「で、結局何で仲良くなったんですか」
「ある時、颯太と隣の席になってね。テストの時に油汗流しながらウンウンと白紙の解答用紙にらんでいたから、ちょっとした恩返しのつもりで先生の隙を見て私の回答用紙と取り替えてやったの」
「へえ」
「それ以来、「心の友」呼ばわりされて芋づる式に5バカとツルむようになったわけ」
「随分現金ですね。まあそんな点数取ったことないだろうから喜ぶ気持ちも分かるけど」
「あら、愛ちゃん。あいつらバカだけど頭は悪くないのよ」
「どういう意味ですか」
「学年のアイドル的な存在の翠ちゃんって女の子がいてね。その子に告白する権利をかけて5人で勝負したことがあったのよ」
「ふむふむ」
「いつもは殴り合いで決着付ける連中だけど、告白前に顔をハラしたくないということでテストの順位で決着を付けることにしたの」
「それは無謀では・・・・・」
「どうなったと思う?」
「いや、それなりの点数で決着ついたじゃないんですか?」
「ふふふ、あたしはいつもの通りに1位だったけど、2位から6位まで5馬鹿が独占したわ。そしたらね・・・・・」
「お母さんたち喜んだでしょうねえ」
「まず学校中がパニックになったわね。それからお母様方も呼ばれて3日間職員室に監禁されてカンニングの取り調べよ」
「それはお母さんたちも怒ったでしょうね。自分の息子がテストでいい点取ったのにカンニングを疑われたんじゃ」
「ところが一番厳しくカンニングを追求したのがお母様方だったらしいわ」
「えっ?」
「いや、お母さん落ち着いてください。彼らもやる気になればできる子なんですから・・・」
「いいえ、先生は黙ってて下さい。この連中のことは私たちが一番よく知ってます。こんな点数取れるタマじゃありません」
「そりゃそうかも知れませんが、なぜか今回は一生懸命勉強してたようですし・・・」
ボカ、ボカ、バカ、ボカ、ボカと派手な音が5連発した。
「おっお母さん、暴力はいけません」
「あら、先生ってば暴力だなんて大げさなホホホホ。普段は木刀で行ってますのよ。手が痛いから。 何しろこの5馬鹿は小さい頃から殴られ慣れしてますから」
「そうですよ先生。私たちに任せてもらえれば、30分もあれば連中が赤穂浪士に武器を渡していたことくらい白状させてみせますわ」
「天野屋利兵衛の石抱きじゃないんですから・・・・・」
「・・・・・ということがあってね」
「どれだけ信用なかったんですかあの5人は?最後のがよくわからなかったけど」
「そこは書いてる人間も心配なとこよね」
「・・・・・もっと意味わかんない」
「それで結局どうなったの?」
「3日目には先生方ですら職員室には近づかなくなって、廊下中に5人の悲鳴が響いていたわね」
「頑張って勉強して上位になった結果がそれじゃ報われないね」
「それまで毎回最下位を争っていた5人がいきなり2~6位じゃ、誰だって怪しいと思うわね」
「・・・・・俺でもカンニングを疑う」
「まあ、でもあたしも見かねて助けに入ったのよ」
「えっ?結城君っていうと入学以来ずっと学年1番で全国模試でもトップクラスっていう結城君?」
「はっはい」
「女の子にモテモテで、彼女をとっかえひっかえしているっていうあの結城君?」
「えーっと・・・」
「可愛い顔しているくせに腹黒いという評判の結城君なの?」
「・・・・・すいません、お母様方は息子さん達からボクのことどんな風に聞いてらっしゃるんですか?」
「今言った通りよ。頭と顔はバツグンにいいけど女たらしの腹黒で、モテるくせに女の一人も紹介しない友達がいのない奴だって」
「友達?友達だって言ったんですか」
「ええ、そうだけど。それより結城というと、結城総合病院と何かご関係があるのかしら」
「はい、祖父が理事長で父が院長をしています」
「そうなの、そんなご立派なお家だとは知らなかったわ。でも結城君、私たちが言うのもなんだけど、こんなバカな連中と付き合ってるとロクなことないわよ。なんか弱み握られているなら、二度とあなたに近づかないように骨の2~3本も叩き折っておくから心配しなくて大丈夫よ」
「よその子供の方が自分の息子の骨よりも大事なんだね」
「・・・・・まあ、骨ならくっ付けば直るくらいの気持ちだろう」
「それよりYukiさん。そんなにモテるんだったら彼女の友達くらい紹介してあげればいいのに」
「あたしが何人女の子を紹介したと思ってるのよ」Yukiが思わず大声を出した。
「そっそうだったんですか・・・・・」
「それをあのバカ共、興奮しすぎてデートの日に高熱出して寝込むわ、デートで緊張して腹具合がおかしくなって5分置きにトイレに駆け込むわ。緊張のあまり最初から最後まで一言も喋らないわ。それでウマく行かなかったって言ってあたしに文句言われたんじゃ、あたしだって頭に来るわよね。だから、「今後一切お前たちには女の子を紹介しない」って宣言してやったわ」