工藤さんは理想のカップルを目指すと宣言。困惑するムッツリーニ。
理想のカップルになるにはお手本を真似するのが一番と主張する工藤さんが
提案した理想のカップルは雄二と霧島さん。
日常生活からデートまで後をつけて観察する二人は理想のカップルになれるのか。
深紅のユウキさんのご指摘により」10話と11話が同じ話だったのを訂正しました。
ユウキさんご指摘ありがとうございました。
第1話
少女はソファに座った少年を見下ろしながら、もう20分近くも熱弁をふるっていた。
「・・・・・どうもお前の言ってることがよくわからないんだが」
「もう、頭悪いなあ康太は」
「・・・・・いや、これは頭の良し悪しとは関係ないと思う」
「じゃぁ、要約してあげるからよく聞いてね」
「・・・・・要約できるなら20分も演説する必要はなかったのでは?」
「男のくせに細かいなぁ。いい?ボクたちはもう彼氏彼女なんだよ」
「・・・・・そういうことになるんだろうな」
「なるの!自分で大久保君にあんなにハッキリと断言しておいて、今さらトボけようったってダメなんだよ」
あの西校舎裏での出来事以来、この少女はなぜか妙に強気なのである。
「・・・・・いや、トボけるつもりはないが」
「正式に彼氏彼女の関係になった以上、ボクたちは立派なカップルとしての行動を取るべきだと思うの」
「・・・・・お前はなにと戦っているんだ?」
「だけど悲しいことにボクも康太もこれまでに異性と付き合った経験が全くない初心者同士」
「・・・・・そこは認めよう」
「あ、ちなみにボクは水泳で忙しかったから男の子と付き合う時間がなかっただけで、モテなかった訳じゃないからね」
「・・・・・なぜそこを強調する?」
「だから誰かをお手本にして、見習うべきだと思うわけ。ここまではいい?」
「・・・・・まあ、そこまではいいとしよう、だが・・・」
「じゃ、何が問題なのさ」
「・・・・・だからなんで、そのお手本がよりにもよって雄二たちなんだ?」少年は頭を抱えた。
「だって代表と坂本君って理想のカップルじゃない」
「・・・・・理想のカップル?一体誰のことを言ってる」
「代表たちだってば」
二人の姿を思い出してみる。お仕置きと称して雄二の顔面に爪を喰い込ませている霧島翔子。
気絶した雄二を起こそうと力いっぱいビンタをしている霧島翔子。
クロロホルムで気絶させた雄二を引きずっていく霧島翔子
・・・・・理想のカップルどころかカップルと呼ぶのもはばかられるような光景しか思い出せない。
「・・・・・とりあえず、何であの二人を理想のカップルだと思ったんだ?」
「だって・・・・・」
少女は少し頬を赤く染めて恥ずかしそうに言った。
「代表は、凄く綺麗で頭もよくて優しいし、スタイルもよくて胸なんかFカップもあるんだよ。凄いよねFカップだよ」
少年は眉間を揉みながら言った。
「・・・・・愛子」
「うん、何?」
「・・・・・お前が霧島を好きなことはよくわかった」
「わかってくれた?」
「・・・・・だが、今言ったことは理想のカップルとは何の関係もない」
「そんなことないよ」
「・・・・・伝わってきたのは、Fカップが羨ましいという熱意だけ・・・ウゴ」
少女が思わず放った右ストレートが、少年の顔面にクリーンヒットした。