白兎は理想を抱え、幻想へと走る   作:幻桜ユウ

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第十四話

 

 

 

 アルフィアお義母さんに一通り話し終わり、もう帰る時間になった。

 

 「お義母さん。また会いましょう」

 「・・・ああ、そうだな」

 「では」

 

 僕は先に教会を出ようとした。

 

 すると、お義母さんが僕の手を取った。

 

 「どうしたの?」

 「・・・いや、すまない。何でもないんだ」

 

 何でもないような顔をしていない。

 

 もしかして、寂しいのかな?

 

 「はあ、全く。仕方のない人ですね。これをどうぞ」

 「これは?」

 

 僕は眼晶(オクルス)を加工したネックレスをあげた。

 

 効果は通常通り、通信型魔道具。

 

 ただ、違うのは情報をオクルスを通じて、頭の中で交換するという点だ。

 

 それを説明したら、とても驚かれた。

 

 「凄いな。こんな魔道具を作れるとは」

 「作るとは言っても、既製品のオクルスをスキルを使って変化させただけだから、あまり凄くないんだけどね」

 「いや、それでも凄いぞ」

 「う、うん」

 「とりあえず、これでベルと連絡を取れるのか?」

 「まあね。僕にも都合があるから、絶対とは言えないけど」

 「分かった。ありがとうベル」

 

 アルフィアお義母さんは女神顔負けの笑顔を浮かべ、感謝してくれた。

 

 待って待って! めっちゃ美しいから! 耐性が下がってる僕には辛いから!

 

 「こ、これで良いかな?」

 「ああ、すまないな。引き止めてしまって」

 「そう思うなら、『こっち』に来る?」

 「うっ。いや。行かない」

 

 めっちゃ揺らぎまくってるじゃん。

 

 今ならさっきの仕返しできるか?

 

 「ねえ、お義母さん。ちょっと顔こっちに近づけて」

 「ん? ああ」

 

 お義母さんが膝を折って、僕に顔を近づけた。そして、僕はお義母さんの耳元でこう言った。

 

 「お義母さんが『そっち』にいるならーー」

 

 ーー僕がアルフィアをそこから奪ってみせるから。

 

 「っっ!?!?」

 

 お義母さんは顔を真っ赤にして僕から離れた。

 

 うんうん。美人なお義母さんが照れるのは可愛いね。

 

 「じゃあね。お義母さん」

 

 僕は今度こそ、教会から出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あれは、ズルいぞ。ベル」

 

 まだ、顔が赤い。さっきまでの子供なベルではなく、大人で男としての魅力を充分に纏っていた。

 

 私は現役時代では、『才禍の怪物』などと恐れられていた。

 

 そのためか、私に近づく男なんていなかった。(あのゼウスのような変態共は別として)

 

 だから、私は男と関係を持ったこともなければ、興味も無かった。

 

 そして、今、こうしてベルの男の魅力に当てられ、私の心は完全にベルに偏ってしまった。

 

 色恋沙汰とは無関係であったため、一気に堕ちてしまった。

 

 私は今、変な顔をしていないだろうか?

 

 多分だが、これをかつての仲間を見られてしまえば、揶揄われるに違いない。神には「甥に惚れるのはヤバいな」とか言われそうだが、お前らが言うなと言いたい。

 

 全く、ベルは誰にでもああやってるんじゃないだろうな?

 

 あんな事されれば、大体の女性は簡単に堕ちるぞ。

 

 それこそ神でさえもだ。

 

 「あれで、一途だというのだからタチが悪い。前世では沢山の女を泣かせたのだろうな」

 

 だが、今世はどうだろうか? 

 

 本人は一途のつもりだそうだが、それ以上に愛を欲する傾向が見られる。

 

 神フレイヤ辺りが騒ぎそうだが、どうだかな。

 

 とりあえずは良いだろう。私はベルの家族なのだ。私がずっとベルの側にいても何も言われないだろう。

 

 

 

 着々と進むベルの家族ハーレム。

 

 そして、今ここで言おう。

 

 家族だからといって、血が繋がっている必要があるのか?

 

 いや、無い!

 

 ならば、家族が十人ぐらい増えたって問題ないだろう!

 

 そうだろう! みんな!

 

 ↑誰に言ってんだこいつは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日ーー

 

 今日も今日とて、街を散歩中。

 

 そしたら、今日はーー

 

 「フレイヤ様がお呼びだ。ついて来てもらおう」

 

 ・・・『猛者』オッタルさんに会っちゃった。

 

 「まぁ、良いですけど。どこに行くんですか?」

 「『戦いの野(フォールクファング)』だ」

 「うぇっ!?」

 

 何で、そっち!? 嫌な予感しかしないんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕はオッタルさんについて行き、〈フレイヤ・ファミリア〉の本拠地『戦いの野(フォールクファング)』の館に着いた。そして、フレイヤ様の自室に着き、オッタルさんは扉をノックし、報告した。

 

 「ベル・クラネルを連れて参りました」

 「ありがとう。オッタル。中に入って良いわよ」

 「失礼します」

 「し、失礼します」

 

 一応礼儀として、僕も一声かけながら中に入った。

 

 

 「よく来てくれたわね。ベル」

 「まぁ、暇だったので。あと、『魅了』を使うのやめて下さい」

 

 僕がフレイヤ様にそう言うと、フレイヤ様は頬を膨らませて、

 

 「・・・本当に効かないのね」

 

 フレイヤ様は会う度に僕に『魅了』をかけてくる。最初から効かないと言っているのに全く止める気配がない。

 

 「まぁ、別に良いわ。私が言いたいのはこの前、貴方が私に向かってしたことよ」

 

 この前というと、あれかな。酔わせたやつ。

 

 「いや、いくら何でも、あれは見過ぎです。あれで止めなかったらダンジョンの中まで見る気だったでしょう?」

 「・・・そんな事無いわよ」

 「そう言うなら、こっちを見て言ってください」

 

 フレイヤ様は僕の問いに顔を背けて答える。

 

 うん。嘘ですね。僕でも分かる。

 

 「今まで通りであれば、気になりませんでしたが、あれはダメです。普通に身体中に悪寒が走りました」

 「む〜」

 「そんな顔してもダメです」

 

 フレイヤ様は何というか外見と中身が一致してない。外見は麗しい美女なのに中身はまるっきり少女である。

 

 「見るだけが嫌なら、暇があれば、こうしてお話もしますし」

 「・・・本当に?」

 「貴方、神ですから嘘なら分かるでしょう?」

 「そうね」

 「というか、暇ならば、『姿』を変えて、街に出てみては?」

 「何故、貴方がそれを知っているのかはさて置き、それは良い案ね」

 

 ・・・後ろでオッタルさんがギョッとする気配を感じる。

 

 諦めてください。どうせ、この柱はやります。

 

 「そうねぇ。ミアの酒場の店員になろうかしら? その前に変える『姿』を見つけないとね〜」

 

 何だかごめんなさい。シルさん。ヘルンさん。

 

 今はまだ会ってない二人に謝る。

 

 「今日は良い事を聞けたわ。ありがとうベル」

 「ええ、まぁ。それなら良かったです」

 

 フレイヤ様がとても楽しそうだ。これからフレイヤ様に関わる人には頑張ってもらおう。僕は知らない。

 

 

 

 

 


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