いやあ長かった。というか途中で仕事が忙しくなったので
予定外に長引いてしまたのが理由なんですが。
大変申し訳ありませんでした。
よろしければまたお会いしましょう。
月明かりの庭でしばらく二人は睨み合っていた。先に声をあげたのは颯太君だった。
「で、何の話ですか親・・・、おじさん」
「何を緊張しているのかね、ソータ」アンナパパが不思議そうに言った。
「1日24回も人の頭に銃を突きつけるような男と二人きりになったら緊張もするわ」颯太君が怒鳴った。
「日本人は繊細なのだな」
「日本人とかロシア人とかの問題じゃねぇ。あんたの部隊ではいつもそんなことやってんのか」
「ふむ、私の学校では食前食後ことある毎に生徒たちは銃を突きつけ合ってるな」
「まだ引っ張るつもりかその設定、一体どんな学校だよ。つーか、事故が起きたらどうするつもりだ」
「ハッハッハ、心配するな、ソータ。みんな大人だ。理性的だから引き金は引かんよ」
「銃を突きつけ合っている段階で、もう理性なんて欠片もないんだよ」
「文化の違いだな」アンナパパが涼しい顔で言った。
「それはともかく君に聞きたいことがある」アンナパパが声を落として言った。
「アニメのことはあまり知りませんよ」颯太君が答えた。
「いや、そうじゃなくてアンナのことだ。君は一体アンナをどう思っているのかね」
「・・・・・ちなみに何とも思ってないと答えたらどうなるんですか?」
「娘の純情を弄んだ罪を償ってもらう」
「・・・・・・・・・結婚したいと言えばどうなります?」
「大切な娘を奪う罪を償ってもらう」
「・・・・・・・・・・・・・・・まだ、答えが出せないと言ったら」
「優柔不断な男をはいらんと罪を償ってもらう」
「どう答えても死亡フラッグじゃねえか」
「ハッハッハ、冗談だ・・・・・・・たぶん」
「ハッキリ否定しろよ」
「まあ、冗談は抜きにして君の本当の気持ちが聞きたいのだ」
「・・・・・・・」颯太君が黙り込んだ。
「あれは亡き妻に似て不器用な娘だ。人に合わせてうまくやっていくということができない子だった。私も仕事で留守がちだったこともあるが、いつも一人でいるような子だったのだ」
「・・・・・」
「それが日本に来てからは、人が変わったように明るくなった。たぶんこの家や友達、とりわけ君のお陰だと思っている。私へのメールも君の話ばかりだ」
「・・・・・はぁ」
「そのアンナが結婚したいと言い出した。まあまだ17歳だ、結婚は当分先だろうが、そんな心境になったというのが父親としては驚きでもあり、嬉しくもあった」
「・・・・・そうですか」
「君はアンナのことを本当はどう思っているのかね?」
「・・・・・」
「いや、アンナの気持ちを無理に押し付ける気はない。一度でもそんな気になれたのならば将来は誰かと結婚してくれるだろう」
「・・・・・アンナは」
「ふむ」
「(・・・・・タイム、タイム)」緊張感に耐えられずボクがつぶやいた。
「(どうした愛ちゃん)」陽太君が言った。
「(どうしたもこうしたも、このSSでこんな緊張感のある場面入れちゃっていいの?)」
「(・・・・・お前は何を言っているのだ?)」
「(だって、半ページもギャグが入ってないんだよ。これじゃ「土屋家の日常」じゃない・・・)」
「(言っていることがよく分からないけど、続きが始まったみたいだよ)」
「アンナはいい子だと思います、でも・・・・・」
「・・・でも、何だね」
「俺が自分に自信がないんです。本当にアンナを幸せにしてやれるのか」
「ふむ」
「25歳にもなって未だにバンドなんかやっている男ですから、将来アンナと家庭を持ってやっていけるのか、自信がないです」
「よく聞け、ソータ。25歳やそこらで将来の自信なんてある奴はいない。「やれる」かじゃなくて「やりたいか」が大事なのだ」
「ソータ」その時、ボクたちを突き飛ばして、バスタオルにわがままバディを包んだアンナちゃんが玄関を飛び出し、颯太君に抱きついた。
「ワタシ、ウレシイデス」Gカップの胸を惜しげもなく颯太君の腕に押し付けている。
横を見ると玄関の床の上に康太がうつ伏せになって血の海に沈んでいた。
「ちょっと目を離すと一体何があったのさ」陽向ちゃんがパジャマを着て髪を拭きながらやってきた。
「アンナちゃんは半裸で飛び出すし、康兄は血の海に沈んでいるし・・・・・」
「ワンワンワン」ケンが陽向ちゃんに吠えた。
「え、それで今アンナちゃんと颯兄とアンナパパが対峙しているわけだね」
「ちょっと待て陽向。ケンは3回しか吠えてないのに、そこまで詳細な事情が説明できたのか?」
「それよりアンナちゃんたちはどうなったの」陽向ちゃんがドアから顔をだす。
うーん、アンナちゃんたちも気になるけど、彼女としては康太も気になるんだよね。一応自分の鼻血で溺れないように仰向けにしておいてあげよう。
「ちょっと待て、お前その格好は何だ」
「風呂あがりデスネ。それよりソータの本当の気持ちがやっと聞けて嬉しいデス」アンナちゃんが胸をさらにグリグリと押し付けた。
「・・・・・青年」額に血管を浮かべたアンナパパが低い声で言った。
「遺言があれば聞いておこう」
「アンナ、離れろ。一体何しに来た」
「パパからソータを守りにきまシタ」
「お前が来たから危険度がMAXをオーバーしたんだ、バカ者」
「青年、私は気が長い方だ。3秒やる。お前の罪を数えろ」アンナパパが銃を颯太君に向けて言った。
「アンナ、離れろ。ドワッ」アンナちゃんに更に抱きつかれて颯太君が重心を崩した。
「1・・・ドギューン」颯太君の頭があったはずの場所を銃弾が通過して行った。
「親父、3秒待つんじゃなかったのか」颯太君が叫んだ。
「男は1だけ覚えていれば生きていけるのだ」
「どこの警察庁長官だ、あんたは」
「ソータ、ワタシ嬉しいデス」
「それは分かったから、俺の上からどけ・・・・・ていうかバスタオルが、バスタオルがぁ~」颯太君の叫び声が庭中に響いた。
ハラリ。アンナちゃんのバスタオルがはだけた。
「(動きが止まったね・・・・・)」
「(止まったな)」
「(止まっちゃったね)」
「ワン」
「・・・・・・・(血だまりの中)」
翌日、アンナちゃんの宇宙CQCでボコボコにされたアンナパパと憔悴しきった宗介君(お風呂場で何があったんだろう?)の二人はロシアへと帰って行った。
「ソータは?」アンナパパが言った。
「すみません。何があったのか昨夜から40度の熱を出しちゃって」裕ちゃんが言った。
「いえ、構いません。今度はキチンと話しをつけるとお伝え下さい」
「何のお話か知りませんけど、何でしたらロシアの方に派遣しますわ」裕ちゃんが言った。
こうしてアンナパパと宗介君はボクたちを引っかき回すだけ引っかき回してロシアへ帰国した。
「ねぇ、康太?」ボクは康太に尋ねた。
「・・・・・なんだ」
「結局、あの2人何しにきたの」
「「「「「そういえばそうだ」」」」」
結局、アンナパパたちが何のために日本に来たのか誰も知らないのであった。