「おや?康太生き返ったんだね」
「おや?ではない。お前はアンナになにを吹き込んでいるのだ」
「先達として、ちょっと料理のコツをね」
「その雑な知識をこれ以上広めるんじゃない」
相変わらず康太のいうことはよくわからない。
「(ねえ、陽向・・・)」
「(なにかな、ユカりん)」
「(なんで「生き返る」なんて言葉が、普通に使われているのよ)」
「(なんでって言われても、これが普通の情景としか・・・)」
「(普通の家庭じゃ「生き返る」って言葉は語彙にないのよ)」
「(そうは言われても、アンナちゃんとか愛ちゃんと一緒にいればコンビニ感覚で体験できるんだよ)」
なにやら陽向ちゃんたちは仲良さそうだ。
「早くお夕飯の準備をしないト」アンナが台所に戻ろうとした。
「ちょっと待て、その前にその手に持っている金槌を置いていけ」
「これが無いと料理ができまセン」
「それは調理器具じゃなくて、大工道具なんだよ」
「お肉を柔らかくするために必要デスね」
「お前が手に持っているのは「肉」ではなくて「元肉」だ、バカモン」
「だからアンナちゃん、桃缶に漬ければ・・・」やはりここは先輩としてアドバイスして差し上げなければならないようだ。
「・・・それを止めろと言っているんだ」
「たかが夕飯作るだけで、いつもこんなに大騒ぎしているのか、この家族は」マコちんが呆れたようにツブやいた。
「あら、そういえばこのお二人はどなたかしら?」裕ちゃんがユカりんとマコちんに目を向けた。
「あたしの友達のユカりんとマコちんだよ」陽向ちゃんが自慢げに言った。
「そう、陽向ちゃんにお友達が」裕ちゃんが感激したように言った。
「そうなんだよ。マコちんは十七代目土屋正蔵候補で、ユカりんは十九代目お華の方候補な・・・グェ」 ユカりんのチョップが脳天に決まった。
「あたしをあんたのスットコドッコイな一族に巻き込むなって言ってんのよ」
どうやらそのスットコドッコイな一族とやらに裕ちゃんが入っていることにユカりんは気が付いていないようだ。
「まあまあ、すっかり仲良くなっちゃって」裕ちゃんは更に感激したようだった。
「あれのどこを見りゃ仲良くなったように見えるんだ?」颯太君がツッコんだ。
「躊躇いなく脳天にチョップ叩き込んだぞ」陽太君も負けじと続く。
「・・・恐ろしく手慣れている」康太が批評する。
「誰もチョップを問題視しないんだね」ボクは思わずツッコんだ。
「それじゃあ二人ともお夕飯を・・・」
「ちょっと待てお袋、こっちに来てくれ」颯太君が裕ちゃんの手を引いてリビングの隅に連れていった。
「何なのよ、落ち着きのない子ね」
「そんな事はどうでもいい。ババアなに言いやが・・・グワ」裕ちゃんのアッパーが颯太君のボディに決まった。
「あら、ちょっと手が滑っちゃったわ」
「随分いいパンチがボディに決まったね」ボクは感心してつぶやいた。
「・・・兄貴も全然学ばないな」康太が冷静にツッコんだ。
「それでパンチを食らってまで何が言いたいのかしら?」
「手が滑ったんじゃねぇのか?」
「それでパンチ食らってまで何をツッコミたかったのかしら?」
「いや、そうじゃなくて、初心者のあの二人にいきなりアンナの料理を食わせるのか?」
「(いきなり愛ちゃん料理を食べさせる方が危険じゃないの)」
「(いや、それはヒ素と青酸カリの危険度を比較するようなもんで)」
「(少量ずつ食べさせれば・・・)」
なにやら小声で会話を始めた。
「おい、なんか不穏な会話が聞こえてくるんだが」
「凄いこと言っているわね」
「お母さんの心遣いだよ」
「心遣いっていうなら「食べさせない」っていう選択をしなさいよ」
ユカりんが思わずといった感じで陽向ちゃんを怒鳴りつけた。