白兎は理想を抱え、幻想へと走る   作:幻桜ユウ

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第二十四話

 

 

 そうして、充実した休日を過ごした。

 

 そして、僕の『物語』は今日この日、閉じてしまうだろう。

 

 だが、次の『物語』が幕を開ける。

 

 さあ、『◾️◾️◾️◾️◾️』を見に行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は三人と別れ、夕焼け色に染まる街を歩いていた。

 

 そして、僕は元廃教会へと辿り着き、扉を開ける。

 

 そこにいたのは、

 

 

 「ようやく来たか。待ちくたびれたぞ」

 

 

 神エレボス。

 

 

 「本当に『アイツ』の瞳と同じなんだな。雰囲気はまるで違うが」

 

 

 ザルドさん。

 

 

 「当たり前だ。ベルが『あんな奴』と同じな訳ないだろう」

 

 

 アルフィア義母さん。

 

 そこにいたのは迷宮都市(オラリオ)の敵。

 

 僕は三人と会う約束をしていた。

 

 目的はただ一つ。

 

 僕の『理想』と『幻想』の決定。

 

 僕は今日この時をもって自分の魂の色を一つにする。

 

 

 「…………エレボス様。見届ける準備はできていますか?」

 「できてないって言ったら?」

 「無理やりします」

 「おいまて。そこは止めろよ」

 

 

 僕とエレボス様でそんな馬鹿なことを言い合っていると、イライラした様子のアルフィア義母さんが。

 

 

 「神エレボス。良い加減にしろ。無駄な事で時間を取らせるな。いつ、私達が気づかれるか分からないんだ。さっさとやるぞ」

 

 

 と言うので、僕は大人しくやる事にする。あくまで、『僕は』だが。

 

 

 「おーい。アルフィアー? ベルが俺と喋っている事に嫉妬しているのかー?」

 

 アルフィアさんを煽るエレボス様。凄いなー。ヘルメス様と同じくらい度胸があるなー。ザルドさんはもう目を背けてる。そんなに怖いのか。

 

 

 「……」

 「おーい。無視かー? いやー。遅れてやって来た恋ごこー「【(ゴス)ー】」ー待て、言い過ぎた。謝る。反省はしないが」

 「全く。ベル。早く始めてくれ」

 「うん」

 

 

 神様って何で痛い目を見ても止めようとしないのだろうか? 本当にその神経の図太さは凄い。

 

 さて、これ以上長引くとアルフィア義母さんの怒りそうだから、早くやる事にしよう。

 

 

 「【英雄王の名において世界に命ずる。英雄の器に正義を注げ。英雄の炉に悪をくべろ】」

 

 

 対象は自分。見届け人として三人の参加。世界は僕に試練を与える為、世界の時は静止する。

 

 

 「【英雄の試練】」

 

 

 そして、僕の意識は闇へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静止した世界の中で動く者が一人。

 

 「始めるんだね。ベル」

 

 その一人は目を閉じながら、愛する少年を思い浮かべる。

 

 「待ってるよ。ベルが一体何処に辿り着くのか。帰ってきたら、私に教えてね。だから」

 

 その一人は願う。

 

 「ベルを支えてあげて、アル(・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は目を覚ました。

 

 周りを見渡してみるもそこには何もない。

 

 上も下も前も後ろも右も左も。何一つとして、ここには何もない。

 

 自分が立っているかも分からない。

 

 だが、ただ一つだけ分かる。

 

 僕の目の前には誰か(・・)がいると。

 

 何もなかったはずの空間から少しずつ光が現れてきた。

 

 それは徐々に形を作っていき、ついには僕と全く同じ容姿をした人が二人現れた。

 

 一人は黒竜の装備を纏い、歴戦の戦士としての風格がある。

 

 もう一人は『雷霆の剣』と『炎の魔剣』を携えた道化の雰囲気がある。

 

 言わずもがな、前世と前前世の自分だ。

 

 そして、道化の如き英雄が最初に口を開いた。

 

 

 「初めまして、『ベル・クラネル』。私は『アルゴノゥト』。っていうか、同一人物に『初めまして』って可笑しくない?」

 「それを言うなら、僕の方なんて名前を同じだからね?」

 

 

 道化の言葉に少女の英雄(ベル・クラネル)が呆れながら言う。

 

 

 「そりゃ、僕は転生と言っても、過去からのリスタートみたいなものだから、仕方ないのもあるんだけどさ?」

 「まぁ、そうしなければ『僕の願い』は叶わなかったから……」

 

 

 少女の英雄は「それもそうだね」と苦笑する。

 

 僕はそろそろ本題に入る事にした。

 

 

 「それで? どうして、君達がここにいるの? もしかして、今回の試練は君達が相手なの?」

 「いーや? 私達はただの介入者。本来ならば、私達と会わずに試練へと進む事になる」

 「ここで介入しなかったら、とんでもない結末を産みそうだったからね」

 「まぁ、そうだね。僕は『確実に』アイズを救おうとして、他を疎かにするだろうね」

 「分かっているならば、話が早い。それは君の『本当の願い』ではないことは分かっているのだろう?」

 「まぁ、ね」

 

 

 僕の『願い』はできるだけ早くアイズを救う事。『本当の願い』とは──

 

 

 「簡単な話、世界は君に無理強いをするつもりは無いようだ。まぁ、ある程度の拘束力はあるだろうけどね?」

 「つまり、ある程度の条件をこなしてさえいれば、大体が自由なのか」

 「そう言う事だな。しかし、君の『本当の願い』を叶えるのであれば、君は世界に縛られる。それが『ルール』であり、世界自身もどうにもならない事だ」

 「その上で、僕はどちらの選択をするか……か」

 「僕としては正直、どちらでも良い。君がやりたいようにやれば良いと思う。だけど、どうやら道化(喜劇を望む英雄)は何か思うことがあるらしいよ?」

 

 

 そこで僕は先程からずっと目を閉じ黙っている道化を見た。

 

 

 「アルゴノゥト。君はどう思うんだい?」

 

 

 少女の英雄は問いかける、そこでやっとアルゴノゥトは口を開く。

 

 

 「なぁ、私は君達をどうやって区別すれば良いのだろうか?」

 「「……はぁ?」」

 

 

 何言ってんだ、この道化は。

 

 流石は同一人物。見事に心の中が一致した。

 

 

 「いや、さっきからずっと考えていてな。子供ベル、大人ベルにしようかなと思ったのだが、子供ベルの方が歳を取っているからどうなんだろうと思ってな」

 「まさか、自己紹介の時からずっと考えていたのか?」

 「ん? 何を当たり前のことを言っている。むしろ、それ以外に何を考えろと?」

 

 

 この道化は……。まぁ、こうであるからこそ『喜劇』を作り出せたと思えるが。

 

 

 「じゃあ、アルゴノゥトの中では答えは出てるの?」

 「ああ、答えも何も、これしか無いだろう?」

 

 

 そこで道化はまさに道化の如く僕達を驚かせた。

 

 

 「全てを超えて見せれば良い(・・・・・・・・・・・・)

 「「……はぁ?」」

 

 

 本日、二度目の驚き。

 

 

 「何を言ってるんだ。それができないからこそ、今ー「誰ができないと決めたんだ?」ーは?」

 「『英雄王』。いつからお前はそんなに『傲慢』になったんだ?」

 「『傲慢』って、別になってなー「では、何故、限界をそこだと決めつけたのだ? お前が『自分にできない事は絶対に不可能』だと言っているようなものだぞ?」ーッ!?」

 

 

 これには僕も驚いてしまう。

 

 確かに、僕はいつの間にか思っていたのかもしれない。自分が最強となって、これ以上特別な何かはできないと。

 

 

 「英雄は『綺麗事を成し遂げる』者だ。『綺麗事』は『夢』や『幻想』とも言っても良い。とにかく、それすなわち、『天秤』を破壊する者。選択肢なんて有って無いような者。限界なんて何度でも超える者。

それを『英雄』と呼ぶのではないか?」

 「「ーッ!」」

 「ならば、全てを叶えてみせよう。アイズを救い、世界を救い、世界の『ルール』なんて超えて、『最後の英雄』となる。それは『僕達』の『原点』だろう?」

 

 

 そうか、いつの間にか忘れていたのか。僕の『原点』──

 

 

 『もし、英雄と呼ばれる資格があるとするならば──』

 

 『剣を執った者ではなく、盾をかざした者でもなく、癒しをもたらした者でもない』

 

 『己を賭した者こそが、英雄と呼ばれるのだ』

 

 『仲間を守れ。女を救え。己を賭けろ』

 

 『折れても構わん、挫けても良い、大いに泣け。勝者は常に敗者の中にいる』

 

 『願いを貫き、想いを叫ぶのだ。さすれば──』

 

 『──それが、一番格好のいい英雄(おのこ)だ』

 

 また、思い出す。

 

 『他人に意思を委ねるな』

 

 『これは──お前の物語(みち)だ』

 

 

 うん。そうだね。お祖父ちゃん。

 

 僕は忘れていたよ。

 

 でも、大丈夫。

 

 僕の願いは──『本当の願い』は──

 

 

 

 

 

 

 

 『皆を救う英雄になる事』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回、ベル覚醒



 アンケートに答えてくれた皆様ありがとうございます。

 最初のアンケートからは『家族ハーレム』を。

 二個目のアンケートからは『ハーレム候補の全員追加』を。

 三個目のアンケートからは『ベルアイの娘を双子で出す』を。

 これからもアンケートを度々出していくので、気が向いたら答えてください。

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