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『人が空想できる全ての出来事は起こりうる現実である』
この言葉は19世紀フランスのSF小説作家であり、政治家だったジュール・ヴェルヌが書いた作品に登場する物理学者が語った名言。
とある漫画にて引用され、一躍知られるようになったが、この言葉は現実を良くも悪くも表現しているように思える。
例えば、曲がり角で注意不足によって運命の人にぶつかるかもしれないし、車に激突して生涯を終えるかもしれない……有り得ないかもしれないが、起こらないとは言い切れない。
だからこそ、日本の見知らぬ土地で起きている
鉛色の曇天の下で、巨大な人型が立っていた。
いや、それは巨人というにはあまりにも禍々しく、あまりにも異質な存在感を放っていた。
巨人の全身から漏れ出る程の熱量を発する空高く燃える業火、その業火を鎧のように覆い被さる赤黒い巨大な骸骨、前頭部には二対の大きな牛のような角、後頭部に一対の鹿の角が生え、見方によっては王冠のように見える。
その体躯は生命を蔑視する巨人の如く。
その炎熱は生命を蹂躙する業火の如く。
巨人の前方には意識を失った大勢の若い男女が倒れていた。服の裾や一部が焦げて黒くなり、体の各所に黒い煤が付着し、ここで何があったかを語らずとも伝わってくる。
全員が倒れ、巨人は見下すような視線で倒れた者達を一瞥するなか、一人だけ立ち上がった事に気付く。
しかし、気絶している若者達とは違い、その人物は歳を取っており、お世辞にも若いとは言えない男性だった。
『何故、その蟲を護ろうとする?』
エコーがかかったような声で目の前の男に話しかける巨人。
巨人の声に男性は近くにいた女性にしゃがんで着ていた上着を毛布のようにかけ、静かに立ち上がった。男は巨人に背を向けており、表情が見えない。
『貴様が強かろうと他の蟲は一息でこの有り様だ。弱き者は強き者の土台にしかならない。ならば切り捨てた方が我が野望の為にもーー』
「うるせぇよデカブツ」
男は巨人の言葉を一蹴した。
「勝手に出てきて『支配する』だの、『王として当たり前』だの……うるせぇよ。就職活動の一つや二つして、現実を実感してから言いやがれ」
振り返った男の瞳は目の前にいる炎の巨人とは反対に氷のような敵意を持った視線をぶつける。
「現実はクソだ。夢を持とうが、無慈悲に否定してくる」
そう言いながら、男は強く拳を握る。その行為にどれ程の現実にぶつかってきたのかがわかる。
「……でもな。厳しいばっかじゃねぇ」
男の声色には、優しさがこもっていた。その言葉には、どれ程の出会いがあったのだろう。
「遠回りになっちまったが、オレは魔法使いになれた。テメェよりも恵まれてるよ」
巨人は男の言葉に眉をひそめ、全身から炎を噴火した火山のように空高く吹き上げた。
その火は轟々と、燃え上がる。
その炎は豪々と、焼き尽くす。
『……良いだろう。貴様の抱く夢も、希望も、塵すら残さず焼き消してやろう』
「できるもんならやってみろ……だがな、一つだけ言っておくぜ……」
巨人の言葉に男は腕を胸元で交差すると、男の周囲に風が吹き始め、瞬く間に竜巻を纏った。竜巻を切り裂くように両腕を力強く広げると竜巻は霧散し、中から人の形をした化物が現れる。
「オレのはばたきは、荒いぞ」
一言で羽毛の生えた極彩色の蛇と鳥が混ざったような獣人。
蛇や蜥蜴を彷彿させる爬虫類の頭部に、濃緑色の短い羽毛と羽先がオレンジ色の濃緑色の大きな羽毛が髪の毛のように生えている。さらにこちらを睨むような琥珀色の瞳は、蛇のように瞳孔が縦長く、開いた口の隙間から大蛇のような一対の細長い牙と肉食動物を彷彿させる並んだ小さな鋭い牙が覗いていた。
その体格はプロレスラーのように筋骨隆々で大きく、両腕を広げると羽先がオレンジ色の濃緑色の羽毛が肩甲骨から手首まで翼のように生えている事がわかり、太く力強い手足にある先端の黒い鉤爪は獲物を狩る鳥のように鋭い。そして極めつけは、頭から背にかけて光沢のある濃緑色と腹部を覆っている鮮やかな赤色の鱗だ。 しかし、巨人は表情も変えずに悠然と変貌した鳥人を見下している。
『来るが良い。『王』としての違いを教えてやろう』
「働いた事もないヤツが偉そうに言うんじゃねぇよ。それと、オレはお前みたいな『王』なんかじゃねぇ……オレは--」
巨人が構えると同時に鳥人の体からエメラルドグリーンに輝く光が満ちていく。鳥人が神秘的な光に包まれる反面、その瞳には肉食動物特有の獲物を狙う獰猛さが滲み出ていた。
「--
翡翠色の軌跡を描きながら鳥人は飛びながら襲い掛かり、巨人も迎撃せんと腕を振りかぶる。
なぜ、このような殺し殺されの怪獣大戦が勃発したのか……
それを語るには、目の前の怪獣大戦を一旦置いて、三ヶ月前に戻る必要がある……
目指せ、隠れた迷作!!(誤字ではない)