これが土屋家の日常   作:らじさ

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第3話

アンナが留学してきてから帰りはいつも三人で帰るのが習慣になっている。

 

「温泉楽しみだね、アンナちゃん」

「ハイ、日本の温泉楽しみデス

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「みんなで行けるのがいいよね」

「ハイ、就学旅行みたいデスね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「なんで康太は黙りっぱなしなのさ?服はボロボロだし」

「・・・・・胸に手を当てて考えてみろ」

「・・・・・どれどれ」

「・・・・・何でアンナの胸に手を当てているんだ?」

「 いや、どうせだったらアンナちゃんの胸の方が楽しいかなって」

「・・・・・」

「何でツッコまないの?」

「・・・・・その手のボケにツッコむのは死亡フラッグだからだ」

「やだなぁ、誰もそんなヤボなことしないって」

「・・・・・今まで、自分がやってきたことくらい覚えておけ」

 

「それはともかく、ボクたちも高二なんだから悪ふざけするのもホドホドにしなよ。制服がボロボロだよ」

「・・・・・言っておくが100%お前の責任だ」

「ボクが何したというのさ」

「朝、ワザワザFクラスに来て、お泊り温泉OKと叫んだろうが。アンナに言えば済むことだろうに」

「アンナちゃんはまだ日本語が苦手だから、間違いがないように直接伝えに行ったの」

「・・・・・今までの経験では、お前を通した情報の方が高確率でネジ曲がるんだが」

「何を言うかなぁ。日本語のネイティブ・スピーカーのボクにそんなことがあるわけないじゃない」

「・・・・・日本語というより思考回路の問題だと思うんだが。常人ではお前の発想についていけん」

「まあ、そういう些細な問題はおいておいて、温泉かぁ。楽しみだなぁ」

「ですネェ」

「・・・・・人が死にかけたのを些細な問題で片付けるな」

 

・・・・・・・回想終了

 

「・・・・・という騒ぎが一週間前にあったわけだが」

「康太、いきなり誰に説明しているの?」

「いろいろと事情というのがあるのだ」

「ふーん、変なの」

少年は少女の格好を上から下まで眺めていった。

 

「・・・・・ところでお前の格好は何だ?」

「え?普通の格好じゃん。ポロシャツにホットパンツに帽子」

「・・・・・いや、その背中に背負っているもののことを言っているんだが」

「あ、これ?見て分からないかなぁリュックサックだよ。見つけるのに苦労したんだから」

「・・・・・なんでリュックサックなのだ?」

 

少女をリュックを下ろして開けた。

「ほら、ポッキーでしょ。チョコレートにクッキー。ボクの好きな草餅にみんなで食べれるようにポテチ、おやつに入らないからバナナと・・・・」

「・・・・・どれだけ浮かれているんだお前は」

「そんなことないよ普通だよ」

「・・・・・夕べは寝れなかっただろう」

「・・・・・そっ、そんなことあるわけないじゃん。大人だよボクは」

「・・・・・目が充血して、目の下にクマができてるぞ」

「・・・・・ひっ久しぶりの旅行なんだから仕方ないんだもん」

「そうだぞ康太、そういうことを笑っちゃいかんな」と颯太が加勢したが目の下にはクッキリとクマがあった。

「・・・・・こいつもか」

 

「ねぇ、由美ちゃん。温泉楽しみだね」

「はい、私温泉旅館って初めてで」

「えぇ、そうなの?お嬢様だからしょっちゅう旅行で行っているかと思った」

「はい、別荘に温泉が出るもんですから、今まで旅館というのに泊まる機会がなくて」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

「今、何か恐ろしい言葉を聞いた気がするぞ」

「温泉が出る別荘ってどんなんだよ」

 

その声が聞こえたのか、由美子が慌てて打ち消した。

「あ、でも温泉がでる別荘は一つなんですよ」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

「温泉が出るのは一つってことは、いくつか別荘があるのか?」

「ねっねぇ、由美ちゃんちって別荘いくつあるの?」

「そんなに大したことないんですよ。北海道と沖縄と軽井沢と草津だから4つです」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

「おい、陽太。お前このまま付き合ってていいのか?所属の黒服軍団に消されたりするんじゃないのか?」

「そんな気がしてきた」

「・・・・・そろそろ時間だ」

 

時計を見ると9時になろうとしていた。

よし、車に乗れ」と颯太が言った。1台では乗り切れないので、颯太と陽太が運転して車は2台。

陽太の車には、陽太と由美子と康太と愛子が乗り込み、颯太の車には颯太とアンナが乗り込んだ。

 

「おかしいなあ。兄貴の車何揉めてんだ?全然動かないぞ」

「ボク行って様子みてきます」少女が言った。

 

「だから何でナチュラルにお前が俺の車の助手席に当然の顔をして座っているんだ?」

「助手席は妻の席だカラ、私が座るのは当然デス」

「妻の意味を辞書で調べろと何ども言っているだろうが」

「あの~、颯太君。何か問題ありましたか?」

「おお、愛ちゃん。いいところに来た。何でこのロシア娘が俺の車に乗っているのかということで揉めているんだ」

 

「何でって夫婦は同じ車に乗るのが普通なんじゃ」

「夫婦じゃないというのに」

「わかりました。じゃこの車にはボクが乗ります。アンナちゃんは陽太君の車に乗って」

「デモ・・・・・」

「このままじゃ出発できないから、悪いけどそうしてくれない?」

「・・・・・ハイ、わかりまシタ」

「じゃ、颯太君。この車にはボクが乗るから。お昼はおにぎり作ってきたから、運転しながらでも食べれるよ」

「シートベルトはしっかり締めたまえ、アンナ君。大事な体だからな。じゃ、出発するから愛ちゃんは陽太の車に大至急戻って」

「???ハア、いいですけど。じゃ、これ颯太君たちの分のおにぎりです」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

大騒ぎで何とか出発することができた

 


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