逃がさないスズカと逃げるマヤと逃げられないトレーナー   作:エアジャガーる

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招き猫の咆哮

『サイレンススズカ、先頭のまま最初のコーナーに入る!続いて追走する集団が縦に伸びつつコーナーに入る!最後方のマチカネフクキタルまでおよそ12バ身!』

 

『あまりにもハイペースで流れるレース展開です。後半の展開が心配になりますね。ペースを守っているのならいいのですが……』

 

コーナーが前に見える。

コーナーの半ばまでは上り坂、そしてコーナー出口に向かって下り坂の小山がある。

上り坂が問答無用で速度を削るため、コーナーワークでの差は出にくい。

 

そして下り坂で一気にコーナー後半を脱出する。

 

今回のコースは全体的にハイペースになりがちだ。

大外から様子を見ているだけでも、足が前に出そうになる。

ましてや、先頭でサイレンススズカがまだなんとか届きそうなところで逃げているのだ。

自分のペースを守って走るか、サイレンススズカを追い回すか、運命の分かれ道だろう。

この最初のコーナーをどうクリアするか、それが今後のレース展開に大きく響く。

 

シンボリルドルフは横目に、あるウマ娘を見る。

後ろにちらりとしか見えない最後方のマチカネフクキタル。

その表情に、焦りは見受けられない。

前にいる集団をしっかりと睨み付けている。

 

おそらく、このレース展開は想定内だったのだろう。

マチカネフクキタルは、自分のレースをすることを選んだ。

その上で、サイレンススズカを差し切るつもりだ。

 

 

 

 

 

 

「あの位置、皇帝はあくまでも観覧席というわけか」

 

「ドベのフクキタルよりは前に付けているが大外から全く内に迫らないところを見ると、レース展開に関わるつもりはないみたいだな。本気でただの賑やかしか?」

 

「サイレンススズカがいなかったら招き猫事件の焼き直しが必定だったレースだからな。最初から予定してたんじゃねぇか?」

 

「しかしまぁ、サイレンススズカも果敢に飛び出したものだ。ただの一発屋じゃなきゃいいが」

 

観客席の注目はシンボリルドルフに注がれていたが、シンボリルドルフがかなり後方で競り合わずにあくまで外から見守る位置にいることに気付くと、本体である内ラチ側で競り合うウマ娘に注目は戻っていった。

サイレンススズカと二番手の差が4バ身ほどのままレースが動いていく。

シンボリルドルフの登場で一番混乱していたトレーナー達も、いざレースが始まってしまえば自分の担当の走りを見ている。

膝の上にいるマヤノトップガンが、びくりと震えたのは1つ目のコーナーをサイレンススズカの後続が抜け始めた頃だ。

 

「トレーナーちゃん、こわい」

 

「え?」

 

「来ちゃう。次のコーナー」

 

長めのストレートから、次のコーナーにサイレンススズカが入った。

その後続がやや間延びし始める。

マヤノトップガンが縮こまった。

 

「招き猫さんが、来るよ!」

 

 

 

 

 

 

『先頭!ストレートから次のコーナーへとサイレンススズカが入る!追走するウマ娘達との距離がじりじりと開き始めた!現在5バ身差!後続が差し返すにはこれ以上の差は厳しいが!?』

 

『後続集団も段々と崩れてきましたね。ここから先のコーナーふたつ、そこでどれだけ自分のペースを維持しながらサイレンススズカを差しに行くだけの末脚の爆発力を持ち込めるか、あるいはサイレンススズカを常に射程に捉え続けられるか、どちらを選んでもなかなか難しいレースですよ?』

 

長いストレートで一度解れかけた集団が、コーナーでまた固まり始める。

コーナーで集団が横に広がり、コーナーを出たところの短いストレートでその広がりが固まり始めるその瞬間だった。

シンボリルドルフの横を、揺れる招き猫が駆け抜けた。

コーナーで広がった集団の、まさにど真ん中へ!

 

『マチカネフクキタル!ここでシンボリルドルフの前に!いや!そのまま集団の中に突っ込んだ!?』

 

 

 

 

 

 

「シラオキ様ァアアッ!このマチカネフクキタルにお導きあれぇええええっ!」

 

「な、なにっ!?」

 

「招き猫っ!?」

 

集団の一瞬だけ大きく空いた真ん中、そこにマチカネフクキタルは突き刺さる。

そのままストレートで縦に伸びる、つまり外の膨らみが絞れていく流れからマチカネフクキタルは外に飛び出し、サイレンススズカの背中が見える。

全てはシラオキ様が見せた道だ。

この集団の中、ターフの上に薄く白く光る道が見えたのだ。

フクキタルはその道を見つけるまで、最後尾で我慢した。

石の上に三年、果報は寝て待て、一気呵成、迅速果断、勝負の時を待った。

今がその時だと、シラオキ様が囁く。

 

「シィイイイラァアアアアアオォォォォォキィイイイイイさまぁあああああっ!!!」

 

絶叫、咆哮、爆走。

マチカネフクキタルが集団をまるごと貫いていく。

走れ走れ走れフクキタル、とシラオキ様が導く。

 

絶対皇帝がなんだ、スズカさんがなんだ、こっちはシラオキ様ですぞ!

見ていてくだされシラオキ様ぁあああああっ!!!

皇帝とスズカさんの首を持って参りますぞぉおおおおおおおおおっ!!!

ほんにゃらぁあ!ほんにゃかぁあっ!てくまくまやこんっ!きゅあっぷらぱぱっ!あかしけやなげっ!ぴぃいいいっっ!!!やぁああああああっっっ!!!」




書いていて気付いたんだ……
フクキタルに話を乗っ取られてる……
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