逃がさないスズカと逃げるマヤと逃げられないトレーナー   作:エアジャガーる

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天を廻りて戻り来よ

「トレーナーさんは、勝手です!」

 

サイレンススズカは叫んだ。

いつも遠回しな表現で、どこか胡散臭い笑顔で、試すような物言いで、優しくなくて優しいこのトレーナーに、サイレンススズカはしがみついた。

 

「レースを走ったあと、トレーナーさんを探しました。ゴール付近にはいなくて、最終コーナー出口に人影を見つけて、そこにいたのはハルヤマトレーナーで、カバンに手紙を見つけて……読んで……私はっ!」

 

「僕に少し寄り道をして、君は本来の道に戻る。それでいい、それがいいんだ」

 

「嫌です!」

 

「ワガママを言うものじゃ」

 

「ワガママじゃありません!」

 

もう嫌だ。

あんなに、寒いのは。

あんなに、苦しいのは。

 

「トレーナーさんがいなかった……それだけで、私は……苦しかった……探して、追い掛けて……足はまだガタガタしてて……立ってるのもつらくて……トレーナーさんが一歩でも下がったら、私はもう……立てません……」

 

視界が、暗くなる。

目を閉じてしまえば、関係ない。

彼がここにいることを、実感出来ればそれでいい。

背中に彼の手を感じた。

 

「お願いです……ここに、いてください……でないと、私は……」

 

「……レースのあとに、無茶をするな……」

 

ちゃんと、抱き締められてる?

あやされてるように、頭をぽんぽんと撫でられ、背中を擦られ、身体の強ばりが解れていく。

やっと、ゴールに辿り着いた気がした。

待っていた暖かさが、ようやく……

 

 

 

 

「すみませんでした」

 

抱き締めていたサイレンススズカが身動ぎ一つしなくなり、おかしいなと顔を見たら気を失うように眠っていて、額を触ると微熱もあったので、ハルヤマトレーナーに頼んで車で学園まで送ってもらい、サイレンススズカを保健室のベッドで寝かせて、ようやく一段落したところで、保健室の外でフユミは頭を下げた。

 

「特赦っ!君もサイレンススズカも帰ってきたのでヨシッ!」

 

「おかえりなさい、フユミトレーナーさん」

 

理事長とたづなさんはホッとしたように胸を撫で下ろした。

そして隣には、明らかに不機嫌なダイワスカーレットがいた。

 

「あの、フユミトレーナー。1人のウマ娘として言わせてほしいの。スズカ先輩はたぶん、フユミトレーナーに喜んでほしかったんだと思います。それをちゃんと褒めないどころか、遺書みたいな手紙を遺して去るなんて……これが私だったら、って思うだけで……一番の裏切りです。スズカ先輩に、ちゃんと謝ってあげてほしいです」

 

ダイワスカーレットの言葉は、至極真っ当だ。

反論の余地がない。

むしろ、言葉を選んで丁寧に話したのだと思う。

 

「ああ、そうさせてもらう。サイレンススズカはいい後輩を持っているな」

 

「スズカ」

 

「え」

 

「スズカって呼んであげてください。たぶん、今のスズカ先輩が一番喜ぶのはそれです。それともマヤちゃんみたいに小さい子にしか呼ばないんですか?」

 

「あー!スカちゃんひどーい!マヤは子供じゃないもん!」

 

「スカちゃんって何よ。もっとなんかいい呼び方しなさいよ」

 

子供扱いに怒ったマヤノトップガンに絡まれて、ダイワスカーレットとマヤノトップガンが火花を散らしている。

この二人が同じ中等部という事実から目を背けたい。

 

「まぁでも……ここまで来て、今更スズカを放り出さないだろ?」

 

「放り出したのは貴方です。ハルヤマ」

 

「手厳しい。だが、お前も一度は拾ったんだ。スズカだって、俺を見て露骨にガッカリするくらいにはお前を探していたんだ。誰がトレーナーに適任かは、もうわかりきってるだろ」

 

「まだ、本気でそう思ってます?サイレンススズカを泣かせた。挙げ句に消耗させて保健室で寝かせている、そんな僕ですよ?」

 

「最初にスズカを泣かせたのは実質、俺だ。スズカのため、って言いながらスズカに無理を強いていた。それはわかっていた。つまるところ俺は、スズカを信じてなかったんだ。お前はどんな形であれスズカを信じた。それは、嘘じゃないだろ」

 

ハルヤマの言葉に、フユミは溜め息ひとつして俯く。

 

「……信じていたんじゃない。わかっていただけだ。サイレンススズカが走り出したら、並のウマ娘では影すら踏めない。実際に、相手にした僕は、知っていた」

 

「そうだろうさ。お前が担当したウマ娘の1人は、まだ俺がスカウトする前のスズカに大敗した。全て、そこから始まったようなものだ」

 

「脱走するサイレンススズカを見た時、本当になんの因果かと思った。あれほどの優駿ならばもはや恨むまい、と堪えていたハズなのに、あれから燻るサイレンススズカに、燻らせる貴方に、そして、三人に去られた僕の指導力に」

 

保健室の入り口の横にある丸椅子に座り、フユミは独白する。

 

「サイレンススズカがスターウマ娘として駆け上がるならば、僕はきっとサイレンススズカの当てウマだったのだろうと割り切れた。彼女の駆ける栄光、その影にいる路傍の者であれたならばと割り切れた。しかし、実際には燻り続けるサイレンススズカ。僕は、あの三人は、いったいなんだったのだ。しょうもない逆恨みだ。だから、サイレンススズカに少し、ちょっかいを出したくなった。僕があの日に見せつけられた優駿の片鱗は、ただの幻だったのか。あの三人の挫折は、なんの意味もなかったのか」




アンケートです!下を選ぶとスズカが間違いなく曇ります!というか揃いも揃って曇ります!
では行きましょう!バックシーンっ!

全ての真相が明らかになるのと、さっさと先に進むの、どっちがいいですか?(上はマヤがガォンします。下はオリ娘がデッドエンドシュートされます)

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