これが土屋家の日常   作:らじさ

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あの。
新話を投稿した週よりも投稿していない週の方が読んでいる方が多い
というのが何か納得いかないんですけど(笑)



第3話

「・・・・・ということで来週の日曜日の10時に、颯兄と由美ちゃん、陽兄と愛ちゃん、康兄とアンナちゃん。ついでにマコちんとあたしとユカりんでデートだね」陽向が嬉しそうに宣言した。

「えぇ~、冷静に考えればどうせデートするなら康太とがいいな、ボク」愛子が言った。

「「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」」」

「(おい、イベントのコンセプトが根源から否定された気がするんだが)」颯太が言った。

「(なんのためにわざわざクジまで作って引かされたんだ俺たちは?康太)」

「(・・・・・何で俺のせいになっているのだ。だいたいあいつはシナプスレベルでものを考えているんだから、何かを期待する方が間違っている)」

「(恐竜と同じだね)」陽向が感心したように言った。

 

「まあ、クジの結果だから仕方ないか。ボクがデートしてあげるよ、陽太君」

「(自分で言い出しておきながら、何か恩にまで着せてるぞ、おい)」

「(俺は感謝しなきゃならんのか?)」

「(・・・・・だから俺に振るなと言うのに。ちょうどいい機会だ。普段の俺の苦労を身にしみつけろ)」

 

「コータは普段運動不足ですからネ。陸上自衛隊のレンジャー課程に一般参加できないか調べておきマス」アンナが嬉しそうに言った。

「(アンナはアンナで楽しそうだが、レンジャー課程なんて一般隊員でさえ参加できないのに、民間人が気軽に参加できるもんなのか?)」

「(俺たちにしか刺激がないんだが・・・・・)」

「(・・・・・基本的な問題として、それは既にデートとは呼ばんだろう)」

「(いや、多分アンナちゃんは、自分も参加するつもりなんじゃないのかな?)」

「(あのトンデモ親父のせいで、あいつは既にスペツナズの教官レベルだろうが)」

「(レンジャーの教官もいい迷惑だな)」

「(・・・・・この場合、レンジャーの教官じゃなくて俺の心配をしてくれ)」

 

「あの、そこの土屋兄妹はさっきから何をゴチョゴチョやっているのかな?」愛子がじれたように言った。

「あ、いや何でもないよ愛ちゃん。デートの傾向と対策をちょっと」颯太が慌てて答えた。

「そういうのはデートの相手とやりなよ。デートの計画を仲良く立てるのもデートの楽しみの一つなんだよ」愛子が両手を腰に当てて言った。

「(・・・・・その相手が提案してきそうな計画についての対策をしているのだが)」

「(始まる前に既にデートというコンセプトから外れているような気がするな)」

「(というか愛ちゃんと康兄って、そんなにデートしてるの?)」

「(・・・・・回数で言えば、みんなとそんなに変わらん)」

「(何だかベテランの風格で上から目線なんだが?デート訓練のハートマン先任曹長みたいだぞ)」

 

「さ、じゃ。それぞれの組に分かれてデートのプランを立てて下さい。いいですか、計画からお家に帰るまでがデートですからね」愛子が嬉しそうに叫んだ。

 

 

 

【颯太と由美子カップルの場合】

 

「さて、由美ちゃん。君とデートすることになった訳なのだが」

「すいません、私なんかと」恐縮しながらも由美子は嬉しそうだった。何しろ颯太のバンドの時のShuのファンなのである(ちなみに愛子は、颯太とShuは別人と既に割り切っている)。

「いや、それはこっちも同じなんだが、実は大問題が一つある」

「芸能人として、わたしとデートしているのを写真週刊誌に撮られることが心配なんですね」

「そんなもん、これが本当のデートだったらこっちが金払って広告出して宣伝してやりたいくらいだ」

「「Shuのデート現場はこれだ」なんて広告でたら、ファンはさぞビックリでしょうね」

「ファンのことはどうでもいいが、実はおれは「デート」というものをしたことがない」

「えっ・・・・・・・・・・・・はいっ?」思いもかけないことを言われて由美子が目をぱちくりさせた。

「自慢じゃないが、まだデートをしたことがないのだ」颯太が堂々と言い切った。

「・・・・・・・たっ確かにそれは何の自慢にもならないと思いますけど、えっと?いつもアンナちゃんとデートしているんじゃ」

「あいつの日本人離れしたというか常軌を逸した買い物の荷物持ちとして連れて行かれているだけだ」

「この間、映画観に行ったって言ってませんでしたっけ?」

「アンナが観たい映画があるというのでな」

「お洋服の買い物にも行ったって聞きましたけど」

「お洋服なんて言うと可愛く聞こえるが、あいつが新しい迷彩服が欲しいというので付き合っただけだ」

「お食事も行ってきたとか」

「あいつのボルシチが間違いだということに気がついてもらわんと、いいかげんにこっちの命が危ないので、本物のロシア料理の店に連れて行った」

「それでもお兄さんはデートをしたことがないと主張しているんですか・・・・・?」

「うむ、この歳で言うのも恥ずかしいのだが、「デート」をしたことがまだないのだ」

「・・・・・あの、失礼ですけどお兄さん。デートって何なのか知ってます?」

「いや、だから「デート」というものをしたことがないから「デート」というのが何なのか分からないのだが、何かおかしなこと言っているかな」

「・・・・・・・・・・・」

「例えばバスケットだったら5人チームでボールをカゴに入れる。ステップは何回とかルールが決っているだろう?それがあるからみんな「ああ、バスケットなんだな」とわかる」

「はあ、それはそうですが」

「それと同じで「デート」というのも何と何をしてとかルールが決っていると思うんだ」

由美子が頭を抱えた。

 

「・・・・・映画を観に行ったのは?」

「映画を観に行っただけだ」

「・・・・・お洋服の買い物に一緒に行ったのは」

「迷彩服の買い物に付き合っただけだな」

「・・・・・ロシア料理のレストランに行ったのは?」

「飯喰いに行っただけだな」

どこから説明していいものやら、由美子は途方に暮れた。

「あのですね、お兄さん。落ち着いてよく聞いて下さい。それみんな「デート」です」

「なっなにぃ~?」颯太が叫んだ。

「男女が一緒にでかければ、それは世間的にはデートと見なされます」

「するとこの間ババアの買い物の荷物持ちに連れていかれたのは、あのババアとデートしたことになるのか?」颯太の顔がゆがんだ。

「すいません、少し訂正します。好きあっている男女が一緒にお出かけすればデートなんです」

「いや、俺は別にアンナのことを好きとも何とも思ってないのだが」

「この際、それは些細な問題です」

「「好きあっている男女」ってのが、「デート」の成立条件じゃなかったのか?」颯太が納得いかない顔で言った。

「誤差範囲と言ってもいいですけど・・・・・」

 

どうやら由美子まで土屋家の家風に染まってしまっているようだ。

 




颯太のデートの認識の部分。
解りにくいかも知れませんが実話です。というか私の実体験です。

いや、大学時代に本当にこう認識していたんですよ。
ある女の子(Nさん)と話している時にお互い映画が好きだということが
わかって、一度一緒に映画を観に行ったんです。

で、私映画を見た後で人と感想話し合うのが好きなものですから
その娘を何回も誘ったんですね。その娘も一度も断らずに一緒に
行ってくれた。で、ある日共通の友人から言われたんですわ。

友人「お前、Nさんと付き合ってるって?」
私「え?別に付き合ってないよ」
友人「でも、何回もデートしてんだろう」
私「いや、一度もデートなんかしたことないぞ」
友人「???おかしいな5~6回一緒に映画観に行ったってB子が言ってたけど」
私「ああ、それくらいは一緒に観に行ってるな」
友人「デートしてんじゃん」
私「いや、映画観に行っているだけだってば」
友人「???」

その時の私のNさんへの感想
「いつ誘っても断らないって本当に映画が好きなんだな」

すいませんでしたNさん。でも、あの時は本当にそう思ってたんです。


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