これが土屋家の日常   作:らじさ

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第6話

【康太とアンナカップルの場合】

 

「可愛い義弟であるコータのためにワタシがデートの真髄を教えてあげマス」どうやら姉さん暴風は未だにおさまる気配はないようである。

「・・・・・まあ、お手柔らかに頼む」康太はあまり気乗りしない様子で言った。

「ただ、残念なお知らせがありマス。陸自ではレンジャー訓練の一般参加は受け付けていないそうデス」アンナが残念そうに言った。

「・・・・・いや、まったく残念でも何でもないが、本当に自衛隊に電話したのか」

「ハイ。しかたないのでグリンベレーやSAS、Navy Sealsにも電話してみましたが、全部断られまシタ」

「・・・・・無駄に豊富な行動力だな。なんでそこまで俺を特殊部隊の訓練に放り込みたいのだ、お前は?」

「フフフ、義姉さんの勇姿をみて、コータも義弟として立派な姉萌になるのデス」

「・・・・・いや、宗介がシスコンというというより、お前が超絶ブラコンにしか見えなかったのだが」

「だけど喜んでくだサイ」アンナが一転顔を輝かせた。

「・・・・・喜ぶというか、嫌な予感しかしないが」康太の顔が更に暗くなった。

「ワタシのコネクションを最大限に活かして、ロシアのスペツナズの訓練に特別に参加できることなりまシタ」

「・・・・・結局、あのトンデモ親父に頼んだということじゃないか。だいたい、スペツナズが学校という設定はどこへ行ったのだ」

「クラブ活動みたいなものですネ」

「・・・・・そこまで生命をかけるクラブ活動は日本にはない。というか訓練期間はどれくらいなのだ?」

「三ヶ月デス」

「・・・・・デートの範疇を遥かに超えているのだが、学校はどうするつもりだ。そもそも新婚旅行でもそこまで長くはないぞ」

「でも、ワタシも一緒にやりマスから」

「・・・・・二人で参加すれば何でもかんでもデートだと思うんじゃない。速攻で親父に断ってこい」

ブツクサ言いながらアンナがロシア語でどこかへ電話した。

 

「それでは第2案でいきマス」気を撮り直した様子でアンナが言った。

「・・・・・そうしてくれると助かる」

「商店街の八百屋夏野菜バーゲンセールへ行きまショウ」

「・・・・・世界規模のデートからいきなり町内会レベルになったな。それはデートなのか?」

「ソータとはしょっちゅうデートしてますネ。バーゲンは女の戦場デス」

「・・・・・愛子といいお前といい、一体何と戦っているのだ?で、デートはそれでいいのか」

「その後は、中野、池袋、秋葉原へ・・・・・」

「・・・・・ちょっと待て。そのコースはお前に引っ張られて何度も行っていて、そういうのに全く興味が無いにも関わらず俺はそこらのオタクより詳しくなってしまっているのだが。大体、今回のイベントのコンセプトを理解しているのか、お前は?」

「馬鹿にしないでくだサイ。新しい刺激を得ることデスネ」

「・・・・・中野、池袋、秋葉原って、いつものお前の定期巡回コースではないか」

「フフフ、コータは甘いです。中野では「進撃の巨人」のフィギュアが出ていますし、池袋では木上イ憂子先生の新作BL本が発売されているはずデス。秋葉原に至っては新しく「男の娘メイドカフェ」というお店がオープンを・・・・・」

「・・・・・それは新しい刺激ではなくて、単に新発売というのだ。それに考えてみればお前にしか刺激がないぞ」

「コータも姉萌なら義姉さんと同じ趣味なはずデス」アンナがキッパリと断言した。

「・・・・・人に勝手な属性をつけるな。一体お前の日本感はどうなっているのだ?」

 

この娘が来日してから出かけた街は、大体この3つしかないようである。普通の女子高生なら興味を示すであろう原宿や渋谷など目もくれない。愛子が言った「アンナちゃんをこのまま帰国させたら間違った日本感が広がって国益を損なう」という発言もあながち間違いではないような気がしてきた。

 

「コータはワタシの提案に反対ばっかりしてマスネ。これが世間でいうところの性格の不一致ですカ?」

「・・・・・お前の提案が特殊すぎて賛成のしようがないのだが」

「ソータはちゃんとデートしてくれますネ」

「・・・・・いや、そもそもお前は兄貴の発言なぞ最初から聞いちゃいないだろうが」

「それは失礼デス。夫の言うことはチャンと聞いていますネ」

「・・・・・そうなのか?」

「ソータの意見を聞いた上でワタシの提案を通してイマス」

「・・・・・それを日本語では話を聞いていないと言うのだ」

「日本語は難しいデスネ」

「・・・・・お前が強引にマイペース過ぎるのだ」

 

結局、こちらのカップルも大騒ぎした割りには何も決まらないのであった。

 

 


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