遅くなってすみません。
とりあえず、描写だけもありますが全員出せました。
そして、あとがきにて報告があります。
『二次試験は二部制だ』
時間は二次試験一部が始まる前に遡る。
男子更衣室のロッカーで服を着替えた二人は作戦を練り始める為に今回の試験について確認していた。
『一部が体力検査、二部が資質検査』
『えぇ、二部は純粋な実力が試される素質面で毎年内容が変わって対策しづらい』
冷静に試験の内容を確認する二人。野槌蛇の意見に雨宮が頷きながら肯定する。
『二部が不確定要素なのを考えると――……』
『確実にこの体力検査で点数を取っておきたい』
方針が決まり、二人は体力検査の集合場所に向かった。そこには血気盛んな入学希望者が待ち構えていた。
二人は気を引き閉め、荒れる体力検査に挑むために踏み出した。
ーー■□■ーー
……はぁ……はぁ……あれ? なんだこれ……
一部試験が始まってしばらく、野槌蛇は自身に起こっている異変に気付いた。
……ぜんぜん、ついてけねぇ……!
鉛のように重い足をひたすら前へ、
全身にのしかかる虚脱感を抱えて前へ、
肺が締め付けられる息苦しさを耐えて前へ、
ひたすら進もうと体を動かしているのにも関わらず、前を走る人に追い付けない。
……トレーニングだってクセで続けてるし、毎日ハードな仕事をこなしてるのに……差が縮まらねぇ!!
野槌蛇の身体能力は同年代に比べれば、まだ高い方である。
しかし、それでも目の前の走者に追い付けない。
……前は中の下くらいいけたのに……それなのに……それなのに……!
一人、また一人、他人が自身の前を抜いていく光景に気が重くなるも足を止める訳にはいかず走り続ける。
……これが……これが……認めたくないけど、これが歳の衰えってやつか!?
目を背けたい事実に野槌蛇は内心で嘆いた。ふと、頭にある考えが脳裏に過った。
……魔獣の力を使えば、全員ごぼう抜きできたりすんのかな……
こっそり力を解放すれば、点数を稼げるかもしれない……そう思った野槌蛇だが、すぐに考えを改めて走るスピードを上げる。
体力検査結果――250人中239位。
一部試験終了後に張り出された下から数えたら早い順位に野槌蛇は落ち込むが、その様子を見た雨乃が周囲に聞こえるように話しかけた。
「本当に使わなかったんだな。魔獣の力」
「……みんな努力して来てんだ。オレだけそんな力使ったら、卑怯だろ」
その言葉に雨乃は野槌蛇を少しだけ感心するが、徐々に全身が震いだし、ついに決壊した。
「ってカッコつけちゃったけど、使っとけば良かったよォォォォォ!! ブランクがやべぇんだよォォォォォ!!」
地面に膝をつき、両手を握って地面に叩きつけて後悔を露にする野槌蛇。その姿を見て、雨乃は何か思案するような表情で呟いた。
「ブランク……先輩の順位はそれだけが原因じゃないかもしれない」
「え?」
雨乃の言葉に顔を上げる野槌蛇。
「例えばあそこ……あの二人組です」
雨乃が指を指した方向に二人一組の男女がいた。白髪のショートで両目が隠れるほど前髪が長く、目の色は黄色の目に程よく胸があってスタイルがよく、黒いパーカーと黒い指ぬきグローブを着用し、首にダイヤ型の宝石がついたペンダントをつけている。
その女性に対して黒色の目に、黒と茶と赤が絶妙に混ざった色の髪、背中に『不動』と書かれたフード付きの白パーカーを羽織る男性が先程の女性と親しげに会話している。
「女性の方が
「推薦されたのに何でいるんだよ?」
「……五年前に推薦入学された魔法使い候補が指名手配犯になって暴れた事件をキッカケに、学校側から推薦されても試験に参加し、一定の点数を取らなければ入学を許可しないようになった……実力が無ければ無駄死にになるので、それを防ぐ為だ」
雨乃が疑問を答え、それを聞いた野槌蛇は自身の過去に刻まれた事を思い出して表情を険しくするが、続けるように無言で促した。
「他に……あそこのツインテールの少女」
雨乃が視線を向ける先には空色のツインテール、薄い緑色の瞳、小~中学生と間違われる位には小柄で鮫のようにギザギザな歯が特徴的な美少女が準備運動をしている。
「彼女は
「……なぁ……雨乃……」
説明する雨乃の肩を叩き、ある一点を見つめながら、指差す野槌蛇。
「……アレも……そうなのか……?」
「……あれ?」
視線と差した指の方向に顔を向ける雨乃。口を引きつらせながら言う彼の言葉に疑問を浮かべるが、見て理解と同時に硬直した。
「ねぇねぇ! どうして話せるの?」
「それは俺も思っタ。よけれバ、教えて欲しイ」
「ふむ。我輩としては試験に合格し、同じクラスになってから教えた方が楽しみも増えると思うのだが……」
そこには、地面にとどくほどの長い白銀の髪に青色の瞳、服装は主に露出の多い動きやすい服だが、靴は履かず裸足の色々な意味で特徴的な少女が一匹の狼犬に対して話しかけていた。錯覚なのか彼女の髪の一部がピコピコと動いているように見える。
その少女の隣には全身が銀色に塗装されたアーマーに覆われており、一言でメカメカしい。顔部分は少し長く、眼は青い。歯パーツが剥き出しの状態で少し不気味な印象を抱き、身体には所々黒いラインが入っているロボットが立っている。
何より、一番驚いたのは少女とロボットに話しかけられた青い宝石がつけられた首輪を着用した青い瞳の狼犬が喋った。話し方から物腰が落ち着いた性格だと理解できるが、そんな目を疑うような光景を見た雨乃は目頭を抑える。
「……あれに関しては、ノータッチで……」
自身の理解できる範疇を越えたのか、それとも自身の見た光景が幻覚に頭を痛めたのかわからないが、雨乃は野槌蛇に置いとくように言う。
「……脱線したが続ける……先程言った人物だけじゃない。各地の有名校出身者や両親や親戚に上層部に片足突っ込んだ者がいる御曹司、幼い頃から魔法に触れ続けた実力者が例年よりも多い……本来なら現場志望ではなく上層部の幹部候補の道に行くようなエリート達です」
「道理でレベル高いと思ったよ!!」
納得の理由に再び頭を抱える野槌蛇。それを横目に雨乃はこの場にいる二人の人物を見つめる。
……まぁ、それだけじゃないみたいだけどな……
雨乃の視線の先には愁いを帯びた切れ長の瞳と左眼の刀傷が特徴を持つ肩まで伸ばした黒髪と桜色の瞳を持つ少女、もう一つは黒色のショートヘアーで目は水色の青年がいた。
……
奇しくも駐車場で出会ったモヒカン男の言葉を思い出し、渋い表情になる雨乃。すぐに気を取り直して野槌蛇に説明の続きを行う。
「そして、その中の
多くの試験参加者の視線の先には汗によりさらに艶やかとなった赤髪を揺らし、呼吸を落ち着かせてリラックスする女性ーー
「――……鈴剣恵」
呟きながらその姿を見つめる野槌蛇。その姿はまるで集団の長のように静かな威圧感を放っており、まるで一本の剣のように見る者を錯覚させる。
……あれが暫定トップか……さてさて、どうやって乗り越えるか……
……隙がない……場馴れしてるわね……
……わ、私も、強く、なれるかな……はっ!? その前に合格しなきゃ……
……ほう……珍しい匂いがすると思えば……
……二部試験は魔法使わなきゃいけないのかなぁ……
とあるハゲ頭の大男は目の前の壁にどう挑むか思案し、とある長い銀髪の少女は彼女の実力を冷静に分析し、とある純白の少女は目の前の彼女に小さな情景の念を抱くも現実に戻され、とある蛇のような印象を抱くような少女は彼女から何かを感じて含み笑いを溢し、とある茶髪の少年は次の試験に対して憂鬱になっていた。
情景、警戒、畏敬、嫉妬等の様々な思いが彼女に対して浮かんでいくなか、野槌蛇も少なからず思いを浮かべているが、少なくとも恋慕ではない。
……――『野槌蛇翼だ。覚えとけじょーちゃん!!』
「アアアアアアアアアアアア!! 忘れてッ!! 今すぐオレの名前なんて忘れてッ!!」
「急にどうした!? 気持ち悪いぞ!!」
その感情は“羞恥”。
駐車場で言った言葉を思い出してしまい、全身を死にかけの芋虫のように暴れて悶える野槌蛇。その姿に雨乃はストレートな感想を口にする。
『これより二次試験二部適性試験を行います。受験者は第二部演習場に集まってください』
放送が響き、試験参加者は適正試験を受ける為に移動を始めた。
「……もう、逆転は絶望的だな……」
「いえ、まだ希望はあるかもしれない」
一部の結果から諦めようとする野槌蛇に雨乃が待ったをかけた。
「ここ二年、二部には魔獣の解体技術が採用されています……魔獣の知識と協調性を測りつつ倒すだけが全てではない、という意識改革の流れもあるみたいだ。俺が短期バイトにあの会社を選んだ理由だ」
そう言って第二部演習場へ向かう雨乃。野槌蛇はしばらく考えたが、気を引き締めて雨乃の後を追った。
――■□■――
「……予想以上にデケェ……」
第二部演習場。
その入り口前に聳える門の高さに誰かが呟いた。
見上げる程に大きな門を見つめていると、いつの間にか門の前に人が現れ、それを目にした参加者が二つの意味で騒ぎ始める。
一つはいきなり人が現れた事、もう一つはその人物に対してだ。
「私は今回の選抜試験の選考委員長を任されてる現花純だ」
その声に参加者がさらにどよめき始める。
目の前に魔法使いとして頂点に立つ存在に周囲は驚きと興奮を隠さず、少しばかり浮き足立っていた。
「ンン、もういいかな?」
現の声に全員が試験中だと思い出して気を引き締める。その様子に現は無言で縦に頷き、適正試験について説明を始めた。
「二部ではこの演習場で魔獣を――……」
現が指パッチンすると彼女の頭上に大きな画面が現れた。
そこに映っていたのはーー……
「……――討伐してもらう」
まるでゴリラのような歩き方で移動する中型魔獣とそれに追従するかのように移動する小型魔獣の姿だった。
その光景を見て、野槌蛇は無言で雨乃に振り返って目で訴えた。
……解体技術じゃなかったんかよォォォォォ!! 雨乃さんよォォォォォ!!
「あくまで、あくまでここ二年はって話です!!」
野槌蛇の言いたい事を察したのか雨乃が訂正するように言うと周囲に柏手が二回響いた。視線を向けると現が行ったようで、彼女は周囲の視線が自身に集まった事を確認すると説明を再開する。
「さて、そこで丸腰のまま立ってたら何時までも合格できない。こちらで魔道具を特別に貸し出しを行う……準備ができたら所定の場所に集合だよ」
そう言って彼女は霧のように消え、参加者は最後の試験に挑むために準備を始めた。
――■□■――
「全員、所定の位置に集合したね。それでは説明を始めよう」
魔獣と戦う準備が出来た人達の耳に現の声が響く。最初は困惑する参加者だが、すぐに理解したのか落ち着いて声に耳を傾ける。
「ターゲットは広大な都市型演習場に配置された大型魔獣と大勢の中型~小型魔獣。去年東京の練馬で16人の被害者を出した魔獣を後進育成の為に生け捕りにしたものだ」
ふと、ウィーン、という機械音が聞こえ、見上げると小型のドローンが参加者一人一人の周囲を飛んでいる。
「君達にはそれぞれ一台の自動追尾ドローンが付き、行動をこちらでモニタリングする。こちらの判断で命の危険と察した場合はベルト型の魔道具を遠隔で操作して緊急シールドを発動させるが、それは同時に失格を意味する」
失格の文字に全員が表情を引き締める。その様子に満足したのか、現は参加者全員に一言だけ伝える。
「正直、ここから先は命の保証はない。それでも行くという覚悟のある者だけーー……」
沈黙。そして、口を開いた。
「……進め。そして生きて帰ってこい」
その言葉に悩んでいた者も、下を向いていた者も、一人残らず前を向く。
彼ら彼女らが目指す場所は魔獣ではない。彼らは通過点に過ぎない……
自分達が目指す魔法使い。
「さぁ、最終審査を始めよう」
その言葉と同時に門が開き、全員が前に進んだ。
少し、皆様に報告があります。
しばらく、執筆を控えようと思います。
理由は『精神的な問題』です。
別に自分は『BEY∅ND』や『誰が為に花束を』、『マジシャンズ・パレード』は嫌いではありません。むしろ好きの部類です。
それでも、書くことができません。
小学生の頃から暮らしていた猫が亡くなりました。かなり高齢で、獣医からは老衰のようなモノだと言われ、いつかは来る別れだと覚悟していたのですが、かなりツラいです……しばらく心の整理が欲しいので、執筆を控えたいです。
誠に勝手な理由ですみません。
書けるようになったら、活動報告にて知らせますので、待って頂けるなら幸いです。
最後に、この文章を読んで疑ってる方または他の人へ伝えたいです。
『大切なモノの大きさと存在はいなくなってから、気付けます。自分はいなくなった事で大きさと存在に気付いて後悔しています……もっと甘えてあげれば良かった。もっと構ってあげれば良かった……考える度に胸の奥が締め付けられる感覚になります……だから、もし飼っている方がいるなら、その子も自分も後悔しないように心を注いで上げてください……』
長文、失礼しました。