天才と魔法科 ―相性悪そうな組み合わせほど実はベストマッチが多い件― 作:ジューク
今回はお待ちカーネルサンダースなバトル回!
久々の達也龍兎のタッグバトルです!
ではでは、どうぞ!!
「この辺りか………」
龍兎は現在都内の公園に来ていた。その目的は無論吸血鬼、及び鬼の少女を倒すためである。前回の戦闘で打算的な手段はあまり効果が無いと理解した龍兎は衛星ゼアと自身の頭脳をフル活用して、今日この辺りで鬼の少女――リーナと怪人が出くわす可能性が極めて高いことを突き止めた。そのため、今こうして張り込みしているのだ。
衛星ゼアの計算によると、あと五分もあれば戦闘が始まる。取り敢えず近くの茂みの影で龍兎はアイテムの最終チェックをしていた。
「対ムスペルスヘイム用に用意したプログライズキーもある。よほどのアクシデントがなければリーナと吸血鬼、双方を一網打尽にできるはずだ。さすがにこんな一大事に一海たちを巻き込むわけにはいかないってのが痛いけどね」
〇一ビルダーズは、全員が数字付きですらない一般人――腕はあるが色々癖が強いメンバー――で構成されている。頑丈なメンバーも多いが、危険な戦いに巻き込むことはできないというのが〇一ビルダーズの総主任でもある龍兎の本心だった。
そうして点検を終えて茂みから顔を出した時、龍兎はあり得ない人物と目があった。
「「あ」」
周りをキョロキョロを見渡していた達也と、茂みから顔を出した龍兎の目線がバッチリ重なったのだ。
「………龍兎。なぜお前がここにいる?」
「………衛星ゼアの計算で、この辺りに吸血鬼とリーナが来る可能性が高いって出たから。そっちはもしかして藤林少尉?」
「ああ」
「なら、ここは共同戦線ということで」
「今回に関しては人数が多いに越したことはないからな。こちらからも頼む」
ここに、呂剛虎以来の最強タッグが結成されることとなったのである。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
そうしておよそ五分後、龍兎と達也は現在リーナと対峙していた。戦闘が開始されてから少し経ち、達也が事前に用意していた銃で吸血鬼を撃ち抜いた。するとリーナは二人に気づき、吸血鬼そっちのけで二人に攻撃を仕掛けてきたのだ。二人は戦いながら「自分たちは敵ではない」と説得してきたが、結局吸血鬼にはまんまと逃げられてしまったのだ。その後達也と龍兎はリーナの『仮装行列』を攻略、現在は仮面だけを着けたリーナと対峙している、というのが現状だ。
「………人の話は聞いて欲しかったんだけどね。吸血鬼を倒すって目的は一致している。わざわざ俺たちと戦うメリットが無いって知ってた上にこっちの説得を無視して戦う意図が正直読めないんだけど、そこんとこはどうなの?リーナ…いや、USNA軍魔法師部隊『スターズ』の総隊長、アンジー・シリウス」
「……やはり気づかれていましたか。隠せていたつもりだったんですが、まぁ仕方ないですね。私の正体を知られたからには、消すしかありません」
「他国で不法行為を好きなだけしておいて都合が悪くなったら消すのがUSNA軍のやり口なの?随分と身勝手な話だね。そっちのミスで俺たちが死ぬだなんてとばっちりもいいとこだ。だから、一言だけ言わせてもらう」
「!?」
「殺せるんなら殺してみろよ!」
龍兎がプログライズキーを認証させると、上空から氷の塊が龍兎たちとリーナを隔てるように落下し、地面に当たると同時に割れて中から大きな白熊のようなライダモデルが現れた。ライダモデルはまるで産声のように大きく鳴くと、そのまま龍兎を顔を向ける。
そのままライダモデルが覆い被さるように龍兎に抱きつくと、ライダモデルは分解されて龍兎のアーマーとなった。その龍兎の体からはフシューッと蒸気のように冬の時期が更に寒くなるような冷気を出している。こうして龍兎は『仮面ライダーゼロワン:フリージングベアー』に変身した。
「悪いがリーナ、命が懸かった状況で手加減するほど俺たちは甘くないぞ」
達也はポケットから出したスパイダーフルボトルと冷蔵庫フルボトルをビルドドライバーに装填してボルテックレバーを回し、スナップライドビルダーを顕現して『仮面ライダービルド:スパイダークーラーフォーム』に変身した。
「…アナタたちがそう来るなら、彼のようにまた破壊するまでよ!」
そう言って、リーナは二人にCADを向ける。使う魔法はおそらく、レオのアサルトウルフを破壊した『ムスペルスヘイム』で間違いない。
だが、彼女はRシステムをまだ甘く見ていた。
「………え?」
魔法を発動した直後、リーナは絶句した。
「はああああ………!!!」
「……………ッ!!」
龍兎は両の掌から、達也は左肩からそれぞれ強力な冷気を放って空気を冷却することで、リーナの『ムスペルスヘイム』を完全に相殺していた。
「「だぁぁぁッ!!!」」
そして一際大きく力を込め、熱気を完全に押し返す。たまらずリーナは両腕で顔を守るが、その隙を突いて龍兎と達也は接近戦を仕掛けてきた。
「悪いなリーナ!俺は今最っ高にキレてるんだ!お前たちみたいな奴らにRシステムは渡さない!人々を、俺の友達を傷つける奴は絶対許さない!俺たちの夢の結晶を悪用させたりはしない!!」
「俺は深雪を守る。俺たちに降りかかる火の粉が深雪にもかかるのなら、俺は全力で振り払う!」
「………!!」
達也には唯一の感情しかない。それは『深雪に対する兄妹の感情』である。それは、彼らの兄妹愛が成した一つの奇跡ともいえるもの。そして、唯一達也の心を滾らせるもの。今、彼の心を縛る錠は解かれている。故に、普段からは想像もできない彼の意志の強さにリーナはたじろぐ。そしてそれが更に自身を劣勢へと落としていった。
「お前を超えられるのは、俺たちだ!!!」
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パ 〡
ク ジ
ト ン
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「アアァァアァァアアァッ!!??」
龍兎が冷気を纏ったその熊のような腕をラリアットの要領で振るって飛ばした冷気の衝撃波を喰らい、リーナは胸部から腹部にかけて凍結されながら吹き飛ばされ、地面に接触する寸前で今度は腰から下が氷漬けにされた。そんな立て続けに起きた出来事に戸惑うリーナの両腕に、突然冷気を纏った粘着質の糸が絡み付いた。糸の延びる方を見ると、右腕に絡み付いた糸を左手で、左腕に絡み付いた糸を右手で握り、軽くジャンプする達也がいた。達也はそのままギリリと糸を軋ませ、次の瞬間リーナに飛ばした糸ごと体を捻り、糸が縮む勢いを利用してドリルのように回転しながらリーナに足を向ける。そのまま冷蔵庫型のエネルギーを纏った両足ドロップキックをリーナは受け身も取れずに凍結した腹部に喰らった。リーナはそのまま腹部の氷をバキバキと砕かれながら今度こそ地面を滑走し、十数メートル先まで吹き飛ばされた。リーナが寒さと痛みを堪えつつ、震えながらも起き上がると、ちょうど変身を解除した二人がゆっくりと歩み寄って来ていた。そのまま達也はリーナの仮面に手を伸ばす。その意味を理解したリーナは叫びながら抵抗した。
「ぐっ…止めなさいタツヤ!それをすれば、後悔することになるわよ!」
「生憎、後悔なら既にしている」
「そうこうしてる間に吸血鬼にも逃げられてる。それに、どうせ君たちは俺たちをつけ狙うことに変わりは無いだろうからね」
正論を言う二人に対し、歯軋りをしたリーナは最終手段に出た。
「誰か、誰か助けてっ!」
それは強姦魔から助けを求める少女の叫びという表現が相応しかった。迫真の演技を白けた目で見詰める強姦魔コンビこと、達也と龍兎。だが、まるでリーナの悲鳴を合図として待っていたかのように駆けつけてくる足音が聞こえた。二人が目を向けるとそちらには桜の紋所に付けた四人の男性が近づいて来ていた。
「両手を上げて後ろを向け!」
正面から駆け寄ってきた警官が拳銃を突きつけながら叫ぶが、達也はリーナの後に回り、そのまま男へ向けて突き飛ばした。
「きゃっ!?」
悲鳴を上げて男の胸に飛び込むリーナを無視し、達也リーナの頭上を飛び越え、その男の肩に着地して蹴り飛ばすようなキックで男の顔を打ち抜いた。
「……本物の警官だったらどうするつもりよ」
「そろそろ茶番は止めてもらいたい、アンジー・シリウス」
「あそこまで派手にやったんだ。本物ならあの戦闘の途中にくるもんだよ。こんな都合の良いタイミングで来る警官なんて信用できるもんか」
信じられないという口調で言ったリーナに対し、達也と龍兎は強い意思を以て答えた。その返答に空気が音を立てて固まったような幻覚さえ感じてしまう。
「君に協力してる以上、本物だろうと偽物だろうと同じ事。百年前ならいざ知らず、現代のこの国の刑法において外患誘致罪は武力行使が実現しなくても成立する。警官の扮装程度で怖気づくと思ってるなら大違いだ。我々日本の魔法師の覚悟を甘く見ないでもらおうか」
「まぁ、ブランシュとかその他諸々と戦り合った俺たちだからこそかもだけどね」
蹴り倒された一人を除く三人の偽警官が、リーナの顔を――彼らの総隊長アンジェリーナ・シリウスの表情を窺っている。それを横目で見たリーナは溜め息を吐くと二人に向かい膝を軽く折って丁寧に一礼した。
「これは失礼致しました。確かに見くびっていましたね。聞くと見るとでは大違いです。同じ魔法師として謝罪します。お察しの通り、ワタシはUSNA軍統合参謀本部直属魔法師部隊『スターズ』総隊長、アンジェリーナ・シリウス少佐。アンジー・シリウスというのは先ほどの変装時に使う名前なので、今まで通りリーナと呼んでください。さて、ワタシの素顔と正体を知った以上、タツヤ、リュウト。スターズは貴方たちを…いえ、リュウトは捕縛対象ですのでタツヤを抹殺しなければなりません。仮面のままであれば幾らでも誤魔化しようはあったのに、残念です」
「後悔する、というのはそう言う意味だったか」
「ええ。せめて騙されて捕まってくれれば、殺さずに済ます事も出来たのですが」
「それは悪かったな。せっかくの心遣いを無駄にしてしまって」
「いえ、貴方を抹殺するというのはワタシたちの身勝手な都合によるものですから、謝る必要はありません。抵抗しても良いですよ」
偽警官の一人から渡されたコンバットナイフを右手に、中型拳銃を左手に持ち、リーナは二人を睨み付けたが、龍兎は未だスーツで素顔が見えないままリーナに問いかけた。
「………俺を殺さないってのはどういう意味だ?まさかとは思うが、俺を人質にRシステムをUSNAで独占させる、とでも?」
「………流石は副社長、と言っておきます。貴方の推察はほぼ正解です。厳密には貴方を人質にしてRインテリジェンスに『DORATTO』の正体の情報、できれば身柄を渡してもらう予定です」
「……そう。なら悪いけど、こういう手段で対抗するまでだよ」
『ああ"ぁ"ぁあ”あ"ぁぁ"ぁ"!!!??』
龍兎がそう呟いた瞬間、四人の警官――に変装したスターズの兵士が苦悶の声を上げて崩れ落ちた。
「!?何をしたの!!?」
「さぁ、なんだろうね」
龍兎は仮面の内側でほくそ笑んだ。
ここで少しおさらいしておこう。
龍兎の特典は、仮面ライダーの『世界』の力。
つまり龍兎はライダーの力だけではなく、フィリップの『地球の本棚』、衛星ゼアの『ラーニング』など、作品に登場する者(物)の力も使える。
今使ったのは『仮面ライダービルド』に出るラスボス『エボルト』が使う遺伝子操作の応用だ。
人が体を動かすには脳からの命令を伝える運動神経が必要だ。では、その周囲の細胞を急速に増殖させて無理矢理それを断ち切ったとしたら?
答えは簡単。想像を絶する痛みと、神経を強制的に断ち切られたことにより命令が届かなくなった四肢の影響で倒れる結果となった。
途中からの過程や結果から見れば、達也が使う『分解』による意識の断絶と同じ原理である。
何はともあれ、これで状況は元通り。いや、むしろ悪化すらしてきた。なぜなら――
「貴方の好きにはさせないわよ、リーナ」
――氷河の女王が降臨したからだ。
さてさて、いかがでしたか?
必殺技に四苦八苦してたら更新遅れましたすまん。
さて次回、フリーズドラゴン君の初陣!
今まで使えずごめんねホント。
お楽しみに!
ではでは、CHAO~♪
11月1日で一周年を迎えるのですが、どれがいいですか?
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新しい小説投稿
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他の方とのコラボ(したい人はDMを)
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特にしなくていい