これが土屋家の日常   作:らじさ

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実はこのネタ当初の予定では、8話程度で終わりそうだなと予想していたんですが、
気がつけば10話で、花嫁修業5種目のうち2種目しか終わってません。

しかもメインイベントの料理がまだ終わってないという・・・・・

はい、わかってます。いつものように余計は話が多いんですね。


第10話

「ああ、疲れた」颯太が家のドアを開けた。

「あっ、颯兄。お帰り」陽向がリビングから出てきて言った。

「おお、陽向か・・・・・ちょっと待て。お前何を被ってる?」

「えっ?別に何も被ってないよ」陽向が言った。

「背中に担いでいる毛皮はなんだ?」

「え、ああ。これ」陽向が説明しようとしたところ犬が陽向の肩から顔を出して叫んだ。

「ワンワン!!」

「わっ、いっ犬じゃないか」颯太が腰砕けになって言った。

「あ、そうか颯兄は犬が苦手だったもんね」

「そういうことはどうでもいい。何でそんなバカでかい犬が家にいるんだ。どこかから拾ってきたのか?」

「違うよ。由美ちゃんとこの犬でケルベロスっていうんだけど、あたしの舎弟になりたいっていうんで舎弟にしたんだよ」

「お前が友達少ないのは知っているから交友関係にまで口を出すつもりはないが、友達はせいぜい霊長類までにしておけ」

「何気にすごくバカにしてるよね。ゴリラやチンパンジーだったら友達にしてもいいみたいだね」

「で、何で由美ちゃんとこの犬が家にいるんだ」

「いや、それがこの子妙にあたしに懐いちゃってさ。」

「犬なりに何か相通じるものを感じたんだろうな」

「家にお泊りしたいってダダこねちゃって。由美ちゃんの許可もらって家に泊めることにしたの」

「由美ちゃんの許可を取る前に、まず家族の許可を取らんか、バカ者」颯太が怒鳴った。

 

「まあ、まあ。颯兄が犬嫌いなのはわかっているけど、この子は頭いいから可愛いんだよ。ほら、ケン。颯兄に挨拶しな」

「フフン」

「おい、今この犬。俺のことを鼻で笑いやがったぞ」

「え、そんなことないよ。お母さんを見たとたんいきなりお腹見せて擦り寄っていくぐらい礼儀正しいんだよ」

「それは家のボスを瞬間的に見抜いただけじゃないのか?」

「ちゃんと芸もできるんだよ、ほらケン降りな」陽向はそういうと犬を背中から降ろした。犬は礼儀正しく腰を下ろしてちょこんと座った。

「行くよ、ケン。お手」陽向が言った。

「ワン!」犬は右前足を陽向が差し出した手のひらの上にチョコンと乗せた。

「ケン、次はおまわり」

「ワン!」犬はその場で大きな体をクルクルと回しだした。

「どう?」陽向が得意げに言った。

「まあ、一般的な犬の芸だが・・・・・」

「とっておきの芸があるんだよ。ケン、おちんちん」

陽向がそう号令をかけると犬は右前足で股間を隠した。

「ふふふ、どうかな颯兄。こんな芸ができる犬はそうはいな・・・・・イタッ」

「よそ様の家の犬になんちゅう下品な芸を仕込んでるんだ、お前は」颯太はそういうと陽向の頭にゲンコを入れた。

「まったく、芸が理解できない人間とは話ができないよ。いくよ、ケン」

「ワン」ケルベロスは後ろ足で器用に立ち上がると、背中を向けた陽向の両肩に前足をおき、後ろ足でトコトコと陽向の動きに合わせて歩いていった。

「姉弟と言われても納得するくらい似たもの同士だなあれは」颯太が呆れたように言った。

 

「ふう~」風呂から上がった颯太は部屋のドアを開けた。

「・・・・・・・・・・陽向。おい陽向」大声で陽向を呼ぶ。

「なんなのさ颯兄、夜中に大声を出さないでよ。ご近所迷惑だよ」

「なんなのさじゃねぇ、あれは一体何だ」颯太はそういうとベッドを指差した。

ベッドの上ではケルベロスが気持ちよさそうに寝ていた。

「さっき紹介したじゃん。由美ちゃんとこの犬でケルベロスだよ」

「そんな基本的なことを聞いているんじゃねぇ。あの犬は俺のベッドで何をしているんだ?」

「寝てるみたいだね」

「俺が悪かった。お前には一から噛み砕いて話をしないと通じないんだったな。何で由美ちゃんのところからお泊りに来た犬が、俺のベッドで気持ちよさそうに寝ているんだと聞いているんだ」

「ケンは普段からベッドで寝ているんだって。で、あたしが一緒に寝ようって言ったら遠慮しちゃって部屋から出て行ったんだよ。廊下ででも寝ているのかなと思ってたんだけど、そうか颯兄のベッドで寝てたんだ。やっぱりベッドじゃないと寝れないんだね」

「寝れないんだねじゃねえ。冗談じゃねえ。叩きだしてやる」颯太がベッドに近づきケルベロスに触れようとした途端

「ワンワンワンワンン・・・・・グルル」とケルベロスが吼えた。

「なっ、何だこの犬は、いきなり凶暴になったぞ」犬嫌いの颯太は及び腰になった。

「ケン、そこは颯兄のベッドだから・・・・・」陽向が言うと、ケルベロスは心の底から嫌そうな顔をして前足で自分の横のマットレスをポンポンと叩いた。

「颯兄、一緒に寝かせてあげるって」

「もともと俺のベッドだ、バカ者。なにが悲しくて犬のお許しを得て一緒に寝かせてもらわんとならんのだ」

「じゃあ、どうすんのさ?あたしかアンナちゃんと一緒に寝る?アンナちゃんだったらエニタイムOKだよ」

「そんなマネするくらいだったら野宿するわ。しょうがない今日は床で毛布被って寝るぞ」

「前向きなのか後ろ向きなのか、わからない決断だね」

 


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