これが土屋家の日常   作:らじさ

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お久しぶりです。
言い訳はしません(本文に書いてあるから)

またお楽しみくだされば幸いです。


第24話

「気のせいかしら、また何だか時間が止まっていたような気がするね」陽向が言った。

「同じネタ禁止。そんなんだからマンネリだって言われるのよ」由香が遮るように言った。

「お前らは一体何の話をしているんだ?さっきから何分も経ってないと思うが。それはそれとして今度は何があったんだ。交通事故か盲腸で入院でもしたのか?」誠が答えた。

「事情がわからないとか言っているわりには適切なツッコみいれるね。マコちん」

「本当に日頃どういう外道な生き方してればそんな目にあうのかしらね」

「いや、別に事故とか病気とかだったわけじゃないんだよ」

「色々と事情に詳しそうだな、お前は。じゃ、なんで更新が遅れてたんだよ」

「いや、書いている人がたまたま手に入れた本でネット動画を落とす方法を知ったらしくてね」

「それがどうしたのよ」

「書いている人が使っていたコンピュータがネットブックというスペックが低いものだったせいで、DVD1枚焼くのに半日ほどかかるらしくてその間は他の作業ができないという止むに止まれぬ深い事情が・・・」

「そんなアホな事情で2ヶ月も時間が止まってたのか、しかしネット動画なんてそうはないだろうが」誠がイラ立ちながら言った。

「それがエロアニメ動画を落とすのに夢中になっちゃって・・・」

「ちょっと待ちなさい。その発言は色々と危ないわ」由香が慌てて発言を止めた。

「大丈夫だよ、ユカりん。落として焼くのに一生懸命になるあまりに焼いたものは1枚も見てないらしいから著作権的にも問題はないと思うよ」

「そもそも落とすことが問題なんだ。というかいい加減に定年も視野に入ってきた人間がやることじゃねだろうが」誠が呆れたように言った。

 

「でも話が再開したということは、そういうことに飽きたわけかしら」由香が尋ねた。

「いや、あまりの遅さに業を煮やしてコンピュータを買い替えたらしいよ。CPUがインテルCore i5 -4590に一気にグレードアップ。おかげで焼く時間が半日から1時間程度になって、バックグラウンドでの作業もラクラクになったおかげで更新する時間もできたという・・・・」

「そんなアホな理由でコンピュータ買い替えたと知ったら、ビル・ゲイツも釘バット振り回しそうだな」

「まあまあ、これで少しは話が進むと思えば安いもんじゃないかな」陽向がなだめるように言った。

「そんな人の書いているSSに出されているなんて知ったらうちの両親に転校させられるわよ」由香がため息をつきながら言った。

「でもネタのために個人情報を切り売りする根性は大したもんでしょ」なぜか陽向が誇らしげに言った。

「そんなアホな根性はいらん」誠が吐き捨てるように言った。

 

そして3人は連れ立って渋谷の街を歩き出した。

 

「あら、このお洋服カワイイわね」由香が洋服屋のウィンドウを見ながら言った。

「・・・・・・・・」

「ほほぅ、この文具は面白そうだな」誠も雑貨屋のディスプレイを見ながらつぶやく。

「・・・・・・・・」

「あ、この靴欲しかったの」

「ちょっ、ちょっと待って二人とも。見るだけで買わないの?」陽向が不思議そうに尋ねた。

「あなたの頭のメモリって8bitくらいしかないのかしら?私達にはお金が一人あたり400円程度しかないって設定なのに何を買えっていうのよ」

「そもそもお前の変なこだわりのせいでこうなったというのを忘れてんじゃねぇ」

 

由香と誠が同時に怒鳴った。

 

「いっ、いや。お金がないならないでお店の人におねだりすればいいんじゃ・・・痛い痛い。ユカりん、ウメボシは止めて」

「何回わたしに「合法的に」って言わせれば気が済むのよ、あんたは。恐喝や殴り込みの次は強請りをするつもりなの?」由香が両拳を陽向のコメカミにグリグリしながら言った。

「いや、強請りじゃなくて「おねだり」だって・・・本当に痛いから止めて、ユカりん」陽向が涙目で哀願した。

「あんたはやることなすこと非合法なのよ」

「しかし、こいつはよく今まで警察に捕まらずに生きてこれたな」誠が呆れたように言った。

「いや、だってさ。見ているだけだなんて、カタログ集めて喜んでいるようなもんじゃん」

「そもそもウィンドウショッピングっていうのはそういうものなの」

「そうなの?まあ、カタログ集める方に喜びを感じる人もいるみたいだしね」陽向が納得したように言った。

「いや、そもそもカタログってのは物を買う資料として集めたり眺めたりするもんで、実物よりカタログがいいなんて奴いるのか?」誠が不思議そうに言った。

 

「えっ、颯兄なんて女の子のカタログ集めるのに一生懸命だよ」

「女の子のカタログって何よ」由香が尋ねた。

「いや、水着とか裸の女の子が出ている雑誌とか何だけど」

「そりゃ、単なるエロ本じゃねぇのか?」

「だって、アンナちゃんっていうゴージャスな美人に言い寄られてるのに目もくれないでそんな本集めてるんだよ。カタログの方が好きだとしか思えないんだけど」

「そういうもんなの、竜崎」由香が誠に尋ねた。

「そこで俺に振るんじゃねぇ。あんなスットコドッコイな兄貴の考えていることなんて俺に理解できるわけないだろうが」誠が言った。

「「Z軸のある女には期待していない」とか颯兄は言っているんだけど」

「いい歳した大人のセリフじゃないわね」由香が呆れたように言った。

「というか何で兄貴がそんな本持っているなんてお前が知ってるんだ。そういうのは男にとっては最大の秘密だぞ」誠が陽向に尋ねた。

「そりゃ、アンナちゃんが定期的に捜索しているもの。スペツナズのスペックに愛ちゃん仕込みの探知技術まで会得したものだから隠すのは不可能だね」

「相変わらずロクでもないことしかしない家族だわね」

 

「この間なんて、ビニール袋に入れてトイレタンクの中に隠していたDVDが発見されて大騒ぎ」

「お前の兄貴は麻薬でも売ってるのか?」

「アンナちゃんが大激怒しちゃって、颯兄は正座で2時間アンナちゃんに説教されていたよ」

「まあ、彼氏がHなDVDなんて隠していたら怒るのは当然だとは思うけど」

「あっ、いや。怒っていたのはDVDに自分に似ている娘が一人もいないって理由だったんだけど」

「エロDVDそのものじゃなくて、そこが怒るポイントだったのか?」誠が気の毒そうに尋ねた。

「うん、そういうもの自体はアンナちゃん的には問題じゃないみたい。だから颯兄の女の子カタログはアンナちゃんの検閲を受けて見ていいと許可をもらう必要があるんだよ」

「17歳の女子高生にHな本を見ていいかの許可を得る25歳男性ってのも哀れな話だわね」

「うん、だからアンナちゃんの捜索の目をごまかそうと色々と無駄な努力しているみたいだけどね」陽向があっけらかんと言った。

「そこまでして見たいものなのかしら」

「頼めばアンナちゃんがいくらでも見せてくれるのにねぇ。だから実物よりもカタログの方が好きなんじゃないのかと」

「いや、それは絶対に違うと思うぞ」男としての同情を感じながら誠が言った。

 


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