「はぁ、報いる、ですか」
「そう、愚女のお友達になってくださったんだもの、親としてはぜひお二人の犠せ・・・友情に報いたいわ」
「ところどころに本音がダダ漏れしているわね」
「さすがアホの母親だな」
この母親だからあのアホが育ったんだと俺は確信した。
「だからボクとアンナちゃんの手料理で・・・・」
工藤先輩はあくまでも料理をしたいらしい。陽向によれば臨死体験カレーを作れる人らしいが、この人のせいで俺と城ヶ崎は散々迷惑をこうむってきた。いい加減に電池を抜いておいた方がいいような気がしてきた。
「あなたたちにはお礼がしたいと思っていたの。ちょうどいい機会だから外でお食事でも・・・」
「ちょっと待て、ババ・・・グワッ」
この兄貴は散々殴られているのに全く学習しないようだ。
「本当に騒がしい子ねぇ。陽向ちゃんのお友達がいらっしゃるんだから少しは静かにしなさい」
「そんなことはどうでもいい。自分だけ逃げようとしてんじゃねぇか」
「失礼な子ね。私はユカりんとマコちんにお礼がしたいと言っているだけじゃない」
「じゃあ、アンナの手料理でいいじゃねぇか」
「(ねぇ、さっきまでヒ素だなんだとか言ってなかったかしら)」
「(どうやら、俺たちを巻き込んで自分の食い分を減らす戦術に切り替えたらしい)」
「そうだよ、お母さん。今後のこともあるしユカりんやマコちんにもアンナちゃんや愛ちゃんの料理に慣れてもらわないと」
「(あいつは何を言っているんだ)」
「(何がなんでも私たちを巻き込むつもりらしいわね)」
「それもそうねぇ」母親が考え込んでしまった。
「ちょっと待て。そこは考えるところじゃねぇだろ」
「なに言っているのさ、マコちん。そんなことじゃ立派な十七代目土屋正蔵にはなれ・・・イタッ」
「だから、そんなものになるつもりはねぇ。そもそも現役のお前ですら耐えられないんだろうが」
「いや、あたしも訓練で数百の毒の耐性はついているんだけど、愛ちゃんの料理はそれを凌駕するんだよ」
「そんなものを素人に食わせようとしてんじゃねえ」
どうもこのアホは問題の本質がわかっていないようだ。
「それはそうとあなたたち愛ちゃんをガードしなくていいの?」
「あ、忘れてた」アホが工藤先輩に駆け寄って行った。
そして母親が俺たちにそっと呟いた。
「(さあ、今のうちにそっと出るわよ)」
「(帰っていいのか?)」
「(今、全員で愛ちゃんをガードしているから気を取られているわ)」
「(でも、大丈夫かしら)」
「(ゴチャゴチャ言っている時間はないわよ)」
そして俺たちはそっとリビングを抜け出して、玄関から外に出た。
「いやぁ、あなた達がいてくれて本当に助かったわ」母親は満面の笑顔で言った。
「でも陽向は大丈夫かしら」
「あら、大丈夫よ。ちょっと記憶が飛ぶだけだから」
「それはちょっとっていうレベルじゃねぇんだよ」
「燃え…闘うことも大事だが それと同等に引き際を見極めることも大事なのよ」
「なんでカイジが出てくるんだよ」
さすがあのアホの母親だ。