白兎は理想を抱え、幻想へと走る   作:幻桜ユウ

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第十二話

 

 

 今、僕は街を歩いている。

 

 特に用がある訳でもなく、ただの散歩である。

 

 『暗黒期』である現在。前世では、本当に闇に包まれていたそうだ。

 

 じゃあ、今は? 

 

 今はとても活気付いている。

 

 その理由としては闇派閥の活動をしっかり抑えているからだ。

 

 都市内は〈ロキ・ファミリア〉、〈フレイヤ・ファミリア〉、〈アストレア・ファミリア〉、〈ガネーシャ・ファミリア〉が。

 

 都市外は〈アルテミス・ファミリア〉等のファミリアが。

 

 皆がしっかりと手を取り、闇派閥を鎮圧しているのだ。

 

 だが、同時に懸念事項がある。

 

 こうして、闇派閥から守っているのは良いが。

 

 それによって、神エレボスが想像以上の戦力の増強を図ってくる可能性がある。

 

 正直、レベル7冒険者の『暴喰』のザルドと『静寂』のアルフィア以上の何かと言ったら、『神獣の触手』しか思いつかない。

 

 うん。それ以上は本当にやめて欲しい。切実に。

 

 僕は頭の中で想像を働かせながら、されど、顔には全く出さずに移動する。

 

 すると、そうして歩いている内に見慣れた廃教会の前に着いた。

 

 あぁ。とても懐かしいなぁ。ここが僕とヘスティア様の最初の場所。

 

 折角来たんだし、中を覗いてみようかな? 手入れもしてなさそうだし、掃除もしようかな?

 

 そして、僕は廃教会の扉を開けて、中に入った。

 

 

 うん。結構埃被ってるし、椅子とか散乱している。地下室に入りたくても、これじゃどうしようもないな。

 

 僕は苦笑しながら、スキル『幻想』と『理想昇華』で『炎の魔剣』を変化させて、『ゴミのみ焼却する炎の魔剣』を作った。

 

 本当に便利だなこのスキル。

 

 さて、僕は『掃除(笑)の魔剣』を構えて、魔力を操作し、加減を調整。そして、振り下ろす!

 

 ゴォォォォォ! 

 

 魔剣から出た炎は廃教会の中身を燃やして、数秒後に発散させた魔力を魔剣に収束させた。

 

 炎から現れたのは先程とは比べられないめっちゃ綺麗なった内装。

 

 「うんうん。綺麗になった。便利すぎて若干僕も引くよ」

 

 地下室も綺麗なっている。今更だけど、本当に僕は恵まれてるなぁ。

 

 さて、折角ここに来たんだし、本でも読もうかな。

 

 そして、さっきの魔剣を消して、眼鏡と本を出した。

 

 ちなみに眼鏡は伊達。目は悪くないんだけど、前世でも眼鏡かけて本読むことがあったから、癖になっている。

 本は冒険譚である。内容は『眷属の物語(ベル・クラネル)』。僕の前世のスキル『眷属冒険譚(メモリアフレーゼ)』によって自動記録された本である。

 暇があれば、こうやって本を読んでいる。

 

 さて、今日は何を読もうかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の名はアルフィア。〈ヘラ・ファミリア〉のレベル7冒険者で二つ名は『静寂』だ。

 

 今は特にすることがないため、妹ーーメーテリアがお気に入りだった廃教会に向かっている。

 

 オラリオを戦場にする前に訪れておこうと思った。

 

 そして、廃教会? に着いたのだが、これはどういうことだ。

 

 廃教会だった筈のものがすっかり綺麗な新品同然の教会になっている。綺麗になりすぎて、周りから浮いているぐらいである。

 

 いつの間に新しく建ったんだ? というか、何故ここだけなんだ?

 

 ・・・中に人がいる気配がするが、別に嫌な気配ではない。寧ろ、どこか近しい感じがする。

 

 色々疑問はあるが、とりあえず中に入る。

 

 

 これは凄いな。外見からでも想像していたが、中も相当なものだ。

 

 周りを見渡していると、最前列の席に座っている少年がいる。

 

 一瞬、自分の目を信じられなかった。当たり前だろう。どうしてここに妹の子がーーベルがいるのか私には全く分からなかった。

 

 ベルは鼻歌を歌いながら、本を読んでいる。

 

 5歳の少年の筈だが、本を読む様子は中々どうして様になっている。

 

 すると、ベルはこちらに気づいたのか鼻歌を止め、本を閉じて、眼鏡を外し、こちらに向いた。

 

 そして、口を開いた。

 

 「どうも、お姉さん。いえ、貴方は僕のことを分かっているようですので、他人行儀は辞めましょう。・・・・・・初めまして、アルフィアお義母さん」

 

 ベルの口調は随分大人びている。というより、ベルが私の事をお義母さんと呼んでいる。いや、おばさんとは言われたくないのだから、良いのだが。

 

 「やっぱりベル・・・なのか?」

 「うん。そうだよ」

 

 本人からは嘘の気配はしない。

 

 ああ、私の心は歓喜に包まれている。ベルがどうしてここにいるのか。ベルの様子とかそんなのはどうでも良い。ベルがここにいるそれだけ良い。

 

 「そうか。ベル・・・抱きついても良いか?」

 「え? う、うん。良いよ。はい」

 

 ベルは私の急な提案に驚きながらも了承し、腕を広げた。

 

 私はすぐにベルに抱きついた。

 

 「ベル」

 「うん。どうしたの?」

 「ベルは冒険者なのか?」

 「うん。そうだよ」

 「ベルは英雄になりたいのか?」

 「うん。なりたい」

 「そうか、そうか」

 

 ここにいた。英雄の器が。私の『失望』も『絶望』も全て消し去ってくれるような英雄の器が。

 

 私はみっともなく甥に抱きついて静かに泣いた。

 

 私が泣いている間、ベルはずっと私の頭を撫でてくれた。「よく頑張ったね」「僕はここにいるよ」と声をかけながら。

 

 全く。この私を泣かせるのはメーテリアとお前だけだ。

 

 

 

 

 

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