そうして、充実した休日を過ごした。
そして、僕の『物語』は今日この日、閉じてしまうだろう。
だが、次の『物語』が幕を開ける。
さあ、『◾️◾️◾️◾️◾️』を見に行こう。
僕は三人と別れ、夕焼け色に染まる街を歩いていた。
そして、僕は元廃教会へと辿り着き、扉を開ける。
そこにいたのは、
「ようやく来たか。待ちくたびれたぞ」
神エレボス。
「本当に『アイツ』の瞳と同じなんだな。雰囲気はまるで違うが」
ザルドさん。
「当たり前だ。ベルが『あんな奴』と同じな訳ないだろう」
アルフィア義母さん。
そこにいたのは
僕は三人と会う約束をしていた。
目的はただ一つ。
僕の『理想』と『幻想』の決定。
僕は今日この時をもって自分の魂の色を一つにする。
「…………エレボス様。見届ける準備はできていますか?」
「できてないって言ったら?」
「無理やりします」
「おいまて。そこは止めろよ」
僕とエレボス様でそんな馬鹿なことを言い合っていると、イライラした様子のアルフィア義母さんが。
「神エレボス。良い加減にしろ。無駄な事で時間を取らせるな。いつ、私達が気づかれるか分からないんだ。さっさとやるぞ」
と言うので、僕は大人しくやる事にする。あくまで、『僕は』だが。
「おーい。アルフィアー? ベルが俺と喋っている事に嫉妬しているのかー?」
アルフィアさんを煽るエレボス様。凄いなー。ヘルメス様と同じくらい度胸があるなー。ザルドさんはもう目を背けてる。そんなに怖いのか。
「……」
「おーい。無視かー? いやー。遅れてやって来た恋ごこー「【
「全く。ベル。早く始めてくれ」
「うん」
神様って何で痛い目を見ても止めようとしないのだろうか? 本当にその神経の図太さは凄い。
さて、これ以上長引くとアルフィア義母さんの怒りそうだから、早くやる事にしよう。
「【英雄王の名において世界に命ずる。英雄の器に正義を注げ。英雄の炉に悪をくべろ】」
対象は自分。見届け人として三人の参加。世界は僕に試練を与える為、世界の時は静止する。
「【英雄の試練】」
そして、僕の意識は闇へと落ちていった。
静止した世界の中で動く者が一人。
「始めるんだね。ベル」
その一人は目を閉じながら、愛する少年を思い浮かべる。
「待ってるよ。ベルが一体何処に辿り着くのか。帰ってきたら、私に教えてね。だから」
その一人は願う。
「ベルを支えてあげて、
僕は目を覚ました。
周りを見渡してみるもそこには何もない。
上も下も前も後ろも右も左も。何一つとして、ここには何もない。
自分が立っているかも分からない。
だが、ただ一つだけ分かる。
僕の目の前には
何もなかったはずの空間から少しずつ光が現れてきた。
それは徐々に形を作っていき、ついには僕と全く同じ容姿をした人が二人現れた。
一人は黒竜の装備を纏い、歴戦の戦士としての風格がある。
もう一人は『雷霆の剣』と『炎の魔剣』を携えた道化の雰囲気がある。
言わずもがな、前世と前前世の自分だ。
そして、道化の如き英雄が最初に口を開いた。
「初めまして、『ベル・クラネル』。私は『アルゴノゥト』。っていうか、同一人物に『初めまして』って可笑しくない?」
「それを言うなら、僕の方なんて名前を同じだからね?」
道化の言葉に
「そりゃ、僕は転生と言っても、過去からのリスタートみたいなものだから、仕方ないのもあるんだけどさ?」
「まぁ、そうしなければ『僕の願い』は叶わなかったから……」
少女の英雄は「それもそうだね」と苦笑する。
僕はそろそろ本題に入る事にした。
「それで? どうして、君達がここにいるの? もしかして、今回の試練は君達が相手なの?」
「いーや? 私達はただの介入者。本来ならば、私達と会わずに試練へと進む事になる」
「ここで介入しなかったら、とんでもない結末を産みそうだったからね」
「まぁ、そうだね。僕は『確実に』アイズを救おうとして、他を疎かにするだろうね」
「分かっているならば、話が早い。それは君の『本当の願い』ではないことは分かっているのだろう?」
「まぁ、ね」
僕の『願い』はできるだけ早くアイズを救う事。『本当の願い』とは──
「簡単な話、世界は君に無理強いをするつもりは無いようだ。まぁ、ある程度の拘束力はあるだろうけどね?」
「つまり、ある程度の条件をこなしてさえいれば、大体が自由なのか」
「そう言う事だな。しかし、君の『本当の願い』を叶えるのであれば、君は世界に縛られる。それが『ルール』であり、世界自身もどうにもならない事だ」
「その上で、僕はどちらの選択をするか……か」
「僕としては正直、どちらでも良い。君がやりたいようにやれば良いと思う。だけど、どうやら
そこで僕は先程からずっと目を閉じ黙っている道化を見た。
「アルゴノゥト。君はどう思うんだい?」
少女の英雄は問いかける、そこでやっとアルゴノゥトは口を開く。
「なぁ、私は君達をどうやって区別すれば良いのだろうか?」
「「……はぁ?」」
何言ってんだ、この道化は。
流石は同一人物。見事に心の中が一致した。
「いや、さっきからずっと考えていてな。子供ベル、大人ベルにしようかなと思ったのだが、子供ベルの方が歳を取っているからどうなんだろうと思ってな」
「まさか、自己紹介の時からずっと考えていたのか?」
「ん? 何を当たり前のことを言っている。むしろ、それ以外に何を考えろと?」
この道化は……。まぁ、こうであるからこそ『喜劇』を作り出せたと思えるが。
「じゃあ、アルゴノゥトの中では答えは出てるの?」
「ああ、答えも何も、これしか無いだろう?」
そこで道化はまさに道化の如く僕達を驚かせた。
「
「「……はぁ?」」
本日、二度目の驚き。
「何を言ってるんだ。それができないからこそ、今ー「誰ができないと決めたんだ?」ーは?」
「『英雄王』。いつからお前はそんなに『傲慢』になったんだ?」
「『傲慢』って、別になってなー「では、何故、限界をそこだと決めつけたのだ? お前が『自分にできない事は絶対に不可能』だと言っているようなものだぞ?」ーッ!?」
これには僕も驚いてしまう。
確かに、僕はいつの間にか思っていたのかもしれない。自分が最強となって、これ以上特別な何かはできないと。
「英雄は『綺麗事を成し遂げる』者だ。『綺麗事』は『夢』や『幻想』とも言っても良い。とにかく、それすなわち、『天秤』を破壊する者。選択肢なんて有って無いような者。限界なんて何度でも超える者。
それを『英雄』と呼ぶのではないか?」
「「ーッ!」」
「ならば、全てを叶えてみせよう。アイズを救い、世界を救い、世界の『ルール』なんて超えて、『最後の英雄』となる。それは『僕達』の『原点』だろう?」
そうか、いつの間にか忘れていたのか。僕の『原点』──
『もし、英雄と呼ばれる資格があるとするならば──』
『剣を執った者ではなく、盾をかざした者でもなく、癒しをもたらした者でもない』
『己を賭した者こそが、英雄と呼ばれるのだ』
『仲間を守れ。女を救え。己を賭けろ』
『折れても構わん、挫けても良い、大いに泣け。勝者は常に敗者の中にいる』
『願いを貫き、想いを叫ぶのだ。さすれば──』
『──それが、一番格好のいい
また、思い出す。
『他人に意思を委ねるな』
『これは──お前の
うん。そうだね。お祖父ちゃん。
僕は忘れていたよ。
でも、大丈夫。
僕の願いは──『本当の願い』は──
『皆を救う英雄になる事』
次回、ベル覚醒
アンケートに答えてくれた皆様ありがとうございます。
最初のアンケートからは『家族ハーレム』を。
二個目のアンケートからは『ハーレム候補の全員追加』を。
三個目のアンケートからは『ベルアイの娘を双子で出す』を。
これからもアンケートを度々出していくので、気が向いたら答えてください。