『おれは、3000~4000字書いていると、思ったら、いつのまにか7500字近く書いていた』
な……何を言っているのか、わからねーと思うが……おれも、何故そうなったのか、わからなかった……
頭がどうにかなりそうだった……催眠術だかか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を、味わったぜ……
という訳で今回は長いです。
気付いた時、初めて混乱しました……有り得ないと思って、二度見しましたよ……
……二日酔いで頭いてー……
結局、
「……絶対にあのニュースのせいだわ……」
誰に聞かせる訳でもなく、職場に足を踏み入れる野槌蛇。
「おはざーす」
「来た来た。タスク、こっちこっち」
職場に入ると自身が最後のようで何人かがすでに来ていた。そんな中、野槌蛇が颯爽と鍋島が声をかけてくる。すると野槌蛇は彼の隣に見知らぬ少年がいることに気付いた。
「今日から短期バイトで入ってきた
野槌蛇の視線に気付いた鍋島が隣にいた少年を紹介する。顔の右半分を隠すように前髪を伸ばし、さらにその下に眼帯を着けている黒髪黒目の無愛想でどこか陰を感じさせる--彼の名は
「こいつも昔目指してたんだけど、今ではここの中堅な」
……余計な事を言わんでも……最悪だ……
鍋島は雨乃から離れて野槌蛇を紹介するも、野槌蛇本人はあまり言って欲しくなかったのか苦笑いを見せた。
「鍋さん、この子もリアクション困りま--……」
「なんで、諦めたんだ?」
なぁなぁにしようとした野槌蛇が、鍋島に声をかける前よりも早く雨乃が野槌蛇に問いかける。自分を射抜くような視線に耐えられず、野槌蛇はポツリと答えた。
「オレなりに頑張ったんだが、魔法が使えなくて、魔道具で差を埋めようとしたが才能がなかったみたいでな……結局のところ夢は夢で、理想の前にそびえる現実を知っちまった感じかな?」
後頭部を掻きながら話す野槌蛇を雨乃は黙って見つめる。特に反応がなったので、気まずい空気にしてしまったかと思った野槌蛇が会話を締めようとする。
「ま、お前も年食ったらわかるように--……」
「わかんねぇよ」
しかし、雨乃がその言葉を両断する。唐突だった事に面を食らう野槌蛇へ雨乃はさらに言葉を続ける。
「俺は夢じゃなくて、目的だから諦めるわけにはいかないんだ。死ぬまでわかんねぇよ……わかりたくもないけどな」
そう言って雨乃は鍋島と野槌蛇に背を向けると、別の人と話し始めた。
様子を見ていた鍋島は、彼と野槌蛇は魔法使いを目指している共通点から仲良くなれると思った。が、その末路に首をかしている。一方で野槌蛇は--……
……ずるいだろ。そんなんどう答えたって、オレがみじめみたいだろうが……諦めるって、そんなに悪いことか……?
……拗ねていた。
若かった頃の自身よりも自信に溢れた態度に少なからず嫉妬と眩しさを感じ、僻んだ。
「ほんじゃ、始めるぞー!」
上司の呼び声に意識を戻し、集まる。様々な体格の社員が仕事内容を整理する為に耳を傾ける。
「鍋さん達は魔道具の修理。来週までに修理して欲しい魔道具が五件あるから、それを優先してね」
「おう」
「鈴木班は引き続き魔道具の宅配。今日は少ないからゆっくりで良いし、終わったら鍋さん達を手伝って欲しい」
「うす」
「田中班は魔道具の実演販売。タイムスケジュールを組んでるから、行く前に確認して行動。トラブル発生したら事務所に連絡を忘れずに」
「はい」
着々と指示する上司。それを待つ雨乃。そんな彼の後ろにいた野槌蛇は、言われる場所を知っているらしく少しにやけ面で笑っている。
「新人と
「えぇ!? 昨日終わったのに二日連チャンすか!?」
「別の場所だし、君上手いじゃん。特に腸の部分」
「好きで上手くなったんじゃないっすよ!」
まさか自分も呼ばれるとは思わなかったのか反応する野槌蛇。上司の言葉に力強く否定する。
「今回は最近発見された魔獣だ。構造を知る者が少ないから、一人でも多い者が必要だ」
「チクショウ! やってやらぁぁぁぁ!!」
反論できない正論に悔しさを叫びながら準備する野槌蛇、それを見て同情する同僚と先輩達、冷めた目で見る雨乃、そしてその様子を温かな目で見る上司。
……なんだかんだ立ち向かっていくんだよね彼……
そんな事を思いながら、上司は雨乃と野槌蛇を連れて、現場解体に向かった。
--■□■--
現場の解体が一段落し、全員が昼食を取る。
そんな集団の中で少なからず二種類に分かれるのがこの現場。
一つは平然と食べる者、もう一つは前者よりも箸が進んでいない者だ。
「…………」
雨乃は後者である。
予想以上の現場の空気と凄惨さに顔色を悪くする雨乃。そんな様子に薄気味悪く笑う野槌蛇。
……ククク……流石にグロッキーになってるな……ウプ、オレもだけど……
自業自得というべきか、因果応報というべきか、自身にもダメージを負っている。不意に野槌蛇は雨乃が持ってきた弁当に触れていない事に気付いた。
「……お前、持ってきたメシはその弁当だけか? 食わねぇの?」
「……ちょっと食えそうにない」
「……だろうな」
手を口に押さえて吐き気に耐える雨乃の姿に野槌蛇は、ふと新人だった頃の自身の姿を重ねた。グロッキーになりながらも先輩達から魔獣の知識や技術を教えてもらったり、困った時に手を差しのべてくれた事を。そして、いてもたっても居られなくなった野槌蛇は、ゼリー状の飲む総合栄養食品を雨乃に投げ渡した。
「やる。食えるものだけでも腹に入れとかねぇと、午後もたねーぞ」
「……うす」
「あ、それとな……」
小さく礼を言って投げ渡された飲む総合栄養食品を飲もうとする雨乃だが、野槌蛇の言葉に視線を向けて石のように固まった。
「
「それは絶対に遠慮するわ」
付ける前と比べて間抜けな感じになった野槌蛇を見て、即答で遠慮する雨乃。
気のせいかジリジリと近付いてくる野槌蛇に気付き、雨乃もリードを縮めないようにする。
「遠慮するな……やってみればわかるからよぉぉぉぉぉぉゴォォォォォ激痛がァァァァァァァ!?」
野槌蛇は力ずくで鼻栓を渡そうとするが、雨乃は素早くその手を掴んでアームロックによる拘束を仕掛けた。
片手で相手の手首を掴み、もう片方の手を相手の膝の下を通す形で自分の前腕を掴み捻りあげる関節技。肩、肘からの痛みにより野槌蛇がたまらず叫んだ。
「がああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁギブギブギブギブギブギブギブギブ!! マジで折れるから! 骨が折れるからっ!! むしろ心が折れたんだけど!! 聞いてる!? ギブだって言ってんだけど!? このままじゃ骨が逝くからギブギブキブギブ!!」
「じゃれあいは程々になー」
「え!? これじゃれあいに入るの!?」
あまりの激痛に慌てて少しパニックになるだが、上司や周囲の人には犬の甘噛みにオーバーリアクションで反応する芸人に見えたようで流されていまう野槌蛇だった。
--■□■--
「おつかれー、先にでるよー」
「おー、お疲れさん! じゃーなー」
昼休憩が終わり、なんとかアームロックから解放されて作業に取り掛かった。午前中に作業してた時に比べて雨乃は少しだけ無愛想じゃなくなり、昼休憩の出来事がキッカケで周囲の人達は近付きやすくなった。雨乃は先輩達から意見を聞き、自身も意見を交換して学習した事によって作業が少しだけ速くなったのが、大きかった。
「ふぅ、やっと面倒な過程は終わったな」
「先輩」
後はそんなにキツくない部分で野槌蛇は少しだけ肩の荷が降りた事を実感してると、後ろから雨乃が声をかけてきた。
「おう。雨乃、おつかれ。明日からはマシな過程になるからお前も先に帰って--……」
「……おかげで初日のりきれました。ありがとうございます」
先に職場へ帰っても良いと言う前に雨乃の礼に面を食らう野槌蛇。
「……お、おう」
「それだけッス。それじゃ」
言いたい事を言えたのか去る雨乃。
「あ、それから」
不意に足を止め、振り返って野槌蛇に言った。
「おっさ……先輩の歳でも、魔法学校に入学できると思うぞ」
今回の作業で少しだけ認めたのか、野槌蛇を先輩と呼ぶ雨乃。ただ、尊敬までは言ってないのか、あるいは尊敬していないのか敬語はない。
「日本の法律では、高校に入学できない年齢制限は無い。実際に高校入学した実例もありますし、魔法使いは人材不足ですから問題ないと思う……別に他人の人生だから勝手ですけど、諦めた話してる時、すげー寂しそうな顔してたから」
それだけ言うと野槌蛇の返事を待たずに足早に去ろうとする雨乃。
「……俺の勘違いなら余計な世話だ。そんじゃ、お疲れ様でした」
その後ろ姿に野槌蛇は彼の優しさを感じ、呟いた。
「……雨乃……ありがとうな。お前、思ってたより良いヤツだな」
「だから、そんなんじゃないって--……」
雨乃が反論しようと振り向いた瞬間、地面が盛り上がり、勢いよく魔獣が現れた。
全身が白く大きな虫のような体に細い手足、顔は悲しそうな顔をしていたが、それが上にズレると肉厚で今でも飛び出そうな眼球と筋肉質の鋭い歯を持つ醜悪な素顔が現れた。
雨乃の視界がゆっくりと動くが、雨乃は自身の体が全く動かない事に気付き、魔獣が自身に向けて大きく口を開けた時に走馬灯と理解した。
そして、雨乃は怪物に--……
「雨乃!!」
……--食べられそうになった。
野槌蛇が咄嗟に雨乃の足を掴み、物理的に引っ張って雨乃を地面に倒した。
転んだ事により本来なら魔獣によって頭を噛み千切られる所を回避し、ガチィン、という音が響いた。
「……な!? 魔獣!?」
「気を引き締めろ雨乃! ヤツから目を背けるな!!」
突然の事に戸惑う雨乃を大声で叱咤する野槌蛇。雨乃は野槌蛇を横目で見ると、警戒してるのか目の前の魔獣に鋭く睨み付けている。
「……慣れてるのか?」
「十年間、職場で働き続けたら嫌でも慣れる……解体作業で死んだフリして襲いかかる魔獣に会った事があるからな……コイツは、最近発見された魔獣だ……」
雨乃の質問に答える野槌蛇は目の前の魔獣に対する知識を思い出す。
【ブリッジワーム】
全身が白く大きな虫のような体に細い手足、悲しそうな顔をしているが、それは獲物を
本来なら暗い洞窟や橋の下を狩り場に活動するが、時に巣から離れて活発的に狩りを行う。
そして、何より恐ろしいのは人を好んで襲う習性、目の前の魔獣はまだ成熟していない
「……雨乃。斬撃系統の魔法はあるか? オレは魔法が使えないし、ヤツの体は打撃とは相性が悪い」
「……すいません。無いです」
雨乃の言葉を聞き、熟孝する野槌蛇。ブリッジワームは二人を警戒しているのか動こうとしない。しかし、二人で背を向ければ猛スピードで襲いかかり、食われてしまう。
考えが纏まったのか、野槌蛇は大声で叫んだ。
「雨乃走れ! 全力でここを離れろ! 安全確保したら通報頼む!」
叫ぶように指示する野槌蛇に雨乃は反対しようとする。目の前のブリッジワームは二人を警戒している……逆を言えば、一人になったら襲いかかってくる可能性があった。
「けど、先輩一人じゃ……」
「二人でも、どうにもならん!! 魔法使いになるんだろうが!! ここで死んでどうする!!」
野槌蛇の言葉に雨乃は言葉を飲み込み、野槌蛇とブリッジワームに背を向けて走り出した。その姿にブリッジワームは醜悪な素顔を露にして追おうとするが、野槌蛇はその顔の目に向けて石を投げ込まれて動きを止められた。
しかし、効果が無いのかブリッジワームは細い手を野槌蛇に伸ばして虫を払うような動作で野槌蛇を吹き飛ばした。
野槌蛇は咄嗟にガードして急所を免れたが、壁に強く叩きつけられた影響なのか体が動かない。徐々に近付いてくるブリッジワームが醜悪な素顔と合わさって死神に見えた。
……あぁ……こりゃ、マジでどうにもならんな……
呼吸がしづらいのか、酸素が頭に回らなくなって頭がボーっのし始める。その時、彼の脳裏にとある記憶が過った。
六本の腕を持つ女性の上半身と蛇の下半身を持つ怪物。
両端に金色の装飾がしてある朱色の棒を持って、金色の雲の上に乗った独特な髪型の金髪の男性。
身の丈程ある剣を構える緑色の小人。
……走馬灯……オレもいよいよ……こんなハズじゃ、なかったんだけどな……
走馬灯に苦笑し、静かに近付く死に対して野槌蛇は静かに目を瞑ろうとし--……
「うぉおおぉぉおぉおおおおお!!」
……突然の叫び声に目を開いた。
そこには、根本から取れた道路標識をブリッジワームを振り下ろす雨乃の姿があった。ブリッジワームは後ろに勢いよく下がって回避するが、一人が二人に増えて迂闊に動けなくなる。
「雨乃……! なんで戻ってきた!」
「通報はしました!」
「そうじゃねぇ! オレが聞いてんのは、なんで来たかだ!」
逃がす為に指示したにも関わらずに戻ってきた雨乃に野槌蛇は叱るように言う。雨乃は道路標識を構えながら答えた。
「ここであんたを置いて逃げ出すようじゃ、きっと俺は魔法使いになれない!!」
そう叫んだと同時にブリッジワームが全身をバネに猛スピードで二人に襲いかかってきた。しかし、二人にはもう策がない。
回避、不能。
迎撃、不能。
防御、不能。
頭を動かし、少しでも生存率を上げようと思考回路を高速で回すが、策がなければ無駄に終わる。
そして、二人は--……
「やれやれ、職員から連絡があって来てみれば、中々に闘志が溢れる怪我人がいるじゃないか」
--……乱入者、出現。
突然、何もなかった所から現れた女性に驚愕する二人。遅れてブリッジワームがこちらに襲いかかっている事に我へ返って逃げるよう言おうとするが、ブリッジワームの上半分が消し飛んでいることに気付いて言葉をなくした。
「ナイスファイト」
女性が呆然とする二人に健闘を讃えるかのようにサムアップする。そして、女性の顔を見て、二人は自分達が知る人物だった事に固まった。
日本で数少ない特級魔法使い。
名実共に最強と呼ばれた人物。
自由にして、最強にして、無敵の魔法使い。
気付けば、治療用の魔道具を持った集団がこちらに向かって走ってくる足音が聞こえてくる。
「怪我人を頼む。私は捜索を続ける」
集団の一人にそう伝え、現は霧のように姿を消した。その様子に野槌蛇と雨乃は現が消えた後でも静かに見つめていた。
--■□■--
とある病院。
表向きは普通の病院だが、裏では負傷した魔法使いを治療する為の施設でもある。
野槌蛇と雨乃は病院に運ばれ、治療を受けたが骨に罅が入った程度で他は問題なし。経過観察の為に一日だけ病院に泊まる事になったが、職場の上司と先輩、同僚に伝えると心配するなと答えられ、二人はその善意を受けとる事にした。
なお、二人は同室でベッドとベッドの間をカーテンによって遮られ、雨乃から窓側の野槌蛇を見ると月光も相まって姿が影絵のように見える。
……あれが特級魔法使い……あんなおっかねーモンを一瞬で……やっぱりオレが魔法使いになるのは……
「先輩」
「お、おう、なんだ!? トイレか?」
ベッドで寝転びながら特級魔法使いに出会った事を思い出す野槌蛇だが、憧れよりも実力と住む世界の違いに壁を感じ、少しだけ自信を失くしていた。
すると、カーテン越しに雨乃から声をかけられ、返事する。
「あんたが助けてくれなかったら、俺は油断から死んでました……すげーカッコよかった」
そう言いながら雨乃は眼帯に触れる。
カーテン越しでわからない野槌蛇だが、雨乃はどこか寂しい表情になる。
「やっぱなるべきだ。魔法使い」
その言葉に、野槌蛇は鼓動が大きく響いたように感じた。
「ま、人の勝手だから俺がとやかく理由は……!?」
言い直し、雨乃は布団に入ろうとして大きな鈍い音を聞いた。まるで壁に頭を打ち付けた音に驚きから硬直し、音の出所である野槌蛇の方に顔を向けた。
「……だよな」
そう静かに言い、野槌蛇の目は討ち入りを覚悟した侍のような鋭い瞳になった。
……年下に言われてるのに、いつまで逃げ続けるつもりだ……オレ!! ここで何も聞かなかった事にして寝れば全部楽だ……だけど、それじゃあダメだ! ここで逃げたら、あの時に助けてくれた魔法使いの優しさを無駄にする! 会社で学んだ知恵も技術も無力になる! オレに覚悟を教えてくれた師匠の死も無意味になる!!
「ありがとうな雨乃。お前やっぱりいいヤツだわ」
……もう充分に休んだ。後ははばたくだけだ……例え遅くても、絶対に辿り着いてやる!!
砕け散ったハズの夢が、集まっていく。
二度と戻らないと思っていた物語は形となり、再生していく。
窓から月明かりが差し込み、野槌蛇と暗かった部屋を照らしていく。
だからだろう--……
「オレ、もう一度魔法使い目指し……」
--……野槌蛇が【ソレ】に気付けたのは……
【ソレ】は野槌蛇の向かい側のベッドの上に蜥蜴のような姿勢で佇んでいた。
無色透明の澄んだ水のような体をしており、大きさは10~25cm程。
それとは不釣り合いな短い四肢、顔の周りにはヒラヒラとしたエラが生え、顔の両側には小さく満月のように輝く目、ナマズのような横に大きい口は閉じており、閉じた状態では微笑をたたえたように両端が上がって和み系の顔立ちをしている。
ふと、野槌蛇は鍋島が食べられると言っていた『ウーパールーパー』と姿形が酷似していると気付いた。
『同じ』ではなく『酷似』の理由は、目の前のウーパールーパーの背に鳥を彷彿させる立派な翼が生えていたからだ。
「……て……え……え……え?」
予想外の事態に口をポカンと無防備に開けて混乱する野槌蛇だが、ウーパールーパーに酷似した【ソレ】は背中の翼をはばたかせて宙に浮いた。
「
「魔--……」
謎の言葉を発した瞬間、【ソレ】は野槌蛇の口に目掛けて高速で突撃し、不意を突かれた野槌蛇は動く暇もなく【ソレ】が口から体内に入ってしまった。
直後、自身の体に大きな異変を感じ、胸を押さえる野槌蛇。
急に野槌蛇の様子が変になった事を怪しんだ雨乃はカーテンに手をかけた。
「先輩? 急に黙ってどうしたんすか? 傷が痛むんで……」
野槌蛇の様子を見ようとカーテンを広げる雨乃だが、そこには野槌蛇の姿はなく--……
「え……?」
--……羽毛の生えた極彩色の蛇と鳥が混ざったような獣人がそこにいた。
「え……?」
雨乃の戸惑う声に疑問符を浮かべる獣人。獣人はゆっくりと後ろを振り向くが、そこには窓に映る雨乃と自身の姿しかなかった。
ゆっくりと顔を戻し、雨乃と向き合う。
沈黙が続くなか、雨乃と獣人は同じタイミングで叫んだ。
「ええぇええええええぇええ!?」
病院内に驚愕の声が大きく響き渡る。
雨乃は知らない……目の前の獣人が自身の知る人物だという事を……
野槌蛇は知らない……自身の姿がどのような意味を持っている事を……
二人は知らない……病室のドアの近くで老人が盗み見している事を……
【第二話:魔獣になった男】
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次回ぐらいに冒頭一部が終わり、次々回辺りで参加キャラがゾロゾロ出てくる予定です。