逃がさないスズカと逃げるマヤと逃げられないトレーナー   作:エアジャガーる

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※タイトルがなんのことかわかる人は間違いなくある界隈の老人会のおじいちゃんです。


デートバカンス・セブンスウォー

「あーっ!スズカちゃんだ!やっほー!」

 

「あら、マヤちゃん……どうしたの?」

 

授業を終えた頃、カフェテリアで休憩しているサイレンススズカのところに、私服姿のマヤノトップガンが駆け寄ってきた。

 

「これからトレーナーちゃんとデートに行くの!」

 

「え、デート?」

 

「うんっ!」

 

マヤノトップガンの言い放ったことに驚いた。

デート、ということは当然、そういう仲ということで、マヤノトップガンは中等部の女の子で、トレセン学園の生徒な訳で、つまり、つまり、トレーナーとマヤノトップガンは……

 

「えっと……大丈夫なの……?」

 

「大丈夫って?」

 

「あの……そんな……大きな声で……デート……って……」

 

サイレンススズカの声がどんどん小さくなる。

サイレンススズカ改めサイレントスズカである。

 

「えー、トレーナーちゃんとのデートだったらいいよ、ってみんな言うもん。1人で遊びに行っちゃダメって」

 

「……ああ、そういう」

 

なんてことはない、引率扱いだ。

それでも、普通は自分のチームのトレーナーだろうに、彼に頼むのか……

 

「トレーナーちゃんはね!いつでもデートに付き合ってくれるの!トレーナーちゃんがどうしても用事でダメな時はトレーナーちゃんをお手伝いしてるの!それにトレーナーちゃんはマヤのおしゃれもちゃんと見てくれるの!」

 

「そう、それなら……あっ……」

 

明日の模擬レースに備えて、少し走ろうと思っていたので、トレーナーをマヤに連れて行かれるのは少し、困る。

1人で気ままに走るのも好きだが、勝手に走るのはトレーナーが嫌がる気がしたのだ。

 

「んー、スズカちゃんも一緒に行く?」

 

「え、私も?んぅ……」

 

困った。

マヤノトップガンにおでかけを誘われたのに断るのも、しかし、少しくらいは走りたいし……

サイレンススズカは考え込んでしまう。

 

「スズカちゃん、何かしたいことがあるの?」

 

「えっと……走りたいの。少しでいいから」

 

「じゃあ、一緒にトレーナーちゃんのところに行って、スズカちゃんが走った後でデートに行こっ!」

 

どちらかではなく、両方行くとは思わなかった。

でも、それだとおでかけの時間が減ってしまう。

 

「スズカちゃん、これじゃダメ?」

 

「だって、マヤちゃんのおでかけの時間が……」

 

「いいんだよ!マヤはスズカちゃんとトレーナーちゃんの三人でおでかけしたいの!」

 

じゃあ行こっ!とマヤノトップガンに手を握られ、引っ張られて走る。

こんなところをエアグルーヴに見られたら、また小言を言われてしま

 

「あ、こら!スズカと……マヤノトップガン!廊下を全力で走るな!」

 

「全力じゃないもーんっ!」

 

「そういうことでは、ってそのまま走って逃げるな!」

 

「マヤちゃん!そのまま逃げるのは」

 

「えっへへ、マヤは追い付かれないもん!」

 

そのままエアグルーヴを振り切るまで廊下をマヤノトップガンに引っ張られて走らされたサイレンススズカは、トレーナーがいるだろうチームルームまで走らされた。

 

「はぁ……エアグルーヴを振りきっちゃった……どうしよう……」

 

「えへへ、マヤを捕まえられるハズがないもん。さ、入ろ入ろ!トレーナーちゃーんっ!」

 

ガラッとマヤノトップガンが扉を開けると、中でトレーナーとたづなさんが向き合って座っていた。

 

「お、マヤ。どうした?今日は一段とかわいくおめかししてるな」

 

何かファイルを開いていたが、トレーナーはマヤと話しながらファイルを閉じて自分のデスクに戻したあと、駆け寄ってきたマヤノトップガンを抱き上げて持ち上げて高い高いしたあと、手慣れたように椅子に座ってマヤノトップガンを膝に座らせる。

 

「えへへ、トレーナーちゃん!みんなでデートしよ!」

 

「……ああ、いいぞ」

 

トレーナーは肩を竦めたあと、マヤノトップガンの頭を撫でながら僅かに困り顔で了承した。

 

「やったー!でもね、その前にスズカちゃんが少し走りたいんだって!」

 

「今日の今から……か。模擬レースは明日だから、あまり走り込むのはいいとは思わないが……走らせないのもダメそうか。サイレンススズカ、芝1200を流すくらいでもいいか?」

 

「はい」

 

「ならそれで。僕はマヤと君の外出許可を通してくるから、着替えてグラウンドで待ってなさい。たづなさん、では僕は先に」

 

「ええ、では私はあとで」

 

マヤノトップガンを膝から降ろして、立ち上がってトレーナーは部屋から出ていく。

トレーナーとたづなさんが一瞬、互いにじっと見た気がする。

マヤノトップガンはそれになんだかモヤモヤした気分になった。

 

「ねぇ、たづなさん。トレーナーちゃんに何かあったの?」

 

「え、えっと……なんでそう思ったの?」

 

「だって、たづなさんは忙しいのにここにずっといるのも変だし、トレーナーちゃんとたづなさんでなんだか見合ってたし、部屋に入る時も何か話してたし」

 

「ああ、それは新しくこの長テーブルを届けに来たのと、他に何か足りないものとか古いものがないか、確認していたんですよ」

 

たづなさんの話を、マヤノトップガンは顔をじっと見ながら聞いている。

明らかに疑っている顔だ。

 

「むーっ!なんか隠してるっ!トレーナーちゃんと何を話してたのっ!?」

 

「最近のサイレンススズカさんはよく走れてますね、とかそういうお話も話してました」

 

「私、ですか?」

 

突然話題に出された体操服姿のサイレンススズカは、脱いだ制服を畳んで体操服を入れていた鞄にしまっていた。

たづなさんから見ても、メイクデビューどころか既にクラシックでも不足ない綺麗で仕上がった身体だと思う。

本当に、走り方の問題だけで燻っていたのだろうか?と疑ってしまうほどに。

 

「はい、トレーナーさんから何か教わったこととかありますか?」

 

「んー……そうですね……好きに走れ、と言われました。あと遠回しでしたけど、最終コーナーは走りやすいところを抜けろ、と……」

 

「そうですか……フユミトレーナーのことは、どうですか?」

 

たづなさんは、せっかくだからいろいろとサイレンススズカから聞き出すことにした。

去り際のフユミトレーナーの目は明らかに何も言うなと睨んでいたが、逆に訊くのは咎めてこなかったので、この機会を有意義に使わせてもらおう。

 

「どう、と言われると……言うことのほとんどが遠回しで、何が本音なのかわからないですけど……嘘は言われたことはないと思います。黙ってるだろうことはたぶん、いっぱいあると思いますけど……」

 

少し考えて、サイレンススズカは穏やかに微笑む。

この微笑みだけでも、たづなさんにはこれから、どうするのが正しいのか確信出来る。

 

「トレーナーさんが私に好きに走れと言ったのは、今にして思えば、私の走りを信じてくれているからだと思います」




私は乳中海が好きです!何故なら波が穏やかで走りやすいからです!報告は以上です!えっへん!(残りはヴェネトとトリチェリだけになりました)
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