白兎は理想を抱え、幻想へと走る   作:幻桜ユウ

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第二十一話

 

 「昨日は助かったわ。ベル君」

 「あはは・・・。お役に立てたのなら良かったです」

 

 昨日ーーリューさんの悩みを解決し、お母さんとアストレア様に散々弄ばれ、そのまま寝てしまった。

 

 起きた時、もう昼だったことに驚いたと同時に、何故か僕の体の上にアイズがいたのはかなり驚いた。そして、僕の右腕にはお母さんが、左腕にはアストレア様が抱きついていて、全く身動きを取ることもできず、アリーゼさんに助けて貰った。

 

 ・・・というか、アストレア様もお母さんも僕が子供だからなのか、惜しみなく僕にーー正確には腕にだがーー胸を押し付けていた。どちらもそれなり・・・いや、かなりのモノを持っている。子供だからこの状況になってしまったのか、そして、子供だから体が反応しなくて良かったと思った。

 

 アストレア様って、『正義』を司る神の筈だよね? これは良いのか? 一応、僕は子供だから? まぁ、処女神のヘスティア様でもかなりアプローチが激しかったし、逆にそういう神ほど、顕著に現れるのかな? 

 

 ・・・そういえば、エルフが一度燃えると面倒臭いとか聞いたことがある気がする。やっぱり、そういうのに縁遠い人ほど、溜まったものが一気に出るのだろうか? 

 

 すると、アストレア様がニッコリと微笑みながら言った。

 

 「ベル君? 何か変な事考えてる?」

 「アストレア様って、恋したことないんですか?」

 

 僕は聞かれた瞬間、一気に現在の思考を断ち切り、別の事に思考をシフトさせた。

 

 危ない危ない。これに関しては『スキル(幻想)』の効果は期待できない。こういう時は思考をシフトさせ、『嘘』というモノを無くす。ちなみにこれは前世のヘルメス様から教えてもらった。「これをすれば、スパイ作戦で神相手でもハニートラップができるぞ!」というよく分からない事も言っていた。僕、男なんだけどなぁ。

 

 さて、アストレア様は僕の質問に対し、顔を赤くしている。しどろもどろながらもしっかり答えた。  

 

 「・・・あ、ある・・・わよ?///」

 「えっ、そうなんですか!?」

 

 これには僕もびっくりせざるを得ない。リューさんから「アストレア様はとても気高いお方です。有象無象の男なんかに靡くような方ではありません(ベルは違う・・・どころか、とてもお気に入りになるでしょうけどね)」とか聞いたから、てっきり本当にそういうのと無縁なんだと思っていたけど、やっぱり、アストレア様も女の子なんですね。

 

 「どうしたの、ベル? 何だか、生暖かい目を向けられている気がするわ」

 「いえ、気のせいですよ」

 

 うん。何だか、『男に興味が無さすぎて、何の色恋沙汰も無かった自分の愛娘が急に恋する乙女の顔をし始めた』時のような感動がある。・・・だが、現実とは非情。親としては自分の愛娘に変な虫が付かないようにしたい・・・というのを建前にして、自分の愛娘が自分の下から離れていくのを許容できる筈がない!! という本音があるものだ。

 

 妙に実感がこもり過ぎているベル。

 

 「ちなみに、それは昔ですか? それとも、現在進行形ですか?」

 「な、なんで、そんなに聞いてくるの!?」

 「気になるので! 内容によっては(前世の)リューさんに報告しなければならないので!」

 「どうしてそこでリューが出てくるの!?」

 

 うんうん。中々に焦ってますね。こういう初々しい反応を見ると、とても癒される。・・・別に昨日の仕返しって訳じゃないですよ? ええ、別に何か思うところがあるとかそんなんじゃないですよ?

 

 僕は誰に言い訳しているのだろうか? まぁ、良いや。そういうのを抜きにしても、個人的に興味はとてもある。

 

 「さあさあ、アストレア様。素直に白状した方が良いですよ」

 「メーテリアーー! 助けてーー! ベル君がいじめるーー!」

 「あらあら、よしよし」

 

 ついぞ、アストレア様はお母さんに泣きついた。

 

 虐め過ぎただろうか? というか、アストレア様。そっち方面に弱過ぎませんか? さらりと流すと思っていたんだけど。

 

 僕はお母さんに抱きつくアストレア様に近づき、謝る。

 

 「ごめんなさい、アストレア様。つい、いじめちゃいました。とても可愛かったですよ?」

 「〜〜〜///(そういうのがズルいのよ!)」

 「あらあら、アストレア。顔真っ赤よ?」

 

 お母さんに揶揄われ、さらに顔を真っ赤にさせるアストレア様。

 

 「親子揃ってドS・・・」

 

 アストレア様がそう呟いたのを僕は偶然聞いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「モグモグ」

 

 アイズは相変わらず、じゃが丸くんを食べている。二年経っても、やっぱり小動物にしか見えない。

 

 そして、こちらに全く意識を向けない。

 

 アイズっていつもじゃが丸くんを食べてる時って何を考えているのだろうか?

 

 まぁ、僕には何も分からないけど。

 

 「アイズ。そろそろ帰ろう。そういえば、何でここに来たの?」

 「ん。一緒にアミッドの所に行こうと思って」

 「アミッドさんに? どうして? 回復薬(ポーション)の買い出し?」

 

 僕の問いにアイズは首を横に振る。

 

 「アミッドと散歩の約束をしたから、ベルも行こ?」

 「女の子同士の約束に僕が入っても良いの?」

 「ん。アミッドも喜んで歓迎してくれると思う」

 「まぁ、とりあえず、行ってみるだけ行ってみる。ダメだったら、先に帰る事にするよ」

 「ん」

 

 そして、僕達は【ディアンケヒト・ファミリア】の本拠地(ホーム)へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 


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