CMです。
ここでフルメタメンバーを出したら意外に違和感がないのと書きやすいので、
じゃ本当にフルメタメンバーが同級生だったらどうなるかと思い、平行する形で
「バカとテストとフルメタパニック」
というSSを連載しております。
ぜひ一度ご一読くださればありがたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
「それはそうとどうすんのさ、これ」愛子が床でのびている五馬鹿を指差して言った。
「いろいろと面倒そうだから、知らないふりしておいた方がいいと思うな」陽向が無責任に言った。
「そうもいかんだろう」陽太が言った。
「・・・・・だが、五人も担いでは帰れん」康太が言った。
「ピリピリピリ~」笛の音がして、警備員がこっちへやってくるのが見えた。パパと五馬鹿の乱闘を見て誰かが通報したのだろう。
「よし、この連中は見知らぬ人たちだ」陽太の決断はすばやかった。
「つまり、見捨てるってことなのね」由美子が尋ねた。
「違うよ、由美ちゃん。このままでは僕たちまで厄介ごとに巻き込まれてしまう。それは兄さんたちの本意でもないはずだ。僕たちだけでも助かってくれと倒れた兄さんたちも思っているはずだよ」陽太が由美子を説得するように言った。
「なんか、すごい美談にしてますけど、引っ張れるものだったら親の足でも引っ張るようなあの連中がそんな愁傷なこと考えますかねぇ?」愛子が言った。
アンナとパパを引っ張って、やや離れたところに全員で移動した。五馬鹿は警備員に担がれてどこかへ運ばれて行った。
「ふー、危機一髪だった」陽太が言った。
「危機一髪はいいんですけど、五馬鹿はどうするんですか?」
「おなかが減ったら帰ってくるだろう」
「遊びに出かけた小学生じゃないんですから・・・」こういう時に、陽太もやはり土屋家の人間だと感じずにはいられないのであった。
「そういえばアンナちゃん、お父さんをまだ紹介してもらってないよね」陽太が言った。
「忘れてました。こちらがワタシの父のアンドレイ・セルゲイヴィッチ・カリーニンデス。
パパ、こちらがお世話になっている土屋家のヨータにコータにヒナタ。そしてコータの彼女のアイコにソータの彼女のユミコです」
「おお、アンナがいつもお世話になっています。アンドレイ・カリーニンです。スペツナズというロシアの専門学校で教官をしています」
「(・・・・・あの設定は、この親父から来たんだな)」
「(この期に及んでも言い張るとは、厚い面の皮だ)」
「息子の宗助がいるんですが、友達ができたようで遊びまわっています。実に困った奴だ」
「(さっき、かなめちゃんのハリセンの一撃で気絶して、引きづられていったよねぇ)」
「(ロシア的には、遊びの範疇なんじゃないの?なんか細かいことは気にしなさそうな国だし)」
その時、宗助が頭を撫でながら戻ってきた。
「どうした軍そ・・・・・宗介」
「ひどい目にあいました、少佐ど・・・・・お父さん」
「あの、日本人の女の子と遊んでいたのではなかったのか」
「自分が遊ぶわけがありません。あの女に捕らえられ、ハリセン連打やら往復ビンタやらありとあらゆる拷問を受けておりました。どうも内調か陸幕二課などの日本の諜報関係の人間ではないかと思われます」
「何か喋ったのかね」
「まさか。隙を見て逃げ出してまいりました」
「(どうもこの親子というか、カリーニン一家ってみんな似たもの同士だね)」
「(10歳の女の子を使う諜報機関があると思っているのかな・・・・・)」
「パパ、ソースケにも紹介を・・・・・」
「おお、失礼した。みなさん、この子がアンナの弟のソースケ・サガラ・カリーニンです。見た目の通り、日本人ですが事情があって私が引き取りました」
「姉萌のシスコンで困っていマス」アンナが嬉しそうに言った。
「ねっ、姉ちゃん。俺はシスコンじゃないんだから、そんなこと人に言うなよ」
「イイエ、どんなライトノベル読んでも、弟は姉萌と決まっていマス」
「(・・・・・一体、どんな本読んでいるんだろうね、アンナちゃん)」
「(というかアンナちゃんが重度のブラコンってのは十分見せてもらったけど、宗介がシスコンってとこはまだ見てないんだけど)」
「それにしても宗介はかわいいなぁ、あたしあんな弟が欲しかったんだよね」陽向が唐突に言い出した。
「・・・・・かわいい?口をへの字にして、不機嫌そうな顔してるけど」愛子が不思議そうに言った。
「そういうちょっと突っ張ったところがかわいいんじゃない、愛ちゃん。よし、あたしの弟分にしちゃおう」
「陽向ちゃんの弟分ってケンがいるじゃない。どうするの」
「その下に入れればいいよ」
「犬より立場が下なんだね」
「ねえ、宗介。あんた、あたしの弟分にしてあげるよ」陽向が宗介に向かっていった。
「弟分?何をバカなことを言っている、女。なぜ、俺が民間人の弟分なぞにならんといかんのだ」
「まあまあ、遠慮しなくていいんだよ」陽向が手を伸ばした。
「触るな」宗介が手を払おうとした瞬間、陽向が目にも止まらぬ動きで宗介の後ろに回り、あっという間にスリーパーを決めた。
「そういうつれない態度を取るとどんどん締まるよ」
「・・・・・陽向、喉に入っている喉に」陽太が叫ぶ。
「くっ、誰がお前の弟分なぞに・・・・・ググッ」
「へえ、まだそういう元気があるんだ。じゃもうちょっとググっと」
「ぐぉお~・・・・・ちょ・・・ちょっと待て」
「なんか、また泡吹いているけど癲癇かなんかの持病があるんじゃないか、宗介君は」
「いや、単に喉が絞まっているだけかと」愛子が答えた。
「ん?返事がないな。じゃもう少しググっとな」
「・・・・・・わか・・・った。タップタップタップ」
「穏やかな話し合いでわかってくれて、あたしも嬉しいよ」
「・・・・・チョークスリーパーで脅迫しておいて、穏やかもへったくれもあるか」
床に四つんばいになってゼエゼエしている宗介に近寄って陽向が言った。
「これであたしがお姉ちゃんだからね。陽向姉ちゃんって呼ぶんだよ」
「・・・・・俺に取っての姉ちゃんはアンナ姉ちゃんだけだ」
「じゃあ、なんて呼ぶのさ。陽向なんて呼び捨てた日にゃあシャイニングウイザードの連発食らわすよ」
「ヒナ姉でいいだろう」
「・・・・・ヒナ姉か。なんかちょっといいね。あたしのかわいさもでているし。よし、あたしのことはヒナ姉だよ」
この騒ぎですでに皆、連行された五馬鹿のことは忘れていた。