逃がさないスズカと逃げるマヤと逃げられないトレーナー   作:エアジャガーる

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爆裂!ジャンピングドリフト!!!

 なんだこいつ。

まるでバテる気配がない。

坂道を登り、栗毛の……確かスズカと呼ばれていたウマ娘を追う。

あれだけの速度のままヘアピンコーナーをアッサリとパスしたのが見えた時は、さすがにギョッとした。

いつもならインを無理矢理突こうとしたウマ娘を大外からまくって、次のヘアピンコーナーでカウンターしてそのまま最後まで緩やかなストレートの坂を一気に引きちぎる。

それだけで、登りの時点で勝ちが決まる。

それがまるで、減速どころかコーナーで加速して更に返しでインカットされて封殺されたままストレートを先に走られている。

どうやら、マジで走らなきゃいけないらしい。

 

「面白くなってきやがったぜ!!!」

 

 髪止めのゴムやピンを掴んで引っ張り、外して手に握る。

芦毛の髪が広がり、風を受けてはためく。

 

 いつもは縛っているこの髪を解くのは、ここからアタシが本気で走ってぶち抜くというギャラリーへのメッセージだ!

 

 抜けっぱなしのロングストレート、そこでの走りならアタシは他のどんなウマ娘にだって負けない自信があるんだ!

スズカと呼ばれていた、あのウマ娘の背中はまだ5バ身前。

まだまだアイツはアタシの射程圏内だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの芦毛、思っていたよりちょっと速いな」

 

 ストライドで歩幅を広く取る走りをする芦毛のウマ娘は、思った以上にコーナリングが上手い。

焦れそうなカーブとも言えない半端な曲がり角をあれだけ豪快にインカットして走れるなら、この山道であのストライド走法のウマ娘が速いのはわかる。

極論で言えば途中のS字ヘアピンコーナーひとつと、直角クランクさえ攻略出来るなら、直線勝負で強いストライドは理に適っている。

S字ヘアピンコーナーを膨らんだロス以上に速く抜けて最後は外側のガードレールギリギリを抜けていった。

あとは観音様の足元でのターンだ。

ここを芦毛のウマ娘はあの大股ストライドからどう上手くターンして、サイレンススズカに追走するのか。

ここ次第では、サイレンススズカは食い付かれるな。

中継の映像を切り替える。

今度はターンするカラーコーンのところ。

おそらくサイレンススズカはもっとも不慣れで、芦毛のウマ娘はもっとも慣れているハズのところ。

ここを二人はどうクリアするのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 見えた!

夜空に月明かりで輪郭だけ見える大観音像。

その手前にある駐車場の入り口に置いてあるカラーコーン。

そこをターンしたら後半戦の下り!

 

 滑って減速しながらターンしようと思ったが、ふと考えた。

左足の踵を付けて、そのまま右足を振り回すようにして、真後ろを向く。

そして、右足を前に出して、踵から!

 

 やっぱりだ。

ぐるっと回って、そのまま踏み出せた!

あとは、このまま突っ走る!

 

 ターンしてから5歩、ゴムか髪止めで縛っていた長い芦毛を解いたウマ娘とすれ違う。

ここまですぐ後ろに迫っていたのか。

それでも、もう追い付かれることはない!

そう思い、折り返しで下り坂になったストレートで一気に振り切りにかかる。

その瞬間に、後ろから大きな音がした。

 

 後ろにちらりと目をやれば、カラーコーンの真横で砂埃を撒き散らしながらこちらに振り向いて後ろ向きに滑る、芦毛のウマ娘。

何をした?

屈んだ状態でほんの一瞬の静止、そこから芦毛のウマ娘がこちらに向かって跳ねるように飛び出すのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、飛ん……だ?」

 

 折り返し地点の中継の映像でサイレンススズカが踵で綺麗にターンして折り返したすぐあと。

芦毛のウマ娘はカラーコーンまであと3歩のところで、右足を踏み込んで宙に浮いた。

左足を横に振って腰を捻り、同時に右に振っていた尻尾を左に返し、そして正面から撮っていたカメラに尻を向ける直前でまた尻尾を右に振る。

ちょうど背中を向けた後ろ向きの状態でこちらに飛んでくる。

小石を撒き散らしながら後ろ向きに着地しながら滑って、カラーコーンの横にちょうど止まると滑っている間に溜めた足のバネで飛び出してそのまま折り返す。

 

『出たぁッ!空中カウンタードリフト!』

 

『強烈ゥ!これを見に来たんだよ!』

 

『登りで出せるだけ出したスピードが乗りっぱなしの足で一気に下りの折り返しにスタートダッシュ!あんなの出来るのは他にいねぇ!』

 

 カメラに入るギャラリーの声にも納得だ。

サイレンススズカは踵を軸にスピードをそのまま遠心力にして振り回して身体を切り返しただけ。

対して芦毛のウマ娘は空中で身体を捻り、着地と同時に脚のバネに自身のスピードを全て乗せた。

自分のスピードにそのまま耐えられる脚の強さと関節の使い方、後ろ向きに滑っても耐えられるバランス感覚、よほど普段からやってなきゃ出来ないウルトラCだ。

そして返した先は、ストライドで走るにはまさにもってこいなストレートがしばらく続く下り坂。

 

「なるほどな……この山で、デカイ顔するわけだ」

 

「なんだい、今更になって弱音かい」

 

「いや、不当に低く見誤っていたのは悪いことをしたな……と思っただけだ」

 

 グランマの言葉に、各所に置かれた中継のカメラ映像を見ながら答える。

少なくとも、サイレンススズカには少しはいい刺激になるだろう。

サイレンススズカには不利が多い状況と言っても、それでも引き離されずに食い付き続けている時点で、芦毛のウマ娘の実力はなかなかのものだ。

船橋がもし彼女をトライアルで落としたのだとしたら、相当な問題児か真面目に走ってなかったかのどちらかだ。

もしくは、船橋があらゆるアプローチを以てしても彼女を掘り出せなかったか。

そんなことを考えていると、横から声をかけられた。

 

「よぅ、フユミトレーナー……でいいんだよな?中央の」




タイトルがネタバレなんじゃ!!!
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