これが土屋家の日常   作:らじさ

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最終話

辺りは「シーン」という音がしそうなくらいに静かだった。これなら未来日記の最後の行動も実行できる。ボクは少しずつ康太に寄っていった。もう少しで肩が触れそうになった時・・・・・

「二人とも早く。ここだよ、愛ちゃんが言っていた場所は」

「階段を3段跳びで駆け上れるのはお前位だ」

「私たちは忍者じゃないんだから、少しは考えなさいよね」と陽向ちゃんたちの声が聞こえた。

「あれっ?愛ちゃん」ボクたちは瞬間的に2mほど飛びのいた。

「愛ちゃん達も来てたんだぁ。大丈夫だよ、邪魔にならないようにあっちの方にいるから」そういうと3人は離れたところで夜景を眺めだした。

 

「じゃ、マコちんそろそろ始めようか」陽向が言った。

「今度は何を始めるつもりだ」誠が言った。

「クリスマスデートと言ったらプレゼントでしょう。さあ、出して」

「初耳だが・・・・・どこからそんなこと聞いてきた」

「愛ちゃんが言ってたんだよ。カップル同士でプレゼントの交換をするんだって」

「お前は、まずカップルの意味から覚えろ。というよりその愛ちゃんのせいで俺は今日だけで今月の小遣いが吹っ飛んだんだが」

「デートは男性が出すのが決まりなんだよ」

「おかげでゲーム代、食事代から映画代まで3人分全部俺が出したんだが、その上プレゼントだと」誠が怒鳴った。

「あたしはティファニーのリングが欲しいんだ」陽向が言った。

「ねえ、念のために聞くけどティファニーのリングって何だか知ってるわよね、陽向」

「クリスマスデートするんならこういうものもらいなさいってクラスの子が教えてくれた。別に指輪なんて欲しくないけど決まりだったらしかたないよね」

「しょうがないで人にどんだけ金使わせるつもりだ、お前は。だいたいそういうお前はちゃんと準備してきたんだろうな」

「当たり前だよ。昨日一生懸命作ったんだよ、ほら」と陽向が言ってバッグから紙を取り出した。

「何だこれは?」誠が紙を受け取りながら言った。

「肩たたき券20枚。1枚で15分肩叩いてあげるの」

「孫がおじいちゃんにプレゼントするんじゃないんだ。こんなもんでティファニーのリングを手に入れようなんて、エビで鯛どころかミジンコで鯨釣ろうとするようなもんだ」誠がゲンコを陽向の頭に叩きこんだ。

 

「あの3人賑やかだね」少女が言った。

「また、陽向が何かやったんだろう」少年が言った。

 

「由美ちゃん、足元に気をつけて」

「大丈夫」

「あれ、陽太君たちも来たの?」少女が言った。

「あっ、愛ちゃんたちも来てたんだ」陽太は繋いでいた手を慌てて離した。

「陽太君優しいなあ。階段が危ないから手を繋いであげてたんだ」

「いっいやそういうわけじゃ・・・・・」陽太と由美子が真っ赤になって言った。

「ふふふ、ここは愛ちゃんのおかげで二人で初めて来た場所だから、今日のデートの終わりにはここからの夜景が見たかったの」

「あっ、そうなんだ。今日も夜景が綺麗だよ」

陽太と由美子が少し離れた場所に向かった。

 

「何か急に賑やかになっちゃったね」少女が言った。

「・・・・・というか、今日のこの流れからすると」

 

「ソータ、早く来てくだサイ」

「何でこんなとこ来なきゃならんのだ。デートは終わったんだからさっさと帰ろう。寒くてかなわん」

「この丘でプロポーズされると幸せになれるとアイコが言ってまシタ」

「愛ちゃんが言ったのなら限りなく信憑性が薄いという以前に、誰が誰にプロポーズするんだ?」

「もちろんソータがワタシにデス」

「なんで俺がお前にプロポーズせにゃならんのだ」

「夫が妻にプロポーズするのは当たり前デス」

「というか妻にプロポーズする夫はおらん。プロポーズしたから妻になっているんだろうが」

「ソータ・・・・・」

「何だ」

「ワタシ今、ユーコから関節ワザを習ってマス・・・・・」

「さあ、早く行こう。アンナ・マリア・カリーニン君。公園はこの上だな」

「ソータ、急に走らないでくだサイ」

 

「・・・・・やっぱり来たか」

「結局、全員集合だね」

「何だ。全員いるじゃないか」颯太が言った。

「兄貴も来たのか」

 

さっきまで静かだった公園が急に賑やかになった。

 

「よし、じゃさっさとお参りして帰ろう」颯太が言った。

「いや、神社じゃないんだから」陽太がツッコんだ。

 

ボクたちはお互いの邪魔にならないように5mくらい間隔を空けて夜景を眺めていた。みんな黙っていたので、また静かな静寂が戻ってきた。やがて空から白いものがチラチラと落ちてきた。

 

「・・・・・寒いと思ったら雪だ」

「ホワイトクリスマスだね。クリスマスデートの終わりには最高だね」

 

「I'm dreaming of a white Christmas. Just like the ones I used to know」

聖歌隊にいたというアンナちゃんの小さな歌声が聞こえてきた。

「・・・・・white Christmasだな」

「Where the treetops glisten and children listen・・・・・」ああ見えてもバンドのボーカルの颯太君が唱和した。そしてボクたちもみんな小さく唱和し始めた。

「To hear sleigh bells in the snow.

I'm dreaming of a white Christmas With every Christmas card I write May your days be merry and bright And may all your Christmases be white」

 

ボクは歌いながら周りを見渡してみた。颯太君がいる。アンナちゃんがいる。陽太君がいる。由美ちゃんがいる。陽向ちゃんがいる。誠君がいる。由香子ちゃんがいる。

 

そして何より康太がボクの傍にいる。こういうのを幸せというのだろう。

 

未来のことはわからない。それどころか明日のことだって確かじゃない。このメンバーがいつまで一緒にいられるだろう?

でもそれを考えてもしょうがない。それより今一緒にいられる幸せに感謝しよう。

そしていつまでも一緒にいられるようにお願いしよう。

 

 

「・・・・・誰の番だ?」Atsushiが言った。

「Guuじゃねえか」Gonが言った。

「何で2日も徹夜で桃鉄なんかやらなきゃならんのだ」Guuが言った。

「・・・・・・・・・頼む、寝かせてくれ」Youが言った。

 

 

その夜、少女は机に向かって未来日記を開いていた。

「だいたい計画どおりだったんだけど・・・・・」少女の目は最後の一行に釘付けになっていた。

「・・・・・やっぱり無理だったなぁ・・・・・キャァ」と言って顔を真っ赤にしてベッドに飛び込んだ。

最後の行にはこう書かれていた。

 

 

   「デートの最後に思い出の丘で夜景を見ながら康太とキ・・・・・」

 

 

 




やっとクリスマス編が終わりました。
クリスマスの話を2月までかかったというのは反省点です。

最近、自分が書いている話が面白いのか面白くないのかわからなくなっています。
他の作者さんもこういうことってあるんでしょうか?
ギャグを入れても「これ面白いのかなあ」と疑問に思いながら書いてます。

面白くないと思った方にはお詫びいたします。

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