これが土屋家の日常   作:らじさ

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本当にお久しぶりでございます。
入院したり、転職で引っ越ししたりで更新が遅くなってしまいました。
先週やっとこちら(埼玉県和光市)に引っ越して参りました。

ところで話は変わりますが、皆様はテスト前とか勉強しなければならない時に
急に部屋の掃除や模様替えをしたくなることはありませんか?

何が言いたいのかと言うと、この話を書いている私の後ろにまだ開けていない
ダンボール箱が15箱ほど鎮座ましましており、非常な圧迫感を感じるのです。

要するにさっさと部屋を片付けなければならないというのに、急に更新したくなったという・・・・・
来週から仕事なんだけどなぁw



第21話

「うーん、安全かつ合法的にかぁ。いきなりハードルが高くなったね」陽向が考えこむように言った。

「そもそも普通のデートにゃそんなハードルなんかねぇんだよ。なんでお前とそんな『俺たちに明日はない』みたいなデートをせにゃならんのだ」誠が言った。

「マコちん古いなぁ。そこは『ナチュラル・ボーン・キラーズ』って言ってくれないと」

「やかましい。人を無理やり呼びつけといて、どれだけデンジャラスなデートさせるつもりだ、お前は。それにあの映画も大概古いだろうが」誠が怒鳴った。

「だって、お金がないのにユカりんってば『不良からのカツアゲも駄目、ヤクザの事務所に殴り込みも駄目』って無茶なことを言うんだもん。あとはコンビニに押し入って借りるくらいしか思い浮かばない・・・・・・イタイイタイ」由香が陽向のこめかみにウメボシを喰らわした。

「わたしは『安・全・に・合・法・的・に』って言ったのよ。犯罪レベルを『強盗』にアップグレードしてどうするのよ」

 

「ユカりん痛いってば、だから借りるだけだから犯罪じゃないって」陽向が必死に訴えた。

「『押し入る』って言ってる段階で犯罪だと思ってるでしょうが、あんたは。伊賀には法律って制度はなかったの?」

「おい、城ヶ崎。毎朝、隣の家から卵ドロボウをしてバアさんに鎖鎌振り回されていた奴にそんなこと言っても無駄だと思うぞ」誠が由香を止めた。

「そうだよ。多分、ここらのコンビニには鎖鎌は常備してないはずだから『安全』だよ」陽向が勝ち誇ったように由香に言った。

「『合法的』って言葉を気持よくスルーしてるじゃないの。あなたに良いことを教えてあげるわ、土屋さん。確かに刑法には「強盗してはいけません」とは書いてないけれど、「強盗したら5年以上の懲役って書いてあるの。今後の人生のためにしっかりと覚えておくといいわ」由香が眉間を揉みながら言った。

 

集合から20分経っても、集合場所から一歩も移動していない一年生トリオなのであった。

 

「こうしていていてもしょうが無いわね。街にでてウィンドウショッピングでもしましょうか。お金もかからないし」由香が提案した。

「ユカりんの家ってリフォームでもするの?」陽向が尋ねた。

「まあ、それしかないだろうな」誠も同意した。

「さすがに都会は違うよね。『窓屋』なんてあるなんて」

「一回りしたら時間もツブせるでしょう」

「ねぇねぇ、やっぱりバルコニー付きの窓がいいよね」

「土屋さん、ちょっと質問していいかしら?」由香が陽向に尋ねるように言った。

「何かな、ユカりん?」

「ツッコんで欲しいのかしら、殴って欲しいのかしら?」

「ええ、何で?ユカりんが自分から窓を買いに行くって言ったんじゃない。でも窓なんて420円で買えるものなのかな?」陽向が心外そうに言った。

「ウィンドウショッピングを『窓買い』何て勝手に訳するんじゃないわよ。どこの世界に窓だけ売っている店やそれを買いに行く高校生がいるのよ」

「Windowは窓で、Shoppingは買い物だから、どこも間違いはないと思うんだけど」陽向が不思議そうに言った。

「あなたが一年の総代っていうのは、うちの学校の教育システムに何か致命的な欠陥があるとしか思えないわね」由香がため息をつきながら言った。

「おい、アホ。ウィンドウショッピングってのは、窓を買うっていう意味じゃなくてショーウィンドウを見て回ることだ」

「へぇ、東京じゃそういう意味なんだ」陽向が感心したように言った。

「伊賀を除いた世界中で同じ意味だわよ」

 

本当にこれ以上、伊賀をdisるのは止めて頂きたいと心から願う書いている人なのであった。

 

とりあえずこれ以上ここにいても埒が明かないので街に出ることにした。

 

「それにしても人が多いね。一体どこから湧いてくるんだろう」

「まあ、日曜だからな。カップルとか家族連れとかが多いんだろう。こんなアホな理由で出てきたのは俺たちくらいだと思うけどな」

「そういう時に500円程度しか持ってこないのも、あなた達くらいだと思うけどね」由香が冷たく言った。

「だって、愛ちゃんが・・・・・」陽向が言い訳するように言った。

「このアホのせいで・・・・・」誠も負けずに言い返した。

「二人ともいい加減に黙らないと、またゲンゴ喰らわせるわよ」由香がコブシを握りしめながら二人を睨みつけた。

「(何か上から目線だけど、ユカりんだって結局1000円しか持ってなかったんだよね)」陽向が声を潜めて誠に囁いた。

「(デートに行くのに財布を忘れる奴も滅多にいないと思うぞ)」誠が答えた。

「内緒話ならもっと小さい声でしなさい。丸聞こえだわよ。わたしのは不可抗力だって言っているでしょうが」由香が二人を怒鳴りつけた。

 

「いくら渋谷とは言え、異常に人が多くないか?」誠が不思議そうに言った。

「人が密集しているわね。何かテレビのロケでもやっているのかしら?」由香が答えた。

「あたし様子を見てくるよ」

 

陽向がそう言い残すと人混みの中にスルスルと消えていき、しばらくして戻って来た。

 

「何だったんだ?」

「事故でもあったの?」

「何かよくわからないんだけどお揃いのウェディングドレスを来たカップルがスクランブル交差点を道玄坂の方に歩いていて、みんな気味悪がって近寄らないもんだから渋滞していたみたい」

「ウェディグドレスのカップルぅ?何かの罰ゲームなんじゃないか?」

「テレビの撮影だったんじゃないの?」

「いや、別にカメラはなかったしそんな感じじゃなかったよ。それにカップルの小さい人の方になんか見覚えがある気がするんだよね」

「また、伊賀の人なの?」

「ユカりん、本当に伊賀をどんなところだと思っているの?あんなに目立つ忍者はいないよ」

「忍者がいるってだけで、十分普通じゃないわよ」

 

だから伊賀を・・・・・(以下略)

 

「お前に伊賀以外の知り合いはいないだろう」誠が身も蓋もないことを言った。

「いや、何か学校で見たことがある気がするんだけど・・・・・」

「あんたがいるだけで十分変な学校だとは思うけど、日曜の渋谷にカップルでウェディングドレスを着て歩く生徒がいるほどじゃないでしょ」

 

 

「くしゅん」

「アキくん、どうしました?風邪でもひいたんですか?」姉が優しく尋ねた。

「いや、何か噂されているのかな」

「噂されるほど、アキくんは学校で有名なのですか?」姉の目が厳しく光った。

「そうでもないけど、明日には全国区で有名になっていると思うんだ」

 

こんな姿を学校の連中に見られたら、失踪するしかないと思う明久であった。

 


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