どうして?
どうして私達を置いて行ったの?
教えてよ。お母様、お父様。
暗闇で泣く二人の少女。
僕はその二人に何も声をかけられなかった。
置いて行ったのは僕だから。
何も言わなかったのは僕だから。
だから、僕はごめんとしか言うことができなかった。
「はっ!?」
僕はベッドから飛び起きた。
「さっ……きの……夢は」
間違いない。あの二人の夢だ。
どういうことだ?
今まで一度も見なかったのに。
今に限って、見てしまった。
分からない。
分からないけど。
「起きないと……」
そして、僕は着替えて教会の隠し部屋から外に出た。
昨日の夜、酒場である事件を起こしてしまった。(僕、被害者だけど)
そして、誤魔化すために僕は【
効果としては、『記録の改竄』。
昨日、起こったことを丸々無かったことにした。
無かったことにしたというより、保存されている記録と移し替えると言った方が正しい。
本来ならば、僕はベートさんの言葉に耐えきれず、酒場を飛び出す。
しかし、今回はアイズを助けようと関わってしまった。
別に後悔がある訳ではない。
ただ、これには少し問題があり、ある一定の水準を満たす者は効かないという点だ。
だから、
「やあ、ベル・クラネル。少し話を聞いても良いかい?」
僕は諦めて、彼と話をすることにした。
「分かりました。どこで話をするんですか?」
「んー。そうだね。『黄昏の館』で話をしよう」
「良いんですか? これでも一応他派閥の団長ですよ?」
「君なら問題無いさ」
「……何処からそんな自信が出てくるんですか?」
「なーに。ただの勘さ」
親指でも疼くのかな?
僕はフィンさんに『黄昏の館』まで案内された。
「さて、自由に寛いでくれ」
「あっ、はい」
「ベル、こっちおいで」
「わ、分かりました」
アイズに手招きされて、アイズの横に座った。
すると、アイズが僕の髪を触り始めた。
「モフモフ」
「こら、アイズ。って、声が聞こえていないか。すまないベル・クラネル。嫌でなければ、そのままにさせてやってくれ」
「はい。分かりました」
「ありがとう」
えっと、今この部屋にいるのはフィンさん、アイズさん、リヴェリアさん、ガレスさん、レフィーヤさんのみである。
「もしかして、今ここにいる人達が少なくとも【ロキ・ファミリア】の団員で僕のスキルの影響を受けていない方達ですか?」
「そういうことになるね」
フィンさんは柔らかく答える。
敵意は無さそうだ。むしろ、感謝しているような……。
「それで、話を聞きたいのは君の使ったスキルについてだ。もちろん、隠したければそれで良い。しかし、差し支えなければ、教えてほしい」
「あっはい。別にそこまで重要では無いので良いですよ」
少年説明中……
「なるほど、君のスキルのお陰で僕たちは救われたと言っても過言では無い」
「あはは……」
そりゃそうだ。
ベートさんの行動は【ロキ・ファミリア】として、あるまじき行動。
今回は僕が隠蔽したが、していなければ、【ロキ・ファミリア】の名声は落ちていたかもしれない。
結果的に僕に救われたと言えるだろう。
野望があるフィンさんにとっては尚更だ。
「そこで僕は君にお礼とお詫びを兼ねて、何かあげたいと思っている。お金でも武具でもなんでも言ってくれ。これは僕個人としてのお礼だから、ポケットマネーと相談することにならけどね」
フィンさんは笑いながら言う。
当たり前だ。これは誰にも知られてはいけないことだ。しかし、謝礼をしない訳にはいかず、あくまで個人としてということだ。
ならば、無下にするわけにはいかないだろう。
しかし、どうするか。
できれば、神様には秘密にしておきたいから、お金は遠慮したい。
武器が良いのだろうが、何故だろうか? 猛烈に買ってはいけないような気がする。おかしいな。ここには『雷霆の剣』も『炎の魔剣』も無いはずなのに。
なら、防具だろうか。黒竜の
うんうんと悩んでいると、フィンさんが思い出したかのように話す。
「そうだ。君に提案したい事があってね。それを聞いてから、決めるのはどうだろう?」
「えっと、はい。なんでしょうか?」
とても嫌な予感がするが、聞いてみよう。
「君に近々ある遠征に参加して欲しいと思ってね」
「はい?」
フィンさんのその言葉に僕は驚愕した。
ってあれ? 僕だけ? みんなはうんうんと頷いている。
普通ならば、ありえない提案。
「えっと、僕が行っても邪魔なるんじゃ?」
聞いているのは戦闘能力ではなくて、連携の問題。
余所者の僕が参加しても士気を乱すだけでは?
「その点に関しては問題ない。君には51階層からの選抜隊から参加してもらう。それまでは僕達が君を隠すさ」
なるほど、遠征において僕は『本来』はいない者として扱う。今、ここにいるメンバーで上手いこと他の団員達から隠すつもりらしい。
「そこまでして、僕を参加させたいのは何故ですか?」
「君の最低限の戦闘力はレベル1でありながら、レベル5に匹敵している。人と
本当にこの人は頭が良過ぎる。完全に僕を見透かしている。『秘密』がある事を理解している。
「……分かりました。僕は前向きに検討しますが、神様と相談してから改めて答えます」
「ありがとう。あと、さっきのは決まったかい?」
「ああ、はい。
「分かった。後で一緒に行くとしよう」
こうして、僕は
あと、
「フィン。私も行きたい」
「……アイズが? 別に良いけど。どうしたんだい?」
「私もベルに何かあげたい」
アイズの様子にリヴェリアさんとガレスさんとフィンさんは驚いた。
というか、レフィーヤさんがさっきから何も言わないんだけど。
……ずっと見られているから怖いんだけど!
そして、アイズさんもついてくることになった。
そして、話し合いが終わり、『黄昏の館』を出て、少し離れたところで、
「むぐっ!」
黒ローブを着た誰かが僕の口を塞ぎ、路地裏へと引き込んだ。
一体、誰……が……。
待て。待て。待て待て待て!
なんでここにいる! なんで二人が!
なんで、
「やっと見つけた。『お父様』」
「随分と探しましたわ。『お父様』」
「お、お父様? 僕は自分より年上の女の子の子供を持った覚えは無いんだけど?」
「ふーん。しらばっくれるの? 私たちは見てたよ。お父様が【
「それ以上しらばっくれるのであれば、『ここのお母様』にお父様の黒歴史、バラしますよ?」
あっやばい。だめだ。逃げられる無い。大人しくするしか無いか。
「はあ、全く。どうして二人がいるの?」
「「……」」
「二人とも?」
「「う、うわぁぁぁぁぁぁん!!」」
二人は僕に泣きながら、僕に抱きついた。
待って待って、身長は君達の方が高いから、その位置じゃ首が!
「どうして? それは私達のセリフです! どうして、私達を置いて行ったのですか!?」
「寂しかったよ〜! お父様〜!」
「……ごめんね。二人とも。僕は願いを叶えるためにここに来たんだ」
「それは分かってます! でも、私達も連れて行ってくれても良かったじゃないですか!」
「もう置いてかないでよ〜!」
「全く、ここにいるという事は『僕と同じ方法』で来たの?」
「「うん」」
「じゃあ、もう置いていかないよ。第一、もう魂が繋がっちゃったから、置いて行きたくても勝手にこっちに来ちゃうけどね」
僕は二人を撫でながら、そう言う。
そして、僕は二人に問う。
「それにしても、よくフレイヤ様が協力してくれたね」
「真摯に頼み込んで二人でオッタルさんと戦うことになって、勝ったから、協力してもらいました」
フレイヤ様。どうやら僕との『約束』を守ってくれたようですね。
フレイヤ様とした『約束』──
『もし、娘達が僕を追いかけたいと願った時、その真価を計り、お眼鏡に叶う事があれば、僕と同じ特訓をさせてあげてください』
『分かったわ。でも、近いうちにきっと約束は果たされるわよ?』
『それならそれで。僕の都合で二人を置いて行くんです。選択肢は残しておきます』
『貴方は本当に優しいわね』
『僕はただのエゴイストですよ』
『それでも、貴方はとても尊いわ』
『ありがとうございます』
──なんてことがあった。
本当に二人は来たんだね。
全く、これじゃ親離れはできなさそうだなぁ。
僕はそれでも嬉しいけどね。
ベルアイの娘
『アリアドネ』
容姿や性格はダンメモのアリアドネ姫。
アイルズの双子の姉。
しっかりしているようでたまにやらかす。
『アイルズ』
参考はダンメモのアイルズ先生。
容姿は白銀色の長髪に赤目。
アリアドネの双子の妹。
いつもはメーテリアの如き優しさがあるが、たまにアルフィアの如き恐ろしさがある。