マジシャンズ・パレード   作:ハレル家

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 お久しぶりです。

 やっと踏ん切りをつけれたので、今日から執筆再開です。

 あちらこちらへフラフラしますが、無事に終われるように頑張ります。

 今回はリハビリも込めているので比較的に短いと思います。


第六話:開戦の狼煙

 

『そういや、雨乃って武器は必要か?』

 

 試験当日から数日前。

 職場の食堂で昼食を食べていた雨乃は野槌蛇に訊ねられた。

 

『……武器?』

『試験の際に魔道具の持ち込みは事前に許可すれば持っていけるから、ついでだから雨乃の分もやろうと思ってな』

 

 試験に道具の持ち込みはアリである。

 理由としては魔力の無い参加者の救済措置。そして魔道具を販売する会社の学園に対する売り込みである。

 魔道具を販売する会社にとっては技術を学園に見せることで提携先の確保または取引先の増加を目的とし、同業者に対する牽制を行う場所でもある。

 

『因みに無しはダメだからな……上司の圧力がツライ』

 

 苦笑しながら言う野槌蛇に引きつった笑みを浮かべる雨乃。

 

『……じゃあーー』

 

 しばらく考え、自身の戦闘の選択肢を増やす武器を頼む雨乃。

 その後、約束通りの武器は出来たが、制作者本人から詳細と理由を聞いて思わず『頭おかしい』と言ってしまったのは、余談である。

 

 

      ー■□■ー

 

 

 時を戻して二次試験二部が始まり、スタート開始直後に先頭を走る雨乃。

 一部の地点の参加者に比べれば遅いが、集まった参加者の中では速い。前方に二本足で歩く犬の魔獣ーーコボルトを見つけ、雨乃は自身の腰にぶら下がる日本刀の鞘に手を伸ばして引き抜くと、鞘の口から刃が飛び出した。

 

『逆さ長巻』

 

 一見日本刀のように見えるが、その正体は柄の方が刃で、鞘が柄の『長巻』。

 柄の内部に刀身の大半が入っており、任意でバネが飛び出し長くなる。常備性は剣と同等、伸ばせば剣より長く切れ味は日本刀と同等。

 なお、雨乃はわざわざ手間暇かけて日本刀の『異常な切れ味』を求めた理由を制作者本人に訊ねるところ……制作者本人は『獣の毛皮、一枚の革、重ねた布など軽量なのに並の剣では切れない【最も遭遇率が高い非常に優れた防具】を一撃で切り裂き無効化する為』と答えた。

 

 切り捨てたコボルトを一瞥し、刃に滴る血を振るい落とす。地面に赤い線が引かれ、まるで生と死の境界線のように思える。

 

 ……予想以上に使いやすい! これなら相手が硬くなければ簡単に倒せそうだ!

 

「一番槍貰われちまったな」

「先輩」

 

 聞き覚えのある声に振り向く雨乃。そこにいたのは、腕に大きな籠手を両手に着けた野槌蛇がいた。

 その姿は心強い味方の登場のように見えた。 

 しかし、雨乃の視線は野槌蛇ではなく、野槌蛇の籠手に目を向けていた……別に羨ましいという理由ではなくーー

 

「このまま遅れを取り戻すぞ!!」

「ごめん! 話が入ってこない!!」

 

 ーー野槌蛇の籠手にコボルトが噛みついたまま、ぶら下がっていた。

 見方を変えれば訓練で犯人役の人に噛みつく警察犬のように見えるが、ぶら下がったままビチビチと動く姿はどちらかと言えば、釣られた魚そのものである。

 雨乃は逆さ長巻を取り出し、籠手に噛みつくコボルトを切り捨てる。

 

「少しはマジメにやれ!」

「仕方ねぇだろ。俺は魔力が無いんだぞ……これは試験順位下位層(アンダーグラウンド)の住人にしか分からない」

「横文字使ったら、カッコイイと思ったら間違いだからな!」

 

 茶々を入れる野槌蛇にツッコム雨乃。二人の漫才を横から聞いていた参加者は方や呆れ、方や笑いを堪えながらも肩の力を抜いて魔獣に立ち向かっていく。

 

「……冗談は置いといて……」

「冗談じゃないっすよね?」

「冗談は置いといて!」

 

 少し咳払いをしてから、雨乃に小声で話しかける野槌蛇。雨乃に指摘されるもマジメな話なのか力付くで話の脱線を拒否する。

 

「雨乃、この試験に違和感がないか?」

 

 野槌蛇の言葉に雨乃は首をかしげる。

 

「……違和感?」

「あぁ、例えばオレ達にわざわざドローンを付ける必要だ」

「……不正を防ぐ為じゃ?」

「それだったら、監視カメラを会場の死角に設置すればいい……何より、今回の選考委員長が許すと思うか?」

 

 そう言い、野槌蛇はドローンに目を向ける。カメラ越しだが、視線の向こうには最強と言っても過言ではない魔法使いが参加者を審査してる。

 不正を行うものならば、間違いなく見逃さずに失格を放送する。

 

「言われてみれば……審査の基準が討伐数だけなら、数をセンサーでカウントすればいいだけのはず……」

 

 野槌蛇に言われ、違和感に気付いた雨乃。そこから導き出す行動はーー……

 

「つまり、この試験は戦闘力を測るじゃなく……」

「能力を状況に合わせて、どう行動するかを審査する為か」

 

 野槌蛇の言葉に無言で頷く雨乃。

 

「そうなると、攻撃能力が低い俺達が取る行動は……」

「あぁ、参加者をサポートしまくるぞ!!」

 

 行動を決め、共に走り出す二人。すると前方に人影が見え、近付くと右ではハゲ頭の大男と青い瞳の狼犬が中型魔獣と交戦し、左ではコボルトが一人と一匹の隙を伺っていた。

 

「先輩! 右、交戦中! さらに左、コボルト接近してます!」

「コボルトは頼んだ! 俺は右をやる!」

 

 野槌蛇の指示によってコボルトに奇襲を仕掛ける雨乃。それを横目に野槌蛇は中型魔獣に視線を向けて観察し始める。

 その魔獣の顔には目や鼻がなく口しかない。頭部には本来なら角があったであろう部分は切り落とされているが、力強い四肢はまともに攻撃を受ければ大きなダメージを貰ってしまう事を予想できる。

 

 ……こいつは、一年前に他の企業と合同で解体した魔獣と同じだな……となると、こいつの有効な手段は……

 

 冷静に分析し、着けていた黒いパイナップルのような形状をした小さな塊を取り出した。

 

「自分の目と耳を塞げ! 無理なら離れろ!!」

 

 交戦中の一人と一匹に大声で伝えると銀色のピンを抜き、中型魔獣に向かって投げた。魔獣から離れた一人と一匹の頭上を黒い塊が通過し、魔獣の顔の前で破裂した。

 直後、強い光と爆音が辺りに響いた。

 

「グガァアァァアアァァァァ!!」

「スタングレネード!?」

「こいつは退化した目の代わりに聴覚が発達してる! そこを狂わしちまえば後は的だ!」

 

 投げたのは音と光で相手を足止めする道具に驚くハゲ頭の大男に野槌蛇は苦しむ魔獣を尻目に助言する。

 

「あんたら腹だ! アイツは他に比べて腹の皮膚が薄い! 腹を狙え!」

「サポート感謝する」

「え!? 犬喋った!?」

 

 野槌蛇の助言を聞き、狼犬は自身の背中に大砲を作って魔獣の腹部に目掛けて銃撃を始める。遅れてハゲ頭の大男とスタングレネードの光と音に寄ってきた他の参加者も魔獣に攻撃を始める。

 その様子を見た野槌蛇は雨乃と合流してすぐに移動した。

 

「いけますね!」

「あぁ、こちとら何年も数えきれねぇ魔獣を解体(バラ)してきたんだ」

 

 雨乃の言葉に答える野槌蛇。彼の口元は追い風が吹き始めた事に口角が少し上がっている。

 

 ……よし、魔獣の力を使わなくても戦える!! この調子で今までのポカを帳消しにしてやる!!

 

「次は俺が投げる! 援護をお願いしま――……」

 

 しかし、彼らは浮わついていたせいか頭から抜けていた。

 特に野槌蛇は知っていたハズだった。

 

 現実は、残酷であることを。

 

「先輩!?」

「……ぐ……!」

 

 近くの瓦礫から中型魔獣が飛び出し、野槌蛇を剛腕で凪ぎ払い、野槌蛇は魔獣の反対側にある壁に叩きつけられた。

 後ろからの奇襲だった為に反応が遅れてしまった雨乃にコボルトが包囲する。

 壁に叩きつけられ、地面にうつ伏せで倒れる野槌蛇。幸いにもシールドが展開されない所からまだ失格ではない事に安堵するも、目の前にゆっくりと近付く中型魔獣が目に写る。

 

 ……咄嗟にガードしたとはいえ、ギリギリだな……待ち伏せしてたのか……

 

 地面に倒れるも立ち上がろうとするもダメージは小さくなかったのか足が震え、もたついてしまう。

 

 ……やべぇ……早く立たねぇとシールドを張られちまう……そうなったら全部……全部……

 

 焦る野槌蛇だが、現実は残酷にも魔獣の行動が一足早く野槌蛇に向かって突進した。

 

「先輩!!」

 

 雨乃の言葉がゆっくり聞こえ、当たればトラックさえも弾き飛ばす威力を誇る魔獣の突進が野槌蛇に襲いかかった。





 なお、『逆さ長巻』の制作者は日本刀の管理・製造・味見を人目を気にせず行える生粋の日本刀オタク。
 最近、知り合いのキャバ嬢に赤ちゃんプレイをしていた事が職場にバレたので、周囲からは千子村正から借りて【赤子バブ正】または【オギャ正】というあだ名を付けられた。
 なお、本人は開き直ったのか、それとも別に気にしてないのか刀関係の作業を行う時は口におしゃぶりを咥えている。

 ……頭、おかしい……


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