これが土屋家の日常   作:らじさ

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第7話

【陽向とユカりんとマコちんのトリオの場合】

 

「※★♬#!§☓!」陽向の右耳に誠が怒鳴った。

「♫〒¶?∀÷∉》ヾД*ノ”」と左耳に由香も怒鳴っている。

「ちょっとちょっと二人とも落ち着いてよ。何をそんなに怒っているのかよくわからないけど、一緒に怒鳴られても聞き取れないし、それに二人とも地球上の言語じゃなくなっているよ」陽向が悠然と二人に向かって言った。

「なんで怒っているのかわからんところが、そもそも問題だ!!」

「昨日のあれは何なのよ!!」二人が同時に叫んだ。

「昨日のあれって・・・・・ああ、デートのお誘いのこと?」

「どこがお誘いよ。一方的に宣言しただけじゃないの」

「俺に至っては集合場所と時間しか聞いてなくってたった今デートだということを知ったんだが、なんでお前とデートしなきゃならんのだ」

「マコちん、そういう発想がひいては奥様のイライラを引き起こし、離婚の原因に・・・・・イタタタ」シビれを切らした由香が陽向にウメボシをくらわした。

「訳のわからない話はいいから、人間に理解できるように説明しなさい」

「いやね、愛ちゃんが・・・・・」陽向は経緯を二人に説明した。

 

「要するに、また工藤先輩の思いつきなわけね。というか家庭の問題は家庭内で解決して欲しいんだけど」由香が呆れたように言った。

「おい、アホ。今すぐ2年のクラスに行って、あの人から電池を抜いてこい。」誠が言った。

「あっ、愛ちゃんって電池駆動だったの?」

「そんなことはどうでもいい。あの人が何かろくでもないことを思いつくたびに俺たちが被害にあってるじゃないか」

「まあまあ、マコちん。物は考えようだよ。ユカりんとデートすると思いなよ」陽向が言った。

「何で俺が城ヶ崎とデートしなきゃならんのだ」

「なによ、竜崎。わたしじゃ不満な訳?」由香が傷ついたように誠を睨んだ。

「そっ、そういう意味じゃ・・・・・いや、そういう問題じゃねぇだろう」誠が少しどもりながら言った。

「ユカりんもマコちんとのデートだと思えば・・・・・」

「はぁ?何でわたしが、竜崎とデートを・・・・・」

「俺に何か不足でもあるのか」誠が半目になって言った。

「そっ、そんなこと言ってないでしょ」由香が少し頬を染めて言った。

「ほらね。新しい刺激があるでしょ」陽向が勝ち誇ったように言った。

「それで、あなたはどうするのよ?」由香が少し慌てた様子で弁解した。

「あたし?あたしは二人のお目付役としてお供を・・・・・」

「「それじゃ、結局いつもと同じじゃねえか」」二人のゲンコが陽向の脳天に炸裂した。

 

「あいたたた。あのね、二人ともいつも気軽にポンポンと人の頭殴っているけど、あたしが二人を護るためにどれだけ苦労していると思っているのさ」陽向が少し涙目になりながら、抗議した。

「あなたがわたし達を護ってるですって?」

「お前に護ってもらった覚えなぞ全くないぞ」二人が首をひねりながら言った。

「日頃、あたしと仲良くしてもらっているからって、お礼に愛ちゃんが二人をもてなしてあげたいって言ってるんだよ」陽向がドンッと机を叩きながら叫んだ。

「あなた、何言ってるの?」

「あの先輩がそんな愁傷な心を持っていたとは意外だったが、おれ達を護るって話はどこ行ったんだ?」

「だから、愛ちゃんが二人にご馳走したいって言ってるんだってば」

「それは嬉しいことじゃないの?」

「護るというよりも、工藤先輩の好意を妨害しているだけじゃないのか、お前は」

「だって、カレーだよ。カレー」陽向が更に力説する。

「別にカレーは嫌いじゃないわよ」

「俺はカレーは大好物だぞ。どんなカレーでも美味いと思っているんだが」

「二人とも愛ちゃんカレーの恐ろしさを知らないから、そんなにノホホンとしていられるんだよ。しかもシーフードカレーなんだよ」

「あなたが言うことって本当に理解できないわね?」

「カレーって、世間で言うところのカレーライスのことだろ?」

「それ以外にどんなカレーがあるのさ?」陽向が尋ねた。

「いや、あの先輩のことだから「シーフードカレイだよ」とか言って、カレイの煮付けをご飯の上に乗っけて出すくらいのことはしかねんと思ってな」

「マコちん、普段から愛ちゃんのことをどう思っているのさ」

「普段は別に意識したことはないが、とにかくはた迷惑な人だとは思っている」

 

「まず、二人ともシーフードカレーというと具に何が入っていると思ってる?」

「普通はエビとか白身魚じゃないの?」

「あの先輩ならタラバ蟹丸ごと入れかねんな」

「近いけど惜しい。愛ちゃんシーフードには鯵の干物が丸ごと入ってます」

「全然、近くないじゃないの」

「しかも各人に一匹ずつ」

「まあ、あの先輩ならそれくらい素っ頓狂なことをしてもおかしくないが、干物をシーフードの範疇に入れる人間は日本広しと言えどあの人くらいだろうな・・・・・」

「いや、愛ちゃんカレーの真の恐ろしさはそんな些細なところにあるんじゃないんだよ」陽向が怖いものを思い出したかのように震えながら言った。

「シーフードカレーに干物入れるのを些細って・・・・・。どうでもいいけどあなたなんでそんなに怯えているのよ」

「カレーというのは、そんなに作るのが難しいハイパーテクニカルな料理だったか?」二人は再び首をひねった。

 

 


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