これが土屋家の日常   作:らじさ

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第17話

「ところで颯太、Yukiには声をかけなかったのか?」Atsushiが尋ねた。

「いや、電話はしたんだが忙しいらしくてな」颯太が答えた。

「あいつが俺たちの誘いを断るってのは珍しいな。何て言ったんだ?」

「ん?いや、普通だが・・・・・」

 

「トゥルルルル~」

「カチャ・・・・・もしもし」

「おお、Yukiか?」

「あんたから電話なんて珍しいわね。どうしたの?」

「ああ、実はお前に折り入って相談があってな。明日の夕方に家に来て欲しいんだが」

「ブチッ・・・・・ツーツーツー」

「あっYuki。もしもし?」

 

「というやり取りがあってだな。電話もできないくらいに忙しいようだ」颯太が平然と答えた。

「バカ野朗、そりゃお前の悪企みが一瞬で見破られてるんだよ」Atsushiが怒鳴った。

「それにしても、さすがYukiだな。あれだけの会話から愛ちゃんの影を感じとるとは」Guuが感心したように言った。

「というか僕としては、何回も同じ手で騙される兄さん達の方が不思議なんですけど。一体兄貴に何て言って呼び出されたんですか?」陽太が尋ねた。

「確か、「合コン決めてきたから計画立てようぜ」だったな」Gonが言った。

「アンナちゃんの目が光っているのに、颯兄がそんなことできないことくらい気がつかないかなぁ?」陽向が呆れたように言った。

「いや、冷静に考えればそうなんだが、「合コン」の一言で全ての思考活動が合コンに集中してしまったのだ。人間の煩悩とは恐ろしいものだ」Youが感慨深げに言った。

「・・・・・こいつらは、そのうち絶対にデート商法に引っかかるな」康太が小声でつぶやいた。

 

「材料の買い物に行ってきま~す」と玄関から愛子の声がした。

「おい、陽向。お前も一緒に行ってこい」颯太が慌てて言った。

「え~、なんであたしが」陽向が文句を言った。

「愛ちゃんのことだ。じゃがいもがなかったからと言って代わりに大根使ったり、そっちの方が美味しいと思ったとか言って糸こんにゃくの代わりにうどんの入った肉じゃがになりかねん。変なもの買わないように見張って来い」

「それもそうだね。行ってくるよ」

 

三人の少女たちは、近くの商店街にやって来た。

「で、アイコ。何買いマスカ」アンナが尋ねた。

「肉じゃがだからね。じゃがいもと人参と玉ねぎと牛肉だね」愛子が答えた。

「いらっしゃい、お姉さんがた。今日は白菜が安いよ」八百屋のおじさんが元気よく声をかけた。

「じゃがいもどれくらい買えばいいかな・・・・・」

「じゃがいもかい、お姉ちゃん。安くしておくよ」

「あんまり多く買って余らせてもしょうがないよね」

「・・・・・お嬢様、じゃがいもは保存が聞くから大丈夫だよ」

「たくさん作って余らしてもなあ」

「・・・・・・・・・若奥様、どれくらいにしましょうか」

「いやだなぁオジさん。若奥様だなんてボク照れちゃうよ。そこのじゃがいも10kgちょうだい」

「ちょっと、愛ちゃん。いくら何でもそれは買いすぎじゃあ」陽向が慌てて口を挟んだ。

「そうデス、アイコ。じゃがいも10kgナンテ多すぎマス」

「よっ、颯ちゃんの奥さんも久しぶりだねぇ」

「ソンナ。結婚はまだデス。人参と玉ねぎ20kgずつくだサイ」

「ちょっとちょっと二人とも。石原軍団がカレーライスの炊き出しするんじゃないんだから、そんなに買っちゃってどうするつもり?」

「パプリカも安いよ。若奥様」

「5kgちょうだい」

「フキなんてどうだい、颯ちゃんの奥さん」

「なんだかわからナイケド10kgもらいマス」

「ストップ、ストップ。二人とも落ち着いて。その材料で一体なにを作るつもりなのさ」陽向が必死に二人を押しとどめた。

「ちっ、陽向ちゃんが一緒だったか」八百屋が舌打ちして言った。

「ちっじゃないよ、オジちゃん。そんなの売りつけて家の晩御飯に何を作らせるつもりだったのさ」

「え~と、無国籍料理?」八百屋は考えながら答えた。

「無国籍料理ってのは、訳の分からない料理って意味じゃないんだよ。普通の材料使ったって訳の分からない料理になるってのに・・・・・ブツブツ」

「「えっ?」」愛子とアンナが言った。

「あ、いやなんでもないよ。オジちゃん、じゃがいも2kgと人参と玉ねぎを1kgずつちょうだい。後はなにもいらないから」

「パプリカとフキはどうするんだい、陽向ちゃん」

「日本中探したって肉じゃがにそんなの入れてる家なんてないよ、オジちゃん」

 

てんやわんやで八百屋での買い物を終えた三人は向かいの肉屋へ向かった。

「へい、いらっしゃい。何にしましょうか、若奥様」どうやら肉屋の主人は八百屋での騒ぎを見ていたらしい。

「そこの神戸牛を薄切りで2kg」愛子が間髪入れずに答えた。

「ちょっとちょっと、愛ちゃん。肉じゃがの肉に神戸牛なんか使ったら、もったいないオバケが集団でタップダンスしながら家の中でパレードしちゃうよ」陽向が慌てて止めた。

「そうデス、アイコ。もったいないデス」

「颯ちゃんの奥・・・・・」

「オジちゃん、シャラップ。何も言わずにそこの一番安い牛の薄切り肉1kgちょうだい・・・・・」

陽向が強制モードで無理やり買い物を終了させた。

 

帰り道で愛子が何かを思い出したように言った。

「あっ、しまった。糸こんにゃく買うの忘れた」

「糸こんにゃくトハ、なんデスカ、アイコ?」

「こんにゃくが細長くなったものだよ、アンナちゃん」

「細長い・・・・・冷蔵庫にウドンが入ってマシタ」

「うーん、それで代用すればいいか」

「お願いだから、肉じゃがにうどん使うのは勘弁してね」陽向が疲労困憊した様子で言った。

 

 


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