「ともかくだ。なんで晩飯ごときで命かけなきゃならないんだ」
「だから、ユカりんとマコちんは、家族も同然だから今のうちに慣れておかないとっていうお母さんの親心だと・・・痛」
「勝手に俺たちをお前らの仲間に加えるなと言ってるだろうが」
「だから、頭殴るとバカになるんだってば」
「心配するな、お前のアホさはカンストしている」
「義母の前で殴るなんてDVだよ、DV・・・イタッ」
この三人は本当に仲がいいんだろうか?
「まあまあ、すっかり仲良くなっちゃって・・・」
「あれのどこ見りゃ仲良く見えるんだよ」
「颯太ってば、本当に無知なのね。あれは肉体言語といって古くはスパルタの公用語なのよ」
「全イタリアの人に謝れ!!」
「颯太君、それはギリシャだよ」ボクは思わずツッコんだ。
「あんたのお母さんも大概凄いこと言うわね」
「お母さんは甲賀で100年に一度の天才だと言われていた逸材だからね」
「あんた、伊賀だけでなく甲賀も敵に回すつもりなの?」
全く会話が噛み合わない両者なのであった。
「それはそうとあんたの言うことにも一理あるわね」
「それは心配いりません。ボクがサポートに入りますから」
「「「「「「えっ!!」」」」」」
なぜか全員の視線がボクに集まった。アンナちゃんも料理の腕が上達しているんだから、そんなに心配する必要ないと思うんだけど。
「あっ、愛ちゃんは映画で疲れただろうから、まだ休んでいた方がいいわ」
「そうだぞ、愛ちゃん。嫁入り前の大切な体だ、大事にせにゃならん」
「いえいえ、体調はすっかり回復しましたし、先達としてアンナちゃんに手本を示さないと」
「(・・・こいつの自信はどこから湧いてくるんだ)」
「(なんとかしろ康太。これはお前の監督不行き届きだぞ)」
「(・・・アンナを台所に侵入させた奴が何を言っている)」
「(兄たち両方の責任だよ)」
なにやら不愉快そうな会話をしているような気配を感じるが気のせいだろう。
「そう言えば、ユカりんとマコちんだったかしら」
「だから、あんたまでマコちん言うな」
「私は城ヶ崎由香、こちらは竜崎誠です」
「あら、そうだったの。林(リン)由香さん、珍(チン)誠さんっていう中国の方だとばっかり」
「なんで、中国人の姓名をわざわざ逆にするんだよ」
「やっぱり、陽向の母親だわ、この人」
「だいたい「まこと」の「と」はどこ行った、「と」は」
「とは千早の本名デース」台所からアンナちゃんの声が聞こえてきた。
「お前は黙ってろ」颯太君がツッコむ
「志ん朝の「千早ふる」で言っていましたネ」
「アンナちゃん、まだ志ん朝を教科書にしてたんだ」
ボクは止めたはずなのに。
「友達がほとんどいなかった愚女とお友達になってくださった無ぼ・・・優しい方々だとか」
「いま、「無謀」と言いかけなかったか?」
「まあ、間違ってはいないところが恐ろしいわね」
「母親としてはぜひともお二人のご好意に報いたいとかねがね思っていたの」
「「かねがね」っていう割には、さっき知ったんじゃなかったかしら?」
「そう思うんだったら、まず正しい名前を覚えてくれ」
裕ちゃんは急に何を言い出したんだろう?