白兎は理想を抱え、幻想へと走る   作:幻桜ユウ

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第十話

 

 

 

 ランクアップの宴が終わった次の日の朝ーー

 

 「う、う〜ん」

 

 僕は目が覚めた。

 

 僕、いつの間に寝てしまったのだろうか? 確か、僕とアイズのランクアップを祝う為の宴が開かれて、僕は果実水を飲んでいて、その後はーー

 

 ダメだ。全然思い出せない。夜遅かったし、眠くなってしまったのだろうか? 僕の体は5歳児だし、あり得なくもないんだけど。何でだろうか? 絶対に思い出してはいけないようなそんな気がする。思い出したら最後、死が訪れそうなそんな気がする。よし、思い出すのやめよう!

 

 ふと、気づいた。ここは僕の部屋ではないことに。もっと言うと、とても女の子らしい部屋だ。

 

 ・・・・・・なんか、部屋の机に僕に似た人形があるような気がするけど、気にしちゃいけない! そう! あれは、そうだ! きっとアルミラージ似の人形なんだ! そうに違いない!

 

 僕は半ばいや、完全に現実逃避しながらベッドに潜り込もうとした。

 

 うん? 何か妙な膨らみが・・・・・・。この部屋の様子と膨らみの大きさから察するに・・・まさか、

 

 僕は布団を剥ぎ取った。そこにはーー

 

 「すーすー」

 

 すやすやと寝ているアイズがいた。

 

 は〜。これにはため息を吐かざるを得ない。

 

 アイズ。僕の大好きな大好きなお姫様。子供の頃は本当にお転婆だったんだね。前世のリヴェリアさんから聞いてた通りだよ。

 

 僕はアイズの頭を撫でる。

 

 「んっ・・・すー」

 

 アイズはそれに少し反応したが、どうやら起きないようだ。

 

 全く、そんなに無防備だとーー

 

 僕はアイズの耳元に顔を近づけると

 

 「わる〜い男に食べられちゃうよ?」

 「ッ!?」

 

 そう呟くと、アイズは肩をビクッとさせた。

 

 「ふふっ。やっぱり起きてたね。アイズ」

 「む〜。その声と殺気はズルくない?」

 「起きない方が悪いよ」

 

 アイズが言った通り、自分の声を少し変え、殺気を混ぜた。まぁ、変えたと言っても、アルゴノゥトの声に寄せただけだし、殺気だって微量だ。

 

 「む〜。とりあえず、いつも通り訓練しよっか。でも、今日は庭でしよう。あくまで調整用の」

 「そうだね」

 

 僕はとりあえず、服が昨日のままだった為、着替えに行こうと部屋を出た。

 

 ふ〜。アイズが復讐以外にも興味を持ってくれているのか、速く強くなろうとしても余裕がない感じはしない。

 

 アイズの心は僕には推し測れないけど、きっと良い方ではあるだろう。

 

 でも、例え、君が僕を知らなくても僕は君の英雄であり続ける。そして、それは決してあり得ない『幻想』だ。だって、君はーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕が庭で体をほぐしていると、アイズがやってきた。

 

 アイズの格好は白いワンピース姿。

 

 そんな姿じゃ下着見えちゃうよ?

 

 と思ったが、どうやら短パン履いてきているらしい。

 

 それならワンピースじゃなくて良かったのでは? と思ったが、女の子は複雑なのだ。突っ込まない方が良い。

 

 「じゃあ、始めよっか」

 「そうだね」

 

 ここで、僕のスキル『理想昇華』について少し話をしよう。このスキルは簡単に言えば、抱く理想に応じて自分の今まで燃やしてきた理想を変化させるスキル。例えば、魔法『ファイアボルト』があったとしよう。速攻魔法でただ放つ魔法ではあるが、槍状と貫通力をイメージすれば、一点突破型のファイアボルトを放つ事ができる。他には、強さを望めば、火力が増す。『色』はーーまだよく分からない。

 

 とりあえず、そのスキルを使って僕はアルゴノゥトの時に使っていた『雷霆の剣』を短剣状にして、作り出した。

 

 質量は減っていて、まさに理想通り。しっかり手に馴染む。

 

 アイズは身の丈には合わない愛剣『デスペレート』を抜いた。

 

 う〜ん。本当によくそれで動けているよなぁ。僕には無理だ。

 

 「? 新しい剣?」

 「ん。そうだよ。新しいスキルを使ってみようと思ってね」

 「そっか。・・・・・・こっちから行くよ」

 

 すると、アイズは僕の目の前にまで近づき、剣を突き出す。

 

 僕はそれを横から短刀を当てて、軌道を逸らした。

 

 アイズはそれを当然だと思っていたのか、すぐに剣を引き戻し、二突き目を放つ。

 

 さっきより速い!

 

 さっきとの緩急が激しい。だが、まだ追いつける。さっきと同じように短刀で弾きつつ、一気に肉薄する。

 

 ここからはーー速度と手数にものを言わせた攻撃を開始する。

 

 僕は『雷霆の短刀』をことごとく繰り出し、アイズは身の丈に合わない長剣を素早く動かし、僕の攻撃を全て防御する。

 

 だが、僕は攻撃をやめない。一瞬でもやめた時、形勢が逆転するのは目に見えている。

 

 しかし、アイズも大人しく防御するだけではない。防御と同時に攻撃を仕掛けている。これが7歳児の戦闘技術なのはどうなんだ?

 

 自分(5歳児)のことを棚に上げて、アイズと同じく高度な戦闘を続けるベル。

 

 「んっ。流石だねベル」

 「こっちは大変なんだけどね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 凄まじい剣戟を繰り広げるベルとアイズ。その戦いを2階から見守る人が居た。

 

 「全く、朝からよく動くものだ」

 「良いじゃない。子供は元気が一番よ」

 「それはそうだが」

 

 リヴェリアとメーテリアだった。

 

 リヴェリアは二人の様子にため息を吐き、メーテリアはまあまあと言って、リヴェリアを宥める。

 

 「とりあえず、二人には後でみっっっっちり座学を開いてやる」

 

 リヴェリアのその言葉に・・・・・・

 

 ビクッ

 

 今も庭で戦う二人が反応したのは言うまでもない。

 

 

 


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