決まっているんだ」

「大丈夫だよ、坂本君。代表の護りは、ボク以下のAクラスのみんな10人でやるから」

「そうか工藤。それじゃ人選は任せる」

「・・・・・雄二、ちょっと話がある」ムッツリーニが教室の隅に雄二を連れて行った。

 

「・・・・・は陽向は・・・・・・」

「それ本当か・・・・・・」

「・・・・・ああ、恐らく今も変わってないはずだ・・・・・」

「よし、これで勝ちのめどがついた。お前ら安心していいぞ」雄二がみんなに言った。

 

何のことかよくわからなかったが、雄二が安心していいと言ったからには、僕たちはこの試召戦争に負けることが確実になったということなんだろう。

 

 


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