逃がさないスズカと逃げるマヤと逃げられないトレーナー 作:エアジャガーる
『トウカイテイオー若駒S勝利!二着はナイスネイチャ』
そんなネットニュースの見出しを横目に見つつ、コースを走る3人を見る。
タイキシャトルは予想はしていたが、2000mを越えると一気に脚がダレる。
1800まではサイレンススズカのペースに食らい付くどころか、下手をしたらサイレンススズカの前にすら出るのに2000mになった頃には脚がダレてあっさりとサイレンススズカに抜かれてしまう。
どうやら1800mを越すと一気にガス欠するらしい。
試しに2400mを走らせてみたが、スタミナこそ足りずにヘバるようなことはなかったが、スピードはまるでダメだった。
考えてもみれば、実家の牧場で牛を追い回しがてらにやっていたらしいアメリカではよくある野良レースはせいぜいが荒野をジープ辺りが踏み固めた獣道だ。
おそらく、ほぼ直線かつマイル以上の距離を走ることはなかっただろう。
ターフを走ることが出来るのは、牧草地で草の上を走ることも多かったのだろう。
コーナーをあれだけ力強く曲がりながら加速出来たのは、逃げ回る牛を追いかけてれば、そのくらいはなんということはない、ということらしい。
牛が2キロもずっと逃げ続ける、なんてこともないだろうし、タイキシャトルの脚質には説明が付いた。
本当ならサイレンススズカを出すつもりだったNHKマイルはタイキシャトルを出すことに決めた。
そしてサイレンススズカは出すつもりのなかったオークスに出走させる。
トリプルティアラを目指す予定はなかったが、どっちかはダイワスカーレット辺りがサイレンススズカを相手に必死になるだろうから、ここでダブルティアラになることは見越していない。
そもそも僕としては、クラシックタイトルに対する興味はないのだ。
特にオークスとダービーは通るつもりがなかった。
まだ身体の仕上がりきらないだろう内に過酷なレースとなるだろうダービーなぞ無理に取りに行っても故障で選手生命を断たれれば意味がないし、取ったとしてもそのあとが続かなければ、成績以上にバッシングされる。
ダービーはレースに携わる者ならいつかは求める栄誉だとか、ダービートレーナーは一国の宰相になるよりも困難とか、アカデミーで講師も度々語り、トレセン学園の教師も座学で取り上げ持ち上げるが、偉大なのは最初にレース制度やらコースと出走条件を整備し定めたダービー伯爵であって、それに肖って作ったレースの何番煎じかもわからない2400mレースの日本ダービーにそこまでの権威があるものか。
ダービーを取るまでのローテでクラシックの内に顕彰ウマ娘になった者もいるが、その内の何人が松葉杖を突いていたかなぞ、誰も覚えていない。
マヤノトップガンをクラシック三冠路線に行かせるとは言っているが、ダービーは理由を付けて回避するつもりだ。
本命はそのあとの夏でしっかりと身体を整えた上での菊花賞。
そこさえ取ってしまえば、ダービーよりも遥かに本命であるジャパンカップに送り込める。
菊花賞が取れなかったら、クラシックの残りの期間はしっかりと身体を鍛える方針で行く。
マヤノトップガンはこの方針に上手く持っていくものとして、サイレンススズカとタイキシャトルだ。
サイレンススズカには弥生賞のあとにNHKマイルを走らせるつもりだったが、桜花賞が増えたことまではまだよかった。
問題は、そのままだとタイキシャトルを出すレースが無いのだ。
わざわざアメリカから渡ってきた期待の新星が安いGⅢレースをコツコツと積んでも、格下狩りとしか思われないだろう。
かといって、今からフィリーズレビューを叩かせて桜花賞に放り込むのは、ダイワスカーレットがサイレンススズカとの勝負を望んでいるところに水を差すだけになりかねない。
どんな結果であれ、未消化な結果となったならあの性格だともう一度勝負を挑んでくるハズだ。
ダイワスカーレットの目は、そういう奴の目だった。
つまり、桜花賞にこちらから更に横槍を放り込むのは論外。
それならタイキシャトルは知人とは誰とも被らないNHKマイルと安田記念に突撃させる。
安田記念はサイレンススズカに挑ませる予定だったが、タイキシャトルにも勝負させられるだろう。
サイレンススズカは、タイキシャトルよりも長いレンジを走れるようにする。
そうなると弥生賞から桜花賞のあとはオークスに行くしかない。
ティアラ路線としてはステップレースを捨ててレートのみで進む、やや変則型となるが、阪神JFと同型レースである朝日杯を取ったからそこまで変でもないだろう。
クラシック路線からティアラ路線に脱線してきたと言われそうだが、インタビューで強気の発言をしておいたから、何かしらのヘイトが向くのはサイレンススズカではなく僕だろう。
それなら、なんの問題もない。
どっちにしても、サイレンススズカがコーナーでの走りをより一段階鍛えなければ、まだマークされて捕まる余地がある。
本気でマークがかかれば、サウジのような醜態を見せる未熟なマークでは済まないハズだ。
マークされても上手くかわせる器用さを求めるより、マークすら触らせずに振り切れるだけのスピードを持たせるほうが、サイレンススズカには早いハズだ。
そのためにも、サイレンススズカは自分の身体で、あることに気付かなければならない。
タイキシャトルとの併走は、そのヒントやキッカケとなるハズだ。
桜花賞までに自分で気付かないと、サイレンススズカは逃げられない。
書いててセリフ無しのフユミの思考回になってたとか需要ある?って回になったけど許し亭ゆるして。