マジシャンズ・パレード   作:ハレル家

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 ねぇ、知ってる?

 作品のプロトタイプは、ここまでがプロローグなんだぜ?


第三話:その男、魔獣で魔法使い

 

「ど……どうなってんだこりゃ--!?」

 

 蛇の獣人のような魔獣になった自分の姿に驚きを隠せない野槌蛇。その戸惑うようすをチャンスと捉えたのか雨乃が拳を握って殴りかかった。

 

「あっぶね!? 待て待て雨乃!!」

 

 ギリギリ回避する野槌蛇もとい鳥と蛇が混ざったような獣人。雨乃から繰り出される鋭いジャブに掠りながら回避しながら説得する。

 

「雨乃、オレオレ! オレだって! 野槌蛇だ! 魔獣が口に飛んできて、呑み込んだらこうなったんだよ!」

「うわぁぁ……」

「ドン引きやめて! 待って雨乃! 通報しようとしないで!!」

 

 避けながら獣人のような人物――野槌蛇が理由を話すも予想外な言葉にどん引きの様子を見せる雨乃。

 

「ほら、よく見て! どこかに面影があるかもよ!」

「いや! ただただ怖いだけだろ!」

 

 野槌蛇は自身に指を指して面影があることを訴えるも原型が無い事を雨乃に指摘される。ガタン、病室のドアの近くで物音がしたので視線を向けると老人が腰を抜かして尻餅を着いていた。

 

「や、やばい! 誤解を解かないと……先輩、笑顔!」

「お、おう。そうだな笑顔……笑顔な!」

 

 雨乃に言われ、老人に敵意が無い事を教える為に野槌蛇は笑顔を見せた。

 三日月のように裂けた口、口から覗く鋭い牙、蛇特有の舌先が二つに割れた舌が口元を嘗めるように動き、上顎の牙から唾液が糸を引いてニチャァ、と粘着質な音を鳴らした。

 

「あ、これ絶対ダメなやつだ」

 

 雨乃の危惧した通りに野槌蛇の笑顔を直視した老人は硬直し、糸の切れたマリオネットよろしく地面に倒れて気絶した。

 

「やっぱり!」

「おい、じいさん大丈夫か……」

 

 気絶した老人を心配して近寄る野槌蛇。その際に壁に手を添える。

 ガシャン、という音がした。

 

「……よ?」

 

 音の出所に目を向けると、自身の添えた手を中心に壁に亀裂が走り、壁の一部が崩壊して崩れ落ちた。

 

「ええぇええええええぇええ!?」

 

 野槌蛇は自身の想像以上に力があることに、雨乃は予想以上に危ない野槌蛇と語る蛇の獣人に驚きの声をあげる。

 

「お、オレがやったの!? これじゃマジで魔獣と変わらないだろ!!」

「逃げるぞ! 魔法使いが来たら、言い訳できない!」

 

 自身の身に余る力に戸惑う野槌蛇を雨乃は病院から逃げるように勧める。

 

『何? なんの音?』

『寝てたのに、うるせぇぞ!』

『え、あれ魔獣?』

 

 野槌蛇の耳に聞こえたのは患者の声だった。どうやら騒ぎを聞き付けて起きてしまったようだ。

 

「確かにこのままじゃ、病院にも患者にも迷惑をかけちまう……窓から行こう!」

 

 危険を理解した野槌蛇が雨乃を連れて窓から出ようとする。窓の鍵を開けようとするが破壊してしまい、窓に手をかけたら窓ガラスが砕け散り、勢いよく開けると力に耐えられず壁の一部ごと窓が吹き飛んだ。

 

「ほらね!!」

 

 肩を(すく)めてアピールする野槌蛇だが、説得力が無い事に雨乃は沈黙する。しだいに肩を震わせ、野槌蛇は叫んだ。

 

「どうなってんだこの体ぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 窓から飛び出す野槌蛇と雨乃。皮肉にも二人を月光に照らす月は笑っていた。

 

 

      --■□■--

 

 

『とある市に小型の魔獣が発生しました! 魔法使いは一般人の誘導及び保護を行い、命を守る行動を取ってください』

『……まじかよ……近くじゃねぇか……』

『あの、大丈夫ですか……?』

『え、いやいや大丈夫ですよ! あ、そうそう、少しこちらに来て頂けないでしょうか!』

『え? しかし妻子が……』

『まぁまぁ、そういわずに……』

 

 周囲の電波に紛れて魔法使い関係者のみに伝わるメッセージが広がる。理解した人から周囲の一般人を避難及び保護していく。

 無論。この放送を聞いていた雨乃も理解していた。

 

「対応は早いが、此方が一歩リードしてるな……念のため確認しますけど、本当に先輩なんだよな!?」

 

 確認の為に後方を走る野槌蛇へ振り向く。

 

「自分でもわかんなくなってきた!!」

 

 そこには下半身が巨大な蜘蛛、上半身は蛇と鳥が混ざったような獣人が自身の後を着いて来ていた。

 

「うわぁぁぁぁぁ!? 何ですかそれ!? 何モード!?」

「むしろ、オレが知りたい!!」

 

 病院で見た時よりも酷くなり、まるでロールプレイングゲームのラスボスのような姿になった野槌蛇に雨乃は走りながらツッコミをいれる。すると野槌蛇の胸が突如左右に開き、グロテスクで筋肉質なピンク色の肉の中心にピンク色の蛇が顔が現れ、電線に止まっていた烏に狙いを定めて高速で伸びて触手のように巻き付いて捕食した。

 

「見て雨乃! オレ、生きたまま鳥食ってる!!」

「キメェ!! めっちゃキモイ!! どこのホラー映画のクリーチャーだ!!」

 

 謎の生態に大声で指摘する雨乃。

 ピンク色の蛇は烏を食って満足したのか野槌蛇の体内に戻り、左右に開いた胸が閉じて元に戻り、ゲームのバグのような挙動不審な動きをしながら野槌蛇の体は病院の時に見た蛇の獣人の姿に戻った。

 

「あ、戻った」

「戻り方もキメェ!!」

 

 ……どうなってんだ一体……!?

 

 予測不能な体になった野槌蛇を混乱した頭で必死に考察する雨乃。普通ならば目の前の野槌蛇翼を語る蛇と鳥が混ざったような獣人の言葉は信用できないが、彼には信用できる理由が存在する。

 ゆえに、できるからこそ混乱する事態に頭を悩ませていた。

 

「雨乃、大変だ!!」

「今度はなんだ!?」

 

 突然叫んだ野槌蛇に雨乃は返事する。

 

「すっげーおしっこしたい」

「今!? 我慢してください!!」

 

 バカみたいな言葉を聞き、内心目の前の現実に疑っていた雨乃だが、突拍子もない言動を見て野槌蛇本人だと判断できた。

 そして、こんなので本物だと理解できた自分に少しだけショックを覚えた。

 

「いや、この体する気だ! オレには止めらない!!」

「えええ!?」

 

 走りながら野槌蛇が自身でも尿意を止められない事を訴え、雨乃は引いた。

 

「嫌だ嫌だ!! 人として大人として公道でおしっこしたくない!!」

「けど、一体どこから!? ソレ(・・)らしきモノは見当たらな--……」

 

 嫌がる野槌蛇に雨乃はそれらしきモノを見えないことを指摘した直後、それは起こった。

 

 野槌蛇の両乳首から液状の何かが放出された。

 予想だにしない部位から出てきた事に言葉を失う野槌蛇と雨乃。しだいに現実を受け入れた野槌蛇がヘッドスライディングのようにうつ伏せで地面へ倒れた。

 

「え、あ、あぁ!? 先輩!!」

 

 雨乃は倒れた野槌蛇を仰向けに返すと、野槌蛇は自身の左右の乳首を両手で押さえ、女性のような甲高い声で叫んだ。

 

「アタイ、お嫁にいけない!! ここで死ぬ!!」

「いやお嫁には元からいけないから大丈夫!! ほら、行きますよ!!」

 

 どこか泣いてるような野槌蛇を引き摺って移動する雨乃。不意に野槌蛇は自身のこれからについて雨乃に質問する。

 

「……でもよ雨乃……オレ、どうなるんだろうな? 魔法使いになれると思う?」

「無理無理無理無理。どちらかと言えば討伐される側で即殺対象」

「だよなー!!」

 

 雨乃に予想していた答えを即答で言われて野槌蛇は頭を抱えた。

 

「クソッ!! もう一度頑張ろうと決めたのに……こんな体でどうやって--……」

 

 ……あれ? もしかして……もうオレが魔法使いになることってないのか……

 

 ふと、自身の頭に過った事実に野槌蛇は気付いてしまう。すぐに振り払おうとするもソレは毒のように体を蝕み、思考を鈍化させる。

 少しずつ、自身に重く巻き付き、足を止める。

 逃げても無駄だと思い、病院へ引き返そうとした瞬間、何かが自身の中で駆け抜けた。

 

「よし、このまま離れれば追いつかれる心配はなくなる! 後は……先輩?」

 

 目的地間近で振り返ると野槌蛇が足を止めていた事に雨乃は気付き、声をかけようとすると野槌蛇が手で待ったをかける。

 

「しっ、何か来る……!!」

「来るって魔法使いが!?」

「いや……地下からだ……これは……ーー」

 

 雨乃の言葉を否定しながら野槌蛇は感覚に身を委ねてみた。

 感覚から伝わってくるのは熱い熱量、泥のような黒い塊、大量の魔力が生き物のような形を形成しつつ、上へ上へ渇望するくらい近付いてくる強い欲望。

 一瞬、野槌蛇が強く感じた方向に視線を向ける。近くの住宅街に視線を向けた瞬間――……

 

「ーー……魔獣だ!!」

 

 ――……爆発した。

 まるでガス爆発のような爆発音を響かせる住宅街に野槌蛇は険しい眼で見つめる。

 

「昨日、オレ達を襲ったのと同種だな」

「そんなことがわかるんですか!?」

 

 まるでレーダーのように察知する野槌蛇に雨乃は驚きながらも、現状にチャンスが訪れた事を察した。

 

「けど、これで先輩を捜索する魔法使いの数が減る………身を隠すチャンスだ……幸い、先輩の件で住人の避難や結界による誘導はすでに進んでいる。被害者がいないことを祈ろう!」

 

 そう言って、野槌蛇を離れるように誘導する雨乃。野槌蛇は爆発した住宅街の一角を見つめ、雨乃の後を追った。

 

 

      --■□■--

 

 

 その家庭は平凡だった。

 両親は一般人で一人娘を授かり、魔法使いの世界とは無関係で平凡な家庭、平凡な年収、平凡な日常、そして細やかな家族愛が添えられた家庭だった。

 喧嘩だってするし、笑いもする。富豪でもなければ貧困でもない普通の一般家庭。

 その日、父親の帰りを待っていた母親と娘は上機嫌だった。母親は明日に控えた娘の誕生日に出すご馳走の仕込みを行い、娘は小さなワガママによる願いで特別に夜遅く起きる事を許され、父親が帰ってくるのを待っていた。その様子がクリスマスのサンタクロースを待っているように見え、その光景が眼鏡に写って愛娘に微笑む母親。

 誰もが頬を緩める光景だった……

 そう。『だった』。過去形である。

 

「ママ! ママ!」

 

 突然の爆発により、その光景は崩れた。

 家が崩れて凄惨な瓦礫ばかりの現場となり、土煙が宙を舞う。

 幸運にも娘は植えてあった庭木による生垣がクッションとなって打撲やかすり傷があっても酷い怪我はなかった。

 しかし、母親は無事ではなかった。

 爆発の衝撃により吹き飛ばされてしまい、壁に強く叩きつけられて棚の下敷き。頭を切ってしまったのか出血している。

 何故か、爆発音が響いたにも関わらずに誰も現れないが、不幸中の幸いで娘の呼び声によって朧気ながら意識を回復する。

 そして不幸にも、所々割れた眼鏡に写った娘の後ろにいる化け物に気付いてしまった。

 

「ママ! ママ!!」

「逃げ……て……早く……」

 

 強く呼び掛ける娘に対して、母親は比例するように弱々しく逃げるように言う。

 怪物は、匂いを嗅ぎ、娘に気付いた。

 

「嫌だよママ……!」

「お願い……だから、逃げ……私は……いいから……逃げ……て……」

 

 逃げることを拒絶する娘に母親は懇願する。

 怪物は、嗤って、泣いてる娘に近付いてくる。

 

「いや! ママといる! はなれたくない!!」

「……お……願い……お願い……お願い……お願い!」

 

 不幸にも、お互いを大切に思っているがゆえに動かず、娘は後ろにいる悪意に気付かない。

 怪物は、娘に対して大きく口を開けた。

 

「いやぁぁぁぁぁ!!」

 

 ……お願い! お願い! お願い!! 誰、でも、いいから……お願い! わた、しの! 私の娘を! 誰か、だれでもいいから! おねがい!!

 

 強く拒絶する娘の悲鳴に後ろの化け物が嗤う。

 体が動かず、ただただ娘の最期を見るだけしか出来ない母親は自身を強く呪った。苦し紛れに願った想いが届くのなら神にも悪魔にも、叶えてくれるなら魔王にも乞い願った。

 しかし、母親の視界が赤く染まった。

 鉄臭い匂いから意識が遠くなる感覚と脱力感が襲いかかり、徐々に意識が離れていく。

 

 気を失う直前に血が付着した眼鏡の位置がずれ、母親が最後に見えたのは……――

 

 ……――翡翠色の輝く光を纏った鳥と蛇が混ざった獣人が、娘を食べようとする直前の化け物を殴り飛ばした光景だった。

 

 

      --■□■--

 

 

「……す……げー威力……」

 

 化け物――ブリッジワームを殴り飛ばした自身の腕を見ながら、予想以上の力に目を点にする野槌蛇。

 あの後、雨乃の腕を掴んで住宅街に行くように説得した。雨乃は距離的にも無理だと否定した直後に野槌蛇の体がエメラルドグリーンに輝き、翡翠色の放物線を描きながら崩壊した一軒家に突撃。

 そして、ブリッジワームに食べられそうになった所を見て、ブリッジワームを殴り飛ばした。

 隣にいた雨乃は少しよったような仕草を見せるが、一〇〇m毎に加速減速を繰り返す上に横に落下するという感覚を初めて味わったので無理もない。

 ふと、野槌蛇は視線を感じて振り向くと少女が野槌蛇を怯えながら見ていた。

 

「大丈夫?」

「ひっ」

 

 野槌蛇が声をかけると少女はさらに怯え、野槌蛇はその様子にしどろもどろになる。

 

「だよな。ゴメンゴメン……えっと……笑顔~」

 

 なんとか慰めようと病院で見せた笑顔を披露するも、学習していないのか酷く不気味な笑顔を少女に見せることになった。

 

「ピヤァァァァ!?」

「あっ悪かった! すぐいなくなるから泣かないで!!」

 

 あまりの恐さに号泣する少女にアワアワと慌てる野槌蛇。その横で雨乃は棚の下敷きになっていた母親を助けながら、野槌蛇が使った魔法に対して内心冷や汗をかいていた。

 

 ……こんな事が有り得るのかよ……今まで魔獣に変身する魔法を使うヤツはいたが、全員変身した魔獣のスペックをゴリ押しした肉弾戦だった……それは魔法が使えない魔獣になった弊害で発生したルールだった……だけど、先輩は魔獣の体で魔法を使用した……つまり、先輩は『自身の体を魔獣に変身させた』ではなく『自身の身体を魔獣に書き換えた』になる……魔獣の力と人間の魔法……その姿ってまるで……

 

 そこまで思った雨乃は大きな足音で思考の海から戻った。そこには、自分達が襲われた時よりも大きなブリッジワームがいた。

 醜悪な素顔を露にし、筋肉質な鋭い歯をカチカチと鳴らす様子はこちらを嗤っているように見える。

 雨乃が構えるより先に野槌蛇が一歩前に出た。

 

「雨乃、二人を頼む」

「どうするんだ!?」

 

 雨乃の質問に野槌蛇は拳を握り、エメラルドグリーンの光を体全体に巡らせていく。

 

「少し、本気でやってみる」

 

 光が徐々に強くなるに連れて体全体がバチバチと翡翠色の電気が走り始める。雨乃はそれが一種の災害のように見えた。

 

「離れよう!」

 

 少女に離れるように誘導し、母親を丁寧かつ慎重に運ぶ雨乃。その様子を見ていたブリッジワームは猛スピードで野槌蛇に突進してきた。

 それは絶対捕食者の誇りからの行動ではなく、強さの格による無謀な突撃でもなく、生まれてから命の危機など感じたことのない無知からであった。

 

「一、二の……!!」

 

 声と共にブリッジワームは下からの激痛と同時に空へ蹴り飛ばされた。

 ブリッジワームは地を走り、地中に潜る捕食者……だからこそ、空中は彼らの領地ではない。

 眼下に映る翡翠色の絶望が口を開けた。

 瞬間、ブリッジワームは理解した。目の前にいた変な人間は自分が捕食する為の餌ではなく――……

 

「三!」

 

 ――……自身を絶滅させる悪魔だったことに……

 翠の流星が地から天へと昇る光景を最後にブリッジワームは恐竜を絶滅させた隕石レベルの衝撃を受け、全身をバラバラに砕け散って絶命した。

 

「こ、これは……」

 

 その光景を下から眺めていた雨乃と少女は呆然とし、野槌蛇は地面に着地するとポツリ、と赤く鉄臭い雨がどしゃ降りのように降り始めた。

 

「絶対に人に向けたらダメなやつだな」

 

 赤い雨を浴びながら空を見上げる野槌蛇。その姿はまるで血涙を流して泣いているように見えた。赤い雨がやみ、野槌蛇は少女と母親の方に顔を向ける。

 

「よし、もう大丈夫。お母さんを病院に--……」

 

 しかし、少女は体の各所が赤く染まった野槌蛇を怖がり、雨乃の後ろに隠れてしまった。

 

「……」

 

 その様子を見た野槌蛇はどこか悲しそうな雰囲気を出すも自身の内側に抑え、少女と同じ目線になるようしゃがんで、優しく声をかけた。

 

「いいかい、そのお兄ちゃんが安全な所へ連れてってくれる……オレはすぐにいなくなるから、安心して……」

 

 そう言って野槌蛇は立ち上がり、少女の母親を担いだ雨乃と少女に背を向けて去ろうとする。

 

「へ、蛇さん」

 

 少女が野槌蛇を呼び止める。振り向く野槌蛇に今度は怖がらずに少女は涙目で告げる。

 

「ありがとう」

 

 その言葉に野槌蛇は懐かしい想いを抱いた。

 ふと、自身が初めて助けてくれた魔法使いの別れを思い出した。

 

『なぁ、どうすればお前みたいに強くなれるんだ? 変な髪の兄ちゃん?』

『変な髪は余計だ。そうさな……お前が世のため人のために力を学ぼうとする意志があるなら、強くなれるんじゃないか?』

『ふーん……俺には無理だな』

『それは、なんでだ?』

『顔のわからないヤツを助けるなんて、無理だろ……だから、オレは顔がわかるヤツを助けたい』

『……く、クク……カーカッカッカッカッ!!』

『うぉっ!? なに!? どうした!?』

『いや、何でもねーよ……坊主、お前は自身の善を疑わずに進め……そしたら、お前はきっと強くなるさ……』

『……えと、どういう意味?』

『いつか、わかる時がくる……』

 

『頂で待ってるぜ。坊主』

 

 ……そうだ。行かなきゃ。

 

 心が、熱を帯びる。

 体を蝕んでいた毒が、与えられた()によって蒸発する。

 体に巻き付いてた黒い泥を燃やし、道が作られる。

 重いと思っていた足が、前に進む。

 色褪せていた記憶が、志が、満ちていく。

 折れたハズの精神(こころ)が、充ちていく。

 

「先輩! もう魔法使いがくるぞ! 病院は俺に任せて、早く身を隠せ!!」

 

 雨乃が野槌蛇に注意するが、野槌蛇は身動きせず、空を見上げる。

 

「……先輩?」

「雨乃、オレやっぱ諦めきれない」

 

 その言葉と同時に頭部の左側がひび割れていく。それは次第に大きく複雑に割れていき、やがて頭部の左側が割れた。

 

「魔法使いにならなきゃいけねぇ」

 

 強い瞳を持った人間の素顔が現れた。

 もう、迷いは捨てた。

 そこにいたのは、はばたこうとする一羽(ひとり)(にんげん)だった。

 

 

【エピソード1:その男、魔獣で魔法使い】

 

 

.




 これにてプロローグ部分は終わりですね。

 長かった……次話からカッコカワイイな個性溢れる参加キャラがデルデル出てきます!!

 デルデル! デルデル! デルデルデルデルデルデルデルデルデルデルデルデルデルデルデルデルヘェェイ!!(深夜テンション)
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