立花響との再会からしばらく、戸山香澄は思い悩んでいた
それは自分が高校に入ってからの友人である市ヶ谷有咲のことである。林間学校において魔化魍の巣に捕らえられていた有咲や一部の生徒達は衰弱し、今も入院を続けている。
有咲に対して自分の正体を含めた何もかもを話すのを悩んでいた。いや、もちろん孟司の運営する病院で今回の件についての詳細、それについての守秘義務などについての説明が行われるのだが、香澄の口から自分の鬼のことについて話すのはなんだか気が引けるのだ。自分の正体を告げることで嫌われてしまうんじゃないかとも思ってしまった。今までの人生において、大半の友人が孟司の関係者であり、何年も鬼になるべく鍛錬を続けてきたのだ。父が死んでからは一時期離れていたけど、今となってはもう父の名を轟鬼を継ぐことに迷いはない。今なら、再び羽丘に戻るのもいいかもしれないなんて思ってしまう。
そんな思いにふけりながら、帰りの支度をりみりん、西鬼さん、いや、ゆりさんの妹でサポーターをしている子と共に今日はcircleの方に呼ばれている為、荷物をまとめていると
「香澄!」
「沙綾どうしたの?」
「うん、ちょっとこの前のことで響さんに用事があって」
「響さんに?」
「そうなの、ちょっと色々とね」
「わかったよ。ごめんね。りみりん、先に行っててくれる」
「わかったよ。香澄ちゃんそれじゃあ、先に行ってるね」とりみは荷物を持って教室を後にした。
香澄はギターケースを背負い、沙綾にヘルメットを渡す。
そして駐輪場の香澄のバイクに沙綾と自分のカバンをつけて沙綾にギターケースを背負ってもらって、また先日のようにタンデムでcircleに向かう。
circleの入り口に入ると受付にいたまりなさんに声をかける。
「あ、香澄ちゃん、沙綾ちゃんもいらっしゃい」
「こんにちは、今日、りみりんと呼ばれてたんですけど」
「うん、りみちゃんならミーティングに皆といるからね。それと沙綾はなんのようかな」
「この前の話の返事を響さんにお伝えしようと思って」
「ん、ああ、あの時のね。あ、でもごめんね。今、響ちょっと出張で出てるの」
「出張?」
「うん、響ちゃん、鬼やここの経営だけじゃなくて色々と他にも仕事があるの、今日はそっちの方に行ってて顔出せないんだ」
「そうですか。すいません。いきなり確認もしないで」
「ううん、いいの、いいの。と、これから帰ってお店の留守番? 、なんなら香澄ちゃん呼んで送ってもらうように言うけど?」
「あ、大丈夫です。また、改めて顔を出しますね」
「うん、響ちゃんには私からも言っておくから、そう言えば、お母さんの具合どう? 、あれから」
「はい、孟司の病院に変わってから、ずいぶんと調子が良くなってて」
「そっか、なら病院を紹介したこっちとしてもよかったよ」
「はい、ありがとうございます。それじゃあまたきますね」
「うん、気をつけてね」と沙綾はcircleを後にして自宅のパン屋へと足をむけるのだった。